第30話:可能性の発露 人体工学 明

正洋から電子書籍の発刊の連絡を受けた翌日である。咲子としては、その事実は衝動としての質問をする機会の必用を与えていた。

学校への登校ではいつもの通り律子と美子の二人による会話を交えてのものであった。話題としては正洋が頻出していた。二人も連絡を受けたようで発刊の事実には驚きを憶えていたようであった。


美子「石やんさぁー、なんで早いわけ」

律子「早いねぇ、検索して驚いちゃった」

美子「売れんの?いや内容しってるけどさ」

咲子(むむむ。二人にも連絡したなあいつ。まあいいや、結構連絡はフェアだね。フェア。)

咲子「まあ。ぼちぼち聞いとく。なんか、こういうことしている人、身近だと不思議」

美子「あーまあねえ。なにやってんだかなぁって感じかな私は」

律子「彼は想像を超えてくる可能性がある、そんな感じがする」

咲子「変、かなぁ。」

美子「変?うーん。いわゆる近づきたくない変人とは違う。真面目だけどさぁ」

律子「お母さんにもみせたよ、論文。出来がいいって。同級生って言ったら驚いていた」

咲子「本の話とか」

律子「それはまだ。でもAmazon見てたら。うなってたよ。実証とれるのかなって」

咲子「ん?」

律子「論文系、それ系うれるのかなぁって」

美子「ああ、編集の目が見て、そういや石やんあえて言うなら論文系か?」

咲子「何、論文系って」


クラスに到着すると正洋はすでに着席していた。挨拶をして咲子も座る。一限の準備はまだ。情動としてあった質問の機会にすぐに行った。体勢の向きを変えず、首を正洋に向けている。


咲子「どうだった?正洋君」


正洋「え?ああおはよう。何が?」


咲子「驚いたよ。昨日、ほんとに出したんだね。」


正洋「ああ、amazon?出したよ。でもね。」


咲子「売れた?」


正洋「それはまだ、でも読み放題に登録しているから、それは読まれたよ。少し」


咲子「おお~」


正洋「でも。そんなに。少し気になることもある」


咲子「え?何?」


正洋「システムがおかしいかもしれない」


咲子「システムってなにそれ」


正洋「amaozonのシステムだよ。可能性を考えている。」


咲子「ええとamazonのシステム、何かおかしいのかな」


正洋「デジタルでしょ。要は。だからコントロール可能だよね。」


咲子「え?ええとそうなのかなぁ」


正洋「そうみている。各種設定とかあるはず。カテゴリレベルとかできるはずなんだ」


咲子「それが?」


正洋「疑問がある。今のところはそれぐらい」


咲子「ふうん。ちゃんと売れたら教えてね。」


正洋「うん、いいよ。」


咲子「買おうか?でもPDFもってるしなぁ」


正洋「また、なんかあったら言うよ。」


咲子「今日もやるのハウロア」


正洋「やるよ。でもなぁ昼休み前の授業、他のクラスが柔道やっているかも」


咲子「そうだっけ?着替えるのに時間かかる生徒に見られるかな?」


正洋「まあ。一応きにしとく」


咲子「付き合おうかなぁ」


正洋「ああうん、ありがとう」


それからの授業は教室内におけるものであり、咲子として真面目に受けているつもりだったが、何度か教師に不注意の注意を受ける。

別段、いつもの事であるが少々間の抜けていると言われる咲子は周囲の目があたたかなものと感じていた。

お昼休みが始まり、正洋は昨日と同じく市井と流れから咲子を誘う。本日も同伴しての二人に、冷やかしの気配を出そうとしている男子生徒も感じた。校舎とグラウンドの間に着くと、そう遠くない距離に幾人かの生徒が確認できる。着替えがあったからか柔道場からの移動であるようだ。咲子が不安を感じ正洋に聞く。


咲子「やるの?」


正洋は、視野内の生徒を目にして数舜の沈黙をする。行動は早かった。スマートフォンを設置し、距離をはかる。


正洋「やるよ。今日は服は脱がない」


咲子「ああ、そうなの。ああはい」


正洋によるハウリング・ロアの試行が行われた。


「止めろ」


そして間をおいて


「行け」


咲子は合間の時間気が気でなかった。ハウリング・ロアと名付けた叫び、計測された数値は78db前後であり、周囲への配慮に心配になった。


咲子「あわわ、よくやるなぁ」


正洋「よし。終わり。げほっ」


咲子「それじゃごはんしようか。」


声をかけられたのは二人がお昼の食事をとろうとした時であった。


明「あれ?お二人さん、一緒?すごい叫び声だったね」


咲子「あ。明君。なんでここに」


明「いや?体育で柔道の時間だったからだよ。盛り上がっちゃって、着替えるのに時間かかったよ。で?何してたの」


咲子「ええ?ええと。」


正洋「実験だよ。付き合ってもらってた」


明「叫んでたの君。何実験て」


それから正洋の説明が始まった。ハウリング・ロアをした後であったので喉の負担を意識をしたものであった。

すこし説明を聞いて明は理解したようで、二人の隣に腰を下す。


明「なるほどね。OKわかったよ。で?その後ここで食事?」


咲子「そう。ええと明君はクラスに戻る?」


明「どうしようかな、付き合おうかな、今日。話きいてよ」


正洋「盛り上がったとか。」


明「そうね、その話も、じゃ購買いってこようかな」


それから明は購買に向かった。昼食を買いにいくのだろう。


咲子「今日は三人でたべようか」


正洋「いいよ、僕は」


咲子(まあ、いいか。くそうこいつすこしは気にしろよう。明君か、まあ仲は、いいよね)


明はそれほど時間の経過もなく二人の元に戻ってきた。手にはパンを抱えている。


明「OK!!それじゃ食べようか。待たせたかな?」


それから三人で食事を勧める。話題は正洋のこともそうであるが、明の事もあった。昼休み前の柔道の時間だ。


明「先生にほめられちゃつて」


正洋「柔道?強くて?」


明「それもあるんだけどさ。なんか関節とか外せたり、ストレッチの腕いいって」


正洋「関節?ストレッチ?まあ。結構ゆるいしね。柔道の時間」


明「そう、咲ちゃん見てて」


そう発言し明は立った。左腕で下した右腕を持つ。明の軽い気合が起きる


明「よっ!」


擬音と共に明の左腕の肩がせりあがる、妙な形に変形している。


咲子「ええ?なにこれ」


明「関節、はずれましたよっと。そして戻す」


右腕を抑えた左腕に力がこもり再び擬音と共に、腕が元の形に戻る。

正洋があっけにとられたようだ。


正洋「関節外せる!!任意に?痛くもない?」


明「お、食いついたの君かよ。痛くないよ別に、他人のも外せる」


正洋「そうなの?!!」


咲子(あれ?仲いいのか?この二人?)


明「それとストレッチもうまいよ。自分にも他人にも。すごく上手、先生に褒められた」


正洋「そうなの?ほほー」


明「しようか。軽いものなら」


咲子(あたしに聞いた!!え?)


咲子「ええと、ええ、ここで。いやぁ」


明「軽く腕を触るだけだよ、怖い?」


正洋の判断は早かった。


正洋「僕でやっていいよ。試し見る」


明「ん?やるかい、いいよ。肩が軽くなる。大丈夫だったら咲ちゃんもしようか」


咲子(はい?やることなった)


それから明は正洋の後ろにまわり、肩と腕を抑えて力をこめる。

ストレッチが始まった。


正洋「お?おおおお?っと」

時間として数十秒であったろうか。明が手を放す。


明「どうかな?」


正洋「お?おお、なんか肩が軽い?接骨?」


明「そうかな。そうかも。どう?」


正洋「軽い。かるくなった。宇田川さん、どう?」


咲子(振りやがった、こいつ、ええ?どうしよ)


明「それじゃいくよ」


咲子「ええ?ちょ」


明は正洋と同様に咲子の腕を振れ、力を籠める。


咲子「ありゃりゃ、うーーーー」


時間としては数十秒ながれる。明が手を離した。


明「ほい、こんな感じ」


咲子「おお?何?腕と肩が軽い?あれれ?」


明「ね?大丈夫でしょ。全身もできるから、言ってね。というかやりたい」


と発言してウィンクする。


正洋「やりたい?」


明「人体の構造もいいね。解体とは違うけどさ。」


正洋「ああ、勉強。実施かな」


明「そう、それいいでしょ」


咲子「うーん。まあ別にいいけど。ありゃりゃなんか軽い」


明(今日はこんなとこかな、しかし。石坂?かすごい腕だ。かなりの筋肉だ。咲子ちゃんは柔かったなぁ」


咲子「マッサージ?接骨なのこれ?身体のこともできるんだね、この二ッチ」


明「二ッチ」


咲子「できてたまるか接骨なんて。もう」


その日の放課後として日常研究会のメンバーの間で、明の人体構造における、接骨技術の話題が上がり。

好感触として興味をもたれたのだった。一番の嗜好性を露わにしていたのは影山で、正洋の電子書籍の発刊の事実

も含めて有望株と二人を評したのであった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る