第29話:ハウリング・ロア試行その2

正洋から新たな試行としての論文「ハウリング・ロア」を受け取った翌日。学校では咲子は母とのやり取りを回想していた、正洋も推奨として母にも正洋の活動報告を見せたのだ。

早朝にて朝食の際に、母とのやり取りを思い出す。


清江「みたよ、石坂君の活動の結果」

咲子「ああ。うん。どう?」

清江「そうねぇ。いいんじゃない、でもこういうの大学でやるような事なんじゃないの?」

咲子「ああ、そう?」

清江「うん、ちょっと変わった子ね。ハウリング?ロア?も面白かったわよ、裸もみちゃった?」

咲子「うーん、鍛えてるよねー」

清江「いい脱ぎっぷり」


智樹「なんの話?石坂てだれ?」

咲子「学校の友達」

智樹「男なの?やべ、姉ちゃんに彼氏?」

清江「そうなの?」

咲子「違うよぉ、いい人だけどねぇ」

清江「まあ、真面目な文章だったし、人柄はどうなも」

咲子「いい人」

清江「そう、大事にしなさいね、このQRコード、理科さんにもみせようかな」

咲子「もう律子が見せてんじゃないの?」

清江「そうか、そりゃそうだね」

智樹「何?おれにもみせてよ」

清江「後でね」

智樹「面白い?」

咲子「一応。」

清江「うん、でも変」


学校では、休憩時間の合間には正洋とよく話をする。学校では正洋はよく休憩時間にスマートフォンをいじっている。だまってみている時もあるが、聞いた時のことだ。


咲子「スマホ、よくいじるね、何してるの?ゲーム?」

正洋「いや、EVERYNORT更新している。」

咲子「EVERYNORT?メモアプリでしょ?」

正洋「そうだよ、メモしておいて、自宅で同期したパソコンで処理したり、共有リンクのノートも更新しないと」

咲子「そうなんだ、へえ」


正洋は、何かしている時に話しかけても相手のを見て返答してくれている。そこが咲子としても好印象だった。


正洋「昼、やるよ」

咲子「え?」

正洋「お昼休みに、前のところでハウリング・ロアやる。2回かなそれから昼食をとるよ」

咲子「そうなの?もう、てか行動早いね」

正洋「そうかな?」


咲子は一瞬考えて返答した。


咲子「どうしよっかな、ええと。あたしも付き合おうかな。撮影どうするの?」

正洋「古いスマホ、持ってきたよ。それで撮影する。付き合う?来るの?」

咲子「いいよ、その後お昼だよね。あたしは今日は弁当」

正洋「わたしもだよ」

咲子「じゃあ、一緒に食べようか?すぐ終わるよね。ハウ・ロア」

正洋「そうかな、ハウ・ロア?ね。まあそうだよ」


お昼休憩を迎えるころ、休憩時間に話した事に咲子の思考はめぐっていいた。正洋を見やる。お昼の予報がなっても、慌てる事もなく。落ち着いて文房具を片付けている。カバンからスマートフォンを取り出した。ポケットからも一台とりだしている。二台のスマートフォンが机の上に置かれる。そして鞄から弁当箱と思われる包もとりだして机に置く。静かに、なめらかに姿勢を咲子に向け正洋は言う。


正洋「それじゃあ、行こうか、宇田川さん」

咲子(おお~スムーズに切り出してくれたぁ、うむうむ)

咲子「いいよ、いこう。律子達にはLINEしといたよ」


二人として横並びになり、前回試行した場所にいく。途中、その他の生徒と多数すれちがったがさい、視線が気になったが、意識は落ち着いていた。


咲子(むむ、二人きりで歩いてるからなぁ。勘繰られる?うむむ、まあいいや、別に危なくないよね。叫ぶのはちょっと危ないかなぁ)


グラウンドと校舎の間に着く。正洋は本日は弁当箱にスマートフォンを二台立てかけて試行するようだ。咲子はそばの花壇のコンクリートブロックに腰かけて手を顎に乗せて正洋を見つめている。体験してみたいとおもい、正洋の向かう形になっている。


正洋「それじゃやるよ。二回叫ぶ。感覚は2分ほどにしようか。」

咲子「はーい、がんばってね」


咲子は微笑をうかべて軽く手をふる。正洋はうなづき、上着を脱ぎ始めた。



服を脱ぐと正洋はスマートフォンに近づく。撮影ボタンと、計測アプリを立ち上げたようだ。


咲子(わわわ、やっぱり脱ぐかぁ。ああ、いい肉付き。腹もでてるけど張ってるなあ)


二台のスマートフォンから距離を取る。距離はあらかじめ計測して小石を置いている。3メートルだ。


正洋「2023年〇月〇日、ハウリング・ロア 止めろ、いきます。5,4,3,2,1」


咲子はすこし呆けた感覚でみつめている。直後に共鳴する叫びがおこった。


正洋「止めろ!!」


惚けた咲子は、びくっと防御反応をとる。あたりには共鳴によるエコーが響く。若干の人気が見え、正洋の叫びに反応したようだ。


咲子(うわ、、遠いよあそこ、でもびくっとくるよねぁ。うわわ、ビビるなぁ)


叫んだあと、正洋がスマートフォンに近づき操作する。まずは一回目。


咲子「これで三回目だよね。いやーびくっときますねーこれ、ちょっと怖い。」


正洋が喉に手をあてて答える。


正洋「そう、三回目。すこし休む、喉に負担がある」


咲子「そうだよね。すこし休もうか」


それから二分ほど、正洋はスマートフォンの傍で足取りとして多少のふらつきを見せ、休んでいる。休むことに注意をはらっているようだ。その間、咲子は律子達にLINEを送っている。

すこしして、正洋が咲子の方に向く


正洋「それじゃ二回目いきます。」


咲子が軽くてを振る。ハウリング・ロアと名付けた叫びを体感するのは多少の怖さがあった。


咲子(なれるかなぁ。でもいつもと違う感覚はあるなぁ)


正洋「2023年〇月〇日、ハウリング・ロア 行け!!、いきます。5,4,3,2,1」


直後に正洋の叫びが響きわたる。共鳴としたエコーが周囲に響く。叫んだあと、正洋はすばやくスマートフォンに近づき操作をする。そしてあわただしく服を着るのであった。


咲子「終わったねぇ。これあと36回やるの?18日かかるね。」


正洋が手を咲子に向けて話す。喉の負担を意識しているようだ。


正洋「放課後もやるよ。回復すると思う。」


咲子「そうなの?スタミナ制だもんね、そうか。無理してしゃべらなくていいよ」


それから正洋は弁当箱を手にとり、手の動きで移動を促す。昼食をとる場所だ。指したのは体育館の裏口の扉の段差だった。咲子は指で〇を作りそそくさと移動する。咲子は腰かけて正洋を見る。まだすこし喉の負担に注意がむいているかのようだった。


正洋「じゃあ、たべようか。お昼もおわっちゃうよ」

咲子「そうしよか。」


二人は弁当箱を開けて食事を始める。正洋の弁当箱は冷凍食品の詰め合わせのように見えた。


咲子「自分で作るの?」



正洋は首をふる。


正洋「ううん、お母さんがつくってる。ありがたいよ」


咲子「そうねえ、うちもかなぁ。いつまでも楽できないかな」


正洋「そう、なんとかしないと」


咲子「なんでこんなことしているの?」


正洋「ん?」


咲子「この、なんというか実験。ビラ配りとかも、読んだよ」


正洋「楽しいから」


咲子「楽しいの?」


正洋「そう、自分の能力で構築物を作るのがたのしい。何か実感がある。」


咲子「そう、なんだ。自身つくのかなぁ、でもそんなに自信があるようにはみえないぞう」


正洋「そうかな、うーん、もうすこしなにか手ごたえがほしい。」


咲子「律子はお母さんに見せたんじゃないかな。拡散OKだよね。律子のお母さん編集さんなだよ。」


正洋「そうなの?ふうん、感想きけないかな。」


咲子「本にするとかね」


正洋「本にするには、添削とか編集とか、でもそうだな。確かに」


咲子「本にするにしても敷居たかいよねー、うーん、短くはあるんだよな。正洋君が書いてるのって売っているのかな」


正洋「本か、電子書籍なら・・・確かに、検索してみるか・・」


咲子「そう。まあ教えてね。」


正洋は思考を巡らしたかのような表情をし答えた


正洋「うん」


その日の放課後再び、正洋は試行をおこなった。日常研究会による次いでもあり咲子は再び付き合う。放課後での叫びは昨日に続いて、「はあ」「助けて」であった。研究会での話題では、正洋の試行は苦笑いで受け入れられていた。全員が正洋の本気をうたがっているようであった。40回も試行する。その事実の可能性をあまり検討していないようであった。


その日のよる、正洋からLINEが届く。


咲子さんへ、電子書籍を出版してみました。amazonで検索すれば出てきます。


咲子は一瞬、沈黙したあと自宅のパソコンでAmazonのページを開くそして、入力するのであった。


石坂正洋


検索結果は即座に現れる。結果は3つの結果の表示。すでに読んでいる。ビラ、綱島・日吉・元住吉、武蔵小杉をテーマにしたタイトルが出版されていた。


・ビラの配布による拡散効果の最適化

・市街地攻略 綱島・日吉・元住吉攻略戦

・市街地攻略 武蔵小杉攻城戦


咲子は検索結果にあっけにとられて。沈黙していた。頭の中ではぐるぐると思考がうずまいていた。


咲子(やっちゃたぁ、ええ、もう、その日のうちに、早いよこの人。なんなのこの人。正洋君がやってんだよね。変だよこの人、もうーーー)

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