第35話:休日の昼前、交流は進む

咲子の視線はノートパソコン上の画像に向いている、すこしずつスクロールされている画像群は、すこし悩んで購入したものだ。見知った顔の人物が

3種のポージングをしており、その筋肉質な身体を誇示している。沈黙は続く、一つ一つの画像を凝視する咲子。撮り溜めたと思われる画像群は計

60枚ある。全て見終わるまでに、氷の入ったアイスコーヒーのグラスを空にするのには十分だった。


咲子(まあ、よし)


ノートパソコンを操作する指が、デスクトップ上にフォルダを新規作成をした。フォルダ名は「石坂正洋」である。


咲子(専用フォルダ、よし。これからも必要になるよね。買ったことはしばらく内緒にしておこう。まったく何やってんだいあいつ。肢体。よし。まあ、いいでしょう。)


咲子はスマートフォンを操作する。開かれたLINE上で正洋にメッセージを送る


咲子:どう、売上順調?


咲子(この顔の写真も買うか)


ウェブサービスnote上において、正洋は半裸になり。ポージングの写真を販売していた。それとは別に、昨年から撮りだめたと説明書きにある。自身の正面顔

写真もあった。有料。100円。


咲子(自分の顔写真なんてよく、撮ってたなあ。勇気あるなぁ。もう。うむ。まあ。よし。もらっとこ安いし。)


咲子はQRコード決済で、顔写真も購入する。親から無駄遣いしないように、と言われているが。この額ならまあいいだろう。積み重ねると問題だ。


正洋のアカウント見ると。以前から貰っていた論文も販売しているようだ。PDF販売のようで。咲子は若干不安になった。


咲子(大丈夫かなぁ。PDF販売かぁ。転売とかされるのかなぁ。まだ教えるのもなぁ)


正洋の30枚の顔写真を眺める咲子。それは、正面から映されたものであり、やや口元に笑みを浮かべている。良い感じの笑みだ。それが時期が異なり

30枚ある。幼さがまだ感じられる。


咲子(あたしたち。まだ子供だなあ。でもいい感じ。この顔。よしよし保存)


その時、正洋からLINEの返事が来た。この辺の速さを正洋から感じる。基本的に既読スルーはない。


正洋:まあぼちぼち、かな。


そのメッセージを見て。咲子がほほ笑む。


咲子(アホめ。買ったわ。しばらく黙ってよっと)


正洋の視線はノートパソコン上にある。その情動は昂ぶり。身体で表したいぐらいだった。


正洋(よし!売れた。良し!よおし!!)


アカウントの売上報告には。購入者の情報と購入物が記載されている。ポージングと顔写真が売れたのだ。

正洋は、昂ぶりを抑えつつ。購入者へ返事を返す。定型文を利用した。この時、冷静な判断してはいなかったのだろう。

購入者のアカウントをよく確認していなかった。気づいたのは、少しして。頬を緩ませながら売上の事実をかみしめていたときだった。


正洋(ん?あれ?この名前。「咲」と「ヨッシー」さんか。・・・・んん?)


正洋の思考は一瞬の沈黙状態になった。刹那の時間が経過したあと、その感情は喜びの昂ぶりから、焦りにかわる。


正洋(あれ?これって宇田川さんと、手塚さんか?美子って名前だっけ。あれ?買ってくれたのあの二人?)


正洋の焦りは、少しずつおちつていゆく。その精神の状態は、若干の緊張をもちつつ冷静になっていく。


正洋(あの二人かぁ。もう返事かけないや。宇田川さんからのメッセージはこれか?うむ。はっきり言ってほしいなぁ、まあ、しょうがない)


正洋は立ち上がり、4人共有の勉強部屋に移動する。机のワゴンの一番したの棚をあける。中にはスーパー袋があり、中身を確認した。


正洋(ちょっと焦ったけど。まあよし、今日は予定どおり、新横浜にいく。準備はこれでいいだろう)


正洋が勉強部屋にいる最中。浩二はタンスに寄りかかって思考していた。弟の行動に関してだ。


浩二(正洋め。何かしているな。最近、やたらとノートパソコンでタイプしている。そしてこの画像、あいつ何やってんだ?これ売ってんのか?)


浩二のスマートフォンには正洋のポージングの画像がある。美子が昨夜送ってきたものだ。美子のメッセージは、「売ってるよーん」であった。

浩二の思考することは多い。正直忙しかった。高校の授業と工業デザイン研究、そして開発。ゲームもしたい。思考と手が忙しく感じる。


浩二(今は休んでいるけどな、どうする?正洋に聞くか?調べるか?調べるったって。美子君達は何かしっているのか?ああ、ゲームもしたい。

金には困ってないんだけどなぁ。早くこの団地からも出ないと)


浩二の指先がスマートフォンを操作する。美子にLINEのメッセージを送る。


浩二:見たよ画像、何やってんだか。あいつ。


美子からの返事は早かった。以降はそのやり取りである。


美子:いい身体してますやーん、弟さん。


浩二:まあ確かに鍛えてるようだし。空手もやってなかったけ。あいつ。胴着あるな。


美子:ほへ。言ってねえよあいつ。今度、さぐっとこ。ところでなんか面白いもんあります。レビューするよ?


浩二:今、燃料電池を動力源にした機械の開発感がている。結構、いけるかも。


美子:おもしろいものがいいな。なんかおもしろいやつ。


浩二:君が面白く感じるものでね。椅子いるかい?空気圧の椅子?


美子:は?空気椅子?アホなんですか?いらねーよ?


浩二:?いや、楽しめるとおもうけど。文字どおりだよ?


美子:空気椅子なんてやらねーよっと。


浩二(あれ、なんか勘違いしてるか。まあ、実物をおみせしますか。ついでにさそってみるか。とすると、個人だと。美子君と大越君か。

どうしよ。同級生はちょっと抵抗があるなあ。まあ、妙な噂。うーん。二人きりとか。機会つくれるかね。


休日の朝を少し超える時刻。明は部屋のベッドの上で腕枕をしていた。暇を感じその思考は本日の予定に向いている。

すこし愚鈍な状態が続く。


明(暇だ。どうしよ。男でつるむにも、そんな奴いたっけ?ええい、聞いてみるか)


明はスマートフォンで律子と咲子にメッセージを送る。


明:咲ちゃんどう。暇?遊ばない?


続いて、律子にもメッセージを送る


明:律子ちゃん。暇なんだけどどうしてる?


明の思考は返事の期待に移動していた。すこしして二人から返事がくる。


咲子:うーん。ちょっと悩む。暇だねぇでも家も楽だしなぁ。アニメみるつもり。


律子:暇と言えば暇。メッセ送ったの私だけ?何か面白いことあるかな?


明の感情は返事のあった事実に悦びを感じていた。浅い意識で二人に返事と画像を送る。同一の内容だ。


明:こんなんどう?


時間差は一瞬で咲子と律子のスマートフォンに明からのメッセージが届く。

見ると、両脚を頭部付近に回し、合唱をしている明の写真だった。


咲子(なんじゃこりゃ?ヨガ?)


律子(なんだろ、これ、怖い。)


二人の反応は以下になる。


咲子:これ、ヨガ?一応おもしろい


律子:怖いしW


であった。その反応に明はまあよしとして、笑みを浮かべるのだった。その後のやり取りで本日二人は誘えそうにはなかった。


明(残念、まあ得点あがったかな。いつか、デートとかしたいけどね)


休日のこの日。悟の気分は晴れ晴れである。こういう日こそ、集中して作ることができる。その注意は自身の手により生み出される制作物に意識がむいていた。

悟はの意識は、すでに物を作りだすことに悦びを見出している。これは、日常研究会と交流がある。4人と共に共通した情動であった。朝食を食べ終え、少しの休憩後

悟は自室にある、工房の機能を有する一角において作業に集中していた。現在制作しているのは、衣服である。人形に着せる者は経験があるが、実在の人間が着用する者を制作するのは初めて出会った。自身の手で、少しずつ形になっていくのには喜びを感じる。


悟「いいよ、いい。いい形。」


悟「そう、そうだね。きっと映える?。似合うよ。大丈夫僕に任せて」


自室内でつぶやきつつ手を動かす悟。今の彼にとって集中している瞬間の状態は冷静には意識しているもではない。その精神状態を表す自身は

悟にとって理解しているものではなく、あえて言うなら自然に身をまかせている。昼に近づきつつある時刻。悟の部屋の机に置いたるスマートフォンが鳴った。

少しの間、コール音に気付かぬ悟。10秒ほどしてようやく、我に返り電話を取る。律子からだ。着信に出る。


悟「ごめんなさい、気づかなかった。悟です。」


律子「あ、悟君?律子です。大丈夫だった」


悟「あ、え、ああ!立花さん。どうも、こんにちは」


律子「こんにちは、今時間、いいかな」


悟「え?ああ、いいよ。うん、大丈夫」


律子「そう。あのね。この間くれたブローチのお礼いいたくて」


悟「え?ああそう。どう?大丈夫だった?」


律子「うん、みんな喜んでた。ありがとう。」


悟「本当!よかった。今も衣装つくってるんだ!それも大丈夫かな」


律子の沈黙が一瞬訪れる。


律子「ん?え?なに?衣装?」


悟「そう、咲子さんと律子さんの分」


律子(あれ?なんでだっけ?あたしの分も?


律子「あれ?なんでだっけ?あれ?」


悟「結構前にいったでしょ。衣装つくれないかって。返事おくれてごめん」


律子「ああそう衣装作ってるんだ。へえ。あれ?寸借は?」


悟「大丈夫、一般的なサイズだから。多分着れるよ。」


律子「ああ、そう、ああおう。そうなの無理しなくていいのに」


悟「大丈夫、順調だよ。撮影するんだっけ。楽しみだね。」


律子(あれ、撮影だっけ。あれれ。)


律子「ええと、どんな服なの」


悟「メイド服!」


律子「ああ、そう。私は別に。美子の分にしといていいよ。」


悟「わかった。つくっとくよ。手塚さんだとね。二人より少し背が高いかな。OKわかる。」


律子「あら、そう。へえ。そう。うん、わかった」


悟「楽しみにしといて。いつか寸借も図りたいかな。出来たら連絡する。」


律子「うん、そうね、うんわかった。じゃ」


電話はその後、一般的な会話がつづく、近況とか学校の話題とか。実際に話するのと電話とでは

会話の内容と継続が違うことを律子は意識していた。


律子「じゃあ、この辺で作業の邪魔してごめんね」


電話の後、律子に焦りが生まれる。


律子(あれ?メイド服、着る事になっているぞ。やべ、本気にしてたか。ううん。一応二人にも報告しとくか。)


その日の昼を迎える頃合い、日常研究会のLINE上のグループワークの話題は。近頃交流のある人材についてであった。


切り出したのは美子


美子:あのさ、この辺の人ら、なんかおかしくねーか?


律子達が。返す。注意を集め居ている4人に対しての違和感を文字であらわす。


理恵:4人ともね。まあ、変と言えば。変。


南雲:楽しみにしてる、3人のメイド服。

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