第37話:男は己を見つめ、女は次なる冒険の意識へ

当日に自分の時間を過ごす事になると理解した明の思考は、自然と己の有している技能の再確認と向かった。享楽への注意ではない。明の精神性は自らにより発露できる工程と結果に達成感を感じさせるに至っている。冷静に自身を見つめなおす、解体、発破爆破これらの知識が頭の中で復習されていく。自室においてのそれは自然と姿勢を直立不動にさせ瞑想に近い感覚に澄まされていく。その中でめぐるのは、興味としての存在である異性ではない。同姓でり、意識外の衝撃を与えた同級生であった。石坂正洋。彼の有する技能は論文。それは理解した。しかし先日、研究のための履行、高dbの咆哮。ハウリング・ロア。本能として身構えた防御反応。用途としての威嚇、戦闘能力としての理解。警戒すべき人間性ではないが、それは自身においても、自覚のない能力の可能性を意識させていた。明の身体は自然とその可動域を確認し始める。動く、思い通りに動く。認識する動作、姿勢、関節が痛みを訴えての抵抗を見せることもなく自由として明を文字通り形作っていた。プランシェ。倒立。ヨガ。一通りの難易度の高い、技を誰にでも見せる事もなく己に披露していく。そして咲子達に実演の提案をしている接骨。これも。己の能力として比較できようものであることを認識しつつある。あの男は咆哮の性能を理解しているのか。俺は。その後服を着替えて、母親に接骨、この場合マッサージ効果の施工を提案する。快く快諾する母。その術式は、ほめたたえられ。継続の意志となって現れる。由。自身の可能性の一端が視野に入る。今はまだ。解体、構造を理解し結果としてその繋ぎを解放する。それに対しての満足感。明は夕暮れにおいて、近所の河原で立つ。自覚。周囲はキャンプの家族や玉蹴りに興じる児童がいる。明は、少し大きめのコンクリートブロックに見入る。懐から取り出した、金具。釘で何か所かに穴をあける。さらに取り出した小瓶には黒色火薬が封入されている。明の手が動く。玉蹴りをしている児童がわずかな音に気付いてそこを見やる。明の足元のコンクリートは片となり、それを見やっている。満足したかのような明は、小石を手に取り水平に投擲。水切り。鋭く飛ぶ小石は水面で滑走し飛んでいく。由。自覚の再現はできた。児童にスマートフォンによる撮影を依頼して再現。驚嘆する児童。感謝の言葉を告げ、余裕によるメッセージを咲子に送る。動画も併せて。帰宅時において、自らの能力の自覚の土台を意識して、くつろぐ。そのころ合いにくる咲子からの返信


咲子:インスタに挙げていい?





咲子の注意は弛緩した。ついにオリバが倒れたのだ。冒険はこれで終了。


咲子(おつかれ刃牙くん、次はピクルだね。あるかな)


咲子の意識は疲労感からによる休息のための弛緩に向いている。呆けた意識が巡る。


咲子(次は魔法使いかなぁ。エロいのかねぇ。原作って大分昔なんでしょ。まあ、次?うーん、そういやなんとかアシュラってあったけ。ああ、あるある。

智樹漫画持ってなかったかな。)


咲子は隣の部屋の智樹のドアをノックする。ゲームにいそしんでいた中学一年の弟に漫画を提供を依頼する。


咲子「智樹、漫画貸して、なんとかアシュラってやつ」


智樹「お、刃牙終わった?今日マラソンするって言ってたもんね。いいよ。」


咲子「これ、どうなの。誰が勝つの?」


智樹「髭のめちゃくちゃ強いおっさん」


咲子「いいね、わかってる。」


自室のベッドの枕元に適当な冊数を置く咲子。少しの疲労を感じて、横たわる。その時明からLINEが届く。


明:どう?水切り


その後動画が添付されていた。その中では明が小石を投げ、それが水面を切っていく様子が収められている。


咲子(おお、やるなぁ、どれどれ美ちゃんと、律子にも送っとこ。)


動画を送ると、即座と言える速度で反応があった。


美子:挙げろ、挙げろ。インスタ。聞いといて。やるね明


咲子はすこし考えながらも明に返信する。


咲子:明君すごいね。この動画インスタ挙げていい?


問題はなく、明は快諾した。

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