第38話:女は妄想を堪能し、男は称賛を送る
午前における、男達の評価の盛り上がりは律子の中では、上出来といえるものであった。その素養から自らに降りかかる環境として性としての「男」が介入するとは
思えなかったのだ。
律子(はぁ、よしよし、もりがったなぁ。自分でも何書いてんだろ。でも仲間内でわいわいするぐらいいいよね、咲は誰が気になるのやら)
休日の午後、律子は自宅に蓄蔵している書籍と向き合う。母親が編集者ということもあり、本の蓄蔵は十分である。母の影響を受けてか、律子も本を読むのが好きだった。中学時代は小説を読んでその余韻には浸ったものだ。自分が実際に向き合うのは想定していなかった。本日読んでいるのは、ジャンルとしてはラブコメであり、巷では人気作と言われるものである。不器用な主人公とクールなヒロイン、そしてオシャレな同級生が織りなす。途中、下級生も加わるようである。
律子「よしよし。堪能堪能。あーっと。休憩!」
ベッドで律子は枕を抱えて、もの想いにふける。作品により影響を受けた情動が駆け巡っているようだ。
律子(ラブコメ成分よし、ああ、よかった。こんなこと自分にはないよね。・・・でも、なあ。高校入ってから男の子とも話すようになったな。あたし。
最近は五条君がおおいいな。私に?いやいやはや。向こうはどうだろう。うむむ。普段は、あれは慣れていないからだな。あたしもだけど。
ほんとに服つくっているのかなぁ。私って人気ある?いやいやあるのは咲子と美ちゃんかな。うーん。でも仲いいのは、あとは、石坂君と明君かなぁ。お兄さんの浩二さんも
彼は鍛えてるのはわかる。明君は積極的かな。浩二さんはクールでおちついて。頭がいいや。あたしなんてラノベでもだえてんだよ。いやいや。
でも囲まれるんなら皆とがいいな。咲子に美ちゃんに。理恵先輩たちと。ああ、貢いでくんないかなぁ。なんだなんだ私はぁ
悟の自室においての進捗はミシンなどの機械音と悟自身の口から洩れる言葉で進んでいる。内容は連続して聞くと、脈絡がない。だがおおよそ賞賛に該当する
言葉のようだ。当座として三人分の衣服、大体のサイズは把握している。寸借したわけではないが。悟が意識していない能力としての目視による把握は、形となって露わとなりつつある。大きな失敗はしない確信を持ちつつ午後の時間とともに進捗は進む。完成系となった衣服をマネキンに装着させ、俯瞰して視る悟。口から出た言葉は意識もなく憶えてもいない。自身の能力へではなく出来の形への賞賛であった。弛緩の時間は訪れる。緊張からの解放は悟に油断の時間を許していた。
スマートフォンは自然と午前話した律子の番号へとかける。楽しみであった。いかな応答をしてくれるだろうか。悟の第一声は称賛であった。
悟「素敵だよ」
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