第32話:浩二と悟

悟は浩二の言葉に少しあっけにとられたようだ。いまいちとして意味を把握しかねているようである。


浩二「ああ。もうしわけない。美子君の紹介ということでいいかな。手塚美子。いや。君には立花律子さんの名前をだした方がいいかな」


悟「手塚さん?立花さん?ええとどういう・・・・」


浩二「お茶のみ友達」


悟「あれ?ええ?そうなんですか?」


浩二は悟の反応を見て、言葉を修正した。


浩二「ごめん、ごめん勘違いしなくていいよ。日常研究会と僕が部長をしている部が交流があるんだ。そこで君の話がでてね。それで」


悟「あ?あれ?デザイン研究室の人。もしかして石坂浩二先輩?」


浩二「しっている?そうその石坂」


悟「ああ、はい。それで、ええと用件はなんでしょう」


浩二「君に興味がある。お茶でもしながら話できないかなと思って」


悟「あーー・・・そうですか。まあいいですよ。どうぞ。」


浩二「部屋に挙げてもらえるかい。興味がある」


悟「部屋?ええ、いいですよ。」


浩二「女の子でなくて、申し訳ないね」


そう話してから二人は階段を上った。悟の部屋は和室であり、間取りは8畳ほどである。布団はたたまれ、部屋の隅には衣服や、何かしらの造形物が平台におかれている。この場で作業もおこなっているようだ。


浩二「いいね。やる。僕とは違う」


悟「え?なにもない部屋ですよ」


浩二は畳の上にすわる。胡坐だ。悟は一言口にしてからお茶を汲みにいった。


浩二(やるね、うらやましいかな。堂々と作業作業している。僕は隠れて工房にこもっているからなあ、・・・造形物。レベル高いな。まだ15歳だろ?

いいね。)


すこしして悟がもどってきた。盆にガラスコップを二つ載せている。お茶であろう。


悟「どうぞ、粗茶ですが」


浩二「ありがとう。いいね。すこし眺めているだけでも。」


悟「え?そうですか?」


浩二「自身ある?自分に」


悟「いや、え?そんなことは・・・まあ多少得意かな?とはおもいます。褒められると嬉しいな」


浩二「衣装もあるようだけど。本質的に特異なのは?」


悟「木工・・かな。見ての通り人形店ですので。」


浩二「衣装は?どうして?綺麗な修飾品もあるようだけど。」


悟「ああ、人に言われて。挑戦してみようかな。と。」


浩二「いいね。綺麗な出来だ、すごい」


悟が破顔する。


悟「そうですか?いいですよね。」


浩二「お気に入りとかあるのかい」


悟「ええ!!それはもう。最近だと。これかな。衣装になりますけど。みます?」


浩二と悟が、部屋にある制作物の鑑賞を行う。浩二の目にもそれぞれの出来は美しく、精緻なものであった。

浩二の口から自然と賞賛の言葉がでる。


浩二「きれいだ。細かなでき。制作者の素質がみてとれる」


悟「いや、そんな。そうですか?」


浩二「誰かに見てもらった?」


悟「ええと、先輩が初めてです。はい」


浩二「見てもらったほうがいいよ。誰がいい?手塚君、立花さんかな」


悟「え?なんで?」


浩二「そりゃ女性ものばかりだからそうだろう。喜んで身に着けてくれるんじゃないのかな。今日のブローチも喜んでいたよ」


悟「そうですか?ほんとに?」


浩二「うん、ちょっとこの部屋すごいな。分野は違うけど宝のやまだ」


悟「いや。えと。その褒められると嬉しいです。どうしよう。誘おうかな」


浩二「誰を誘う?」


悟「えーと、立花さん?宇田川さんもいいけど。誘うなんてそんな、うーーーーん」


浩二「いいね、淀みがないように感じる」


悟「??」


浩二「いや、こちらの話だ。僕は好みとしては手塚君かな、その先輩の大越もいいかな」


悟「ああ、日常研究会の?どうしようかな。みてくれるかな」


浩二「自分で誘う?僕もあったら含んでおこうか」


悟「いやーーてれるなぁ」


浩二「ふふ、ところでこのイラストどう思う」


浩二はどこからかA4のスケッチブックを取り出した。悟は一瞬沈黙して驚く。


悟「あれ?スケッチブック?どこから?」


浩二「丸めてた」


悟「は?」


浩二「まあとりあえずこのデザインとか作れそう?木工でもいいよ。」


スケッチブックには多様なデザインが描かれている。隅に「佳村」とサインされている。


悟「ええと、どうかな。・・・うーん。できそうですねぇ」


浩二「作れるの?これ?このデザインで?」


悟「ええ。一応。作業場を使えば」


浩二「そうなの?だめなんだけどな。これ。」


悟「え?いいデザインですよ」


浩二「いや、工業デザイン的にはなんだけどね」


悟「ん?」


浩二「いや、こちらの話。そうできるんだ」


悟「まあ、一応。佳村さん?という方なんですね。デザイン画」


浩二「そう。同級生、女性だよ。」


悟「あ、やっぱり。タッチが女性的です。」


浩二「そう、いずれ依頼するかもね。」


悟「僕に?うーん。」


浩二「忙しいでしよ?わかる。まあ、いずれ」


悟「ああ、はい」


浩二「じゃあ、見せてあげなよ。この作品群。喜ぶよ。褒めてくれる。保証する」


悟「そう、しようかな。どうやって誘お」


その日として、しばらく二人は小一時間雑談したのであった。浩二と悟、初対面の二人であったがお互いの印象は

よく。その会話には笑みが浮かんでいた。


浩二(いいね、純真で、悪気もない。手芸の腕もたしかそうだ。これは影山君が喜ぶかな。よい関係を気づければ僕にとっても。

彼は立花君から。宇田川さんにもすこし。といったところか。)

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