第42話:男達
休日が明けて、正洋はそろそろ慣れたと言える経路を歩いている。自転車だと尚早く着くのだろうが申請が面倒であった。毎日の通学だと保安の発生もある。綱島駅までのバスの停留所に向かう。すこし遠回りしてみる。期待はあった
別にいい、この程度の距離なら。今のところ特に問題はなかった。綱島駅からの徒歩だとたまに慣れしたんだ人物達と遭遇する時がある。その日においては自宅の近くだろうか、
靴のかかとの入りを確かめている咲子に出会う。
正洋(宇田川さんか、家、この近くなのかな。うちの団地とそう離れていないな。どうする)
少しの勇気の発生を意識したが問題なく、平常心を保ちながら声を咲子にかける。
正洋「おはよう、宇田川さん」
咲子が正洋に気付く、すこし顔をほころばせたかのような気がした。
咲子「あ、まーこだ・・・」
その言葉は息を吐く際に流れるかのような発言であり。正洋はあいまいな理解の補完をしたものの。問題なしとした。
咲子「おはよう。正洋君」
可憐。かわいらしさ。それは正洋にとって感じられる情動であり、意識が奪われそうになるも、理性は獣でないことを固辞した。
正洋「おはよう。立花さんをまっているのかな」
咲子「ん、そんなことないよ。でもどうしよかな。ええい、かかとなかなか入らくて。どうしようかな。」
正洋「そう」
少し話すのも良いかもしれない。どうせ時間には余裕はある。衝動としては昨日送った新横浜をテーマにした論文の感想を聞きたかった。
正洋(聞きたい衝動はあるな、でもおちつけ)
正洋「昨日は休みだったね。休めた?」
咲子はすこし笑みを浮かべた
咲子「倒した、倒した。オリバを倒したよ。まあよし。マラソンだね」
正洋「ああ、なるほど刃牙ね、ネトフリ入っているんだ」
咲子「そうそう次はケンガンかな」
俺のは。そう感じたが、すこしの判断の意識があった。
正洋「まだ見てないや。刃牙。感想色々聞かせてね。おすすめとか。LINEでも」
少し引いた戦術を選択した。LINEでの文章による応答でもいいだろう。
正洋(会話の機会はあるけど、形としてもらうのもいいか)
咲子「ええ~いいよ~見てるよ~色々、見る時間そんなにないの?」
正洋「サブスクはdアニメとネトフリとAmazonかな。孤独のグルメとか見てた。」
二人は学校の方面に向かいゆっくりとだが歩いている。
咲子「見る時間は?」
正洋「そんなに。何気に色々やっちゃって」
咲子「グラビア撮影だもんね、まーこめ」
咲子の発言はボソッと、気配としての表れであった。しかし、正洋は発言の全体を把握した。解釈。
そして上気。ただし聞き流していた。
正洋(グラビア、練習工程、マッチョポーズ。見られているか。まーこ?愛称?ん)
咲子「あ、律子だ。」
視線の先には手を振っている立花律子がいる。
正洋「ああ、立花さん。じゃあ、少し先を行くよ。また教室で」
咲子「うん、今度友達とみんなで江ノ島いこうかとか思っているんだ。要検討。遊びすぎかなてへ。」
正洋は、一瞬の沈黙の中で思いが流れていた。咲子への可憐と思える可愛さ。律子や美子も咲子と同様の
親しげを感じられる。そして会話を発生する関係性の継続が貴重なものだと意識できる。自己評価は高いとは言えない。
軟派な感じでもないだろう。相手の世界に侵入すること自体に引けめがないかと言えばある。しかしこの瞬間の刹那は貴重と
思え、背景を一瞥しながら正洋は静かに応じる
正洋「・・・いいね」
明は昼休みの行動をどうしようか、一瞬悩んだ。クラスメイトたちと花を咲かせてもいいだろう。しかし、咲子たちとの交流に衝動が行く。
明(俺の話を聞いてくれるし。楽しいんだよね、咲ちゃんたちのとこいくの。くそう、同じクラスならなぁ。)
明(石坂という奴もあ話はまあわかるな。論文か。あれで終わりなのかね。)
明は今日は弁当だ。咲子たちはどうだろうか。女生徒の輪に加わるのは、周りの目があるか検討した。
明(なんかなあ、冷笑組なのかねぇ。うるさいね。ああいうのは、加わりたいのかね、馬鹿にしたいのかね。でもまあ咲ちゃんたちそんなに気にしてなさそうだし。
というか、耳に入っているのか?あの子。可愛いよなぁ。咲ちゃん)
そろそろ4限目も終わる。明は大体予習で頭に入っている数学の授業だ。油断は厳禁、しかしまあ少しの呆けなら問題なしとした。
おかしなグループだった。咲子は可愛い、律子も文系的なイメージだが可愛いと思える。オタク気質かもな、と感じる。美子は美人だ。こりゃ
将来美人さんだと評価している。このグループだが、自分の話を喜んで聞いてくれる。解体、発破爆破。それらの知識の披露にメモを取っていることもある。
明(律っちゃんもいいなあ。時々髪型代わってんだよなあ。いいね、すこしオタク的なところも。美子ちゃんが喜びながら髪いじくりまわしてんのかねえ。スキだけどね。デフォルトのおさげ。一般的な流行りも興味あるみたいだし、変なこともそうらしい。あそこの部長のせいだな。結構、博識だぞあのグループ。まあ、変に偏見持たれても困る。
居るんだよなぁ。解体の現場に出ているっていうと冷笑する奴ら。いいだろ、現場の勉強しても。お前に何ができんだっつの。)
クラスメイトを見回す。確立として理解しているが、明の注意がいく女生徒もいる。
明(うーん。可愛くて性格のいい子がいいなあ。いるかなぁ。気軽に話せそうな子。咲ちゃんたちは違うクラスなんだよなあ。隣だけど。毎日いくのもなぁ。アタックしている・・・か。やっぱり。そろそろ遊びに誘いたいな。接骨披露するんだっけか。約束ではないか。水切りだ動画、なんかサイト?にアップしたんだけっけ?まあいいやその辺も含めて盛り上がろ。そろそろ誘いたいなぁ。よし終わる。理解してんのかね。回りの生徒。真面目そうなの女子ばかりじゃん)
4限の終了の予鈴がなる。明は弁当を取り出し、隣のクラスに向かった。特にためらいのない動き。
明「石坂もいるかな。まあいいやつ。参考になる意見もある。まあいいや」
悟がその手芸の腕前を披露したのは高校に入ってからであるが、その評価は高いものであった。中学では自身でも内向的で特に周囲にはそれとなく合わせていただけであり目立った生徒ではなかった。手芸部での時間は貴重なものであった。自然と固定化した席の隣にはいつも立花律子が座ってくれる。別の同好会と兼部であるからいないときもある。
悟(今日はいるかな立花さん)
悟の手芸部の教室に居つく時間は早い。もうすでに何点か制作物を作っている。これは秋の文化祭には提出できそうだ。一応の目標として対外的な
制作物の披露の機会はある。部内での感想会もそろそろかもしれない。今日は、木工細工をするつもりだった。学内の環境は自宅とは異なるものであることは
意識としてある。自身の手芸の腕前から同級生のみならず上級生からも意見を求められるときがある。応じている自分も新鮮であった。いい経験になる。そう思える。
律子「あらら、悟君。始めているね」
悟が席で木工細工の準備をしていると律子から声をかけられた。
悟はまだ、自身に仲良く話しかけてくれる女生徒に、その反応は落ち着きがない。
悟「あ、ああ。立花さんおはよう。
律子「なんで放課後なのに、おはようなんだろうね。うふ、おはよう。こんにちはの方がいいかな」
悟の律子への容貌への注意はためらいがちだ。はっきり全体像をとらえる機会はそうなかった。その日は話したいこともあり意識した。自身の勇気は
強く発現したことを意識する。
悟「う、うん。そうだね。はは。今日はどうするの」
律子「少し活動してく、さぼりすぎもだめだよねえへ」
悟の無意識の律子の容貌の評価は素直なものだった。
悟「かわいいよね。はは」
律子「?ん?あ、そうだね。かわいいかな。このアイロンビーズ」
悟「うん、そう。そろそろ終わるかな。」
律子「結構、時間かかっちゃって、だめだな。おしゃべりばかりしてちゃ」
悟「いや、そんなことは。楽しいし本の話とか。」
律子「そう、そうだよね。昨日も一日読んじゃった。私、今度何か貸すね。」
悟「あ、そうなの、本かぁ。」
律子「おすすめたくさんあるからね。今度もってくるね。」
悟「僕も衣装もってこようかな、そろそろ。」
それを聞いて律子が照れそうにする。頬も多少上気しているように悟は感じられた。
律子「ええ、う、うん。三人分なんだよね」
悟(うわ、かわいい。)
悟「うん、そう。着てくれるとうれしい」
律子「もう、咲の分でいいのにぃ」
悟「素敵だから」
律子「もう、それやめて、変なの」
悟「いや、衣装だけど。別に立花さんも変じゃないよ」
律子「変に見えるぅ、全くもう、やだあ」
悟「う、うん。ごめん」
悟にとって律子とのたわいのない会話は貴重である。この日はよく律子自身に注意を向けたこともあって。胸の高鳴りが鼓動しているのを感じた。
良い関係性になればいい。そう期待は発生していた。
浩二(どらえもんじゃないよ、何が、どらだ。この子)
美子からのLINEでのやり取りで浩二は頬を緩めている。愉快な子であった。下級生だが見た目は美人だと思う。
浩二(全く元気だね、この子。まあ、貸してるガリアンクロウは楽しんでいるようだ。これなど僕の発明品の中でもおもちゃみたいなもんだ」
美子:空気椅子もちぃーっす!やらいでか
浩二(空気椅子じゃないよ、空気圧椅子だっての。まあ遊ばせるか。機会はいずれ、少しはお礼返してもらわないとね。身体の組成データでも取るか?)
浩二は放課後においてすこしスマートフォンをいじっている。デザイン研究室の仲間への指示が多い。美子とは戯れに近いやり取りをしている。
浩二「やれやれだなこの子、元気だね」
浩二の視線はクラス内を彷徨う。まだクラスに滞在している生徒は結構いる。大越理恵に視線がうつる。クラスメイトと話をしているようだ。
浩二の理恵への評価はたかい。
浩二(ちゃんとしてるね。友達には多少、内どけているけど、教師や下級生にはある程度の責任感をもって接している。学業も優秀、向上心もある。
影山君の相手にはすこし困るときがあるか。狭間に懸ける情熱すきだね彼も。発明品の披露も別段派手に街宣していないようだし、かれも良し。大越君も
苦労するね。しかし、美人だな。眼鏡も似合っている。透視ができる先輩キャラに少し似ているか、すこし話してみるか)
浩二は鞄を持ち、理恵に近づく。実は鞄はもってなく、手に接触して浮いているだけなのだが、違和感は感じられないほど自然なのはわかっていた。幸い敵対勢力はクラスにはいない。
浩二「やあ、大越君、どう調子」
理恵が予想外そうに浩二を見やる。話していた同級生はすでにいない
理恵「ああ、石坂君。どうも。こちらは順調よ。」
浩二「この後は部に顔出すよ。君も?」
理恵「うん、そう。」
浩二「一緒にいく?」
理恵「え?ああ。いいわよ」
少し慌てたようであるのが理解できた。
浩二(ふふ、もう少しからかうか)
浩二「きれいな爪だね。いや指がきれいだ」
理恵「ええ?何々。なによもう。何ほめてんの?」
浩二「いや何、貸そうかなと思って、爪、伸ばすかい」
その日、仲良く談笑しながら部活棟まで二人は移動した。相応共にまんざらではない空気であり、一年生組と違う雰囲気であった。
浩二(今日は楽だね。嫉妬まみれの分けのわからんクラスメイトもどきもいない。いい年こいて高校生の振りしてるやつらだからな。油断はしない。
しかし、談笑においてはいいかな。気分は弛緩してるね。だが物理的な警戒は怠らないということだよ。僕たちを巧く認識できまい。)
浩二と理恵の歩く姿は、それなりに注意がおきような背景であったが、周囲の二人へは、そう発生していなかった。
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