第36話:休日の昼下がり、女はアニメを楽しみ、男は何をしているのか
男達の評価を交わした後、咲子は楽しみにしていたアニメをまとめて視聴していた。動画配信サイトは家庭で契約している。
4人世帯全員が同時にも視聴できるので重宝していた。本日はリアルでは追いきれなかった今期のアニメ作品を立てつづけてみていた。
少しばかり疲労感を感じる。咲子は1階に降りて、グラスに氷を入れたお茶を入れ、それを片手に自室へと戻る。休憩を意識して
椅子に座り冷えたお茶を口にする。
咲子(ふう!見た見た。充実、充実。誰にも会わずにこういう休日も悪くありませんなぁ、ちょっと疲れたかも。すこし休んだら後半戦行きますか。)
アニメを労役のように見た感覚はある、作品を楽しめたかというと、疑問はあった。午後を超える頃合いで見た本数は6本であろうか。休憩時間において
咲子は作品の出来と言葉ではなく実感で楽しんでいた。
咲子(あああ、ぼけっとするのもいいなぁ。よしよし、貫徹するか。ゲバルもまけたし次はオリバだな。)
その時、スマートフォンの通知がポップアップされる。LINEだ。正洋からのメッセージである。
それは以下のようになる。箇条書きだ。
正洋:新横浜完了。
設置数200
難易度E
時間は2時間半
楽勝だった。反応あるといいけど。
そうして画像が添付されている。それを見た咲子の思考は沈黙の時間が一瞬流れる。
咲子(・・・・・ん?なんだこれ?お!)
画像には標識のポールだろうか白い直立の棒にQRカードが磁石で貼られている。問題はそのカードの周囲だ。赤い。いやピンクだろうか。
何かが貼られている。
咲子(これ何?ん?ああ、付箋か。でもなんで?いや、いや、確かに目立つけど。そりゃ見るよね。ええ?いいのこれ?)
標識のポールに貼られたQRカードにはピンクの付箋が対角線上に貼られている。正洋の追加のメッセージで作戦効果が記されている。
正洋:付箋でマークアップ、これで注意は対角線上のQRに集まるはず。
咲子「いやーー、うん。頭いいねえ。こいつぅ確かに。見るけどさ。いいのこれ?)
正洋:帰還する。
咲子「まったくこいつめ、なにやってんだい」
正洋とのメッセージにより咲子の注意は少し楽しんでいたアニメから逸れた。とりあえずの由として咲子の中では処理され
正洋に返信をする。意識を切り替えて次のアニメを見るつもりだ。オリバが倒れるのだから。
咲子:がんばっているね。私はアニメみてるよ。暑いけど、気を付けてね。
時間は3時間前に遡る。正洋は所有しているクロスバイクで新横浜へ向けて滑走している。攻撃目標は新横浜。城とみなしたこの地域において
情報拡散を行うのだ。作戦はおおよそ考えていたが、多少のアドリブはあるはずだと理解していた。新羽方面から北新横浜へ行軍する。
新横浜大橋へ上がるエレベータにクロスバイクごと乗り込んだ。暑さが感じられる。すでに正洋の額には汗が流れている。本作戦では補給路は考えているが
時間的ロスから利用は避けるつもりだった。上昇したエレベータが扉を開く、正洋はクロスバイクをかけ、新横浜大橋を南下する。鶴見川を越え、新横浜へ侵入する
付近において、作戦として定めた戦術の効果を確認する。設置点は標識のポール、クロスバイクのカゴに取り付けた腰袋からQRカードと磁石を取り出し設置する。
シュートポイントは鉄。あらかじめ設置点をシュートポイントとして定め、それのみを攻撃する。他の設置点の可能性は考慮しない。鉄のみだ。本作戦においては鉄のみ
において設置点として攻撃する。電撃戦の意味もある。これが最適のはずと理解していた。そして、もう一つの腰袋に搭載された彩色として暖色と寒色の付箋を取り出し、QRカードを対角線上に挟み込むように張り付ける。正洋の意識は設置効果にむく。暖色の付箋。マークアップ。対角線上に貼られたそれの中心には情報拡散のためのQRカードがある。注意は集まるはずだと理解した正洋は駆ける。作戦初動に置いての位置は定めてある。「太尾新道井口」信号に掲げられたそれを目視確認した正洋の戦術が開始された。終点は「中央労働信用金庫」である。この碁の目状の地区を駆けていく。新横浜を城と定め城下町を一斉攻撃、降りた市民への情報拡散、それによる城機能の破壊の概念の攻城戦である。設置点は鉄、正洋の意識は経路上の鉄と適度な距離に念頭が置かれている。設置がされていく。
自販機、標識のポール、建築現場の遮蔽板、車止め。鉄である。それら鉄だとすでに調べてある。磁石を使いQRカードを設置している。付箋のマークアップも含めた工程はおおよそ10秒もしないだろう。工程は進んでいく、本作戦で展開するエリアは広い。正洋の駆ける時間は長く、作戦終了したのは開始から2時間半経過してからであった。途中、正洋の意識は迷うことはなかった。一気に駆け抜けることに成功した。作戦終了の「中央労働信用金庫」において正洋の意識は弛緩を始める。
楽勝。工程としては時間がかかるものの、阻害要素もなく一気に駆け抜けた。楽、その意味を意識して余韻に浸りながら新横浜を北上、帰還につくのであった。
咲子へのメッセージは北新横浜のすき家付近である。作戦効果には期待はある。しかし、あらたな論文の出来と実感が正洋の意識を占めていた。
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