第22話:交差する二ッチ 明と正洋



明として日々の生活の中で視野内に収め意識をむける人材としての異性。その個性からそれぞれの長所や美点に意識を向ける明。

個人としては可能な限り親交を持ち、深め、性としての同伴を意識するのは明の精神性からするとしかたがなかった。父親の気質が遺伝していたのだろうか、明が父親から聞かされた若りし時代の武勇伝に遠慮ではなく目を輝かせたものだ。そして自身はその渦中の環境と年代にいる。

期待としての異性に意識が奪われる瞬間があるのはやむをなかった。


正洋として、その精神性から自身の立場をわきまえるのはやむをえないだろうか。理解はしていた、自身はいわゆる世間一般的に眉目秀麗として

誇る、誇られる類ではないだろうと。朴訥として扱われ、対応し、そのまま年月の消化の道へ進む定めだだろうと。周囲の自身を見つめる個性は決して

異性間の進捗に侵入する存在ではなく、遠き憧れ、眼差しとて周囲に認知されそのまま忘却される存在なのだと。しかしとして正洋のその理解と願望、勇気の発露としての関係性の変化は望まれずとも起こせるのではないかとの想いは今としてあるのだ。


明(今日はどうしようかな。結構成績いいよな。俺、物理なんて普通にできるし、そりゃ計算するもん頭の中で。俺より授業についてこれない同級生多そうだし。律っちゃんはどうかな。まあ、明らかに文系って感じだし苦戦してそう。今度勉強教えるがてら小デート感覚でも、いけるかなぁ。他の女子とも仲良くなっておきたい。親父までとはいかないまでもなんとかがんばりたいなぁ)


教師の物理の授業は進む、明として解体における勉学ですでに通過した進捗であった。45分の授業の間に苦行として放棄する生徒、一心にノートをとる生徒もいる。明が同級生の律子を振り返ると、律子はすこし理解に苦戦しているようであった。明と律子が目がある、明が軽く手を振る、律子も笑みを浮かべるが顔の表情には汗が浮かんでいるようにも明には見えた。


明(お昼。どうするんだろ。誘おうかな。咲ちゃんとも話したいし)


正洋として日々の進行の中で、高等教育の勉強をしていないわけではない。自宅ではパソコンによるライティングに励んでいるが、授業中にとったノートの復習も行っているつもりだ。担当教師の数学の授業もなんとかついてこれている気がしている。しかし、理解とは異なる違和感もある。小テストが理解に追いついた結果ではないのだ。正洋、15歳。その精神性はいまだ幼き要素があり、悪意の背景には気づけずにはいたが、不穏としての気配は察していた。正洋は右隣をみる。宇田川咲子がいる、最近として正洋として意識の中にいる女子ではある。一緒に食事をしたし、論文もみてくれている。意識する要素としての容貌は口には出したくはないが、可愛らしいとも思える。


正洋(宇田川さん、間の抜けた表情しているな。まあ、変に気が貼った性格でないのは助かる。武蔵小杉篇の論文も出来た。スマホからすでに渡してあるQRコードに添付すれば読めるはずだ。QRコード捨ててないだろうか。感想とか聞きたい、一緒に時間を過ごす願望は自身にはいきすぎだろうか)


宇田川咲子と目が合う。咲子の口が動いている声はでていない「わかる?」と言っているようだ。正洋としてすこし微笑み「なんとか」と口を動かした。お互いの意志の疎通はできているだろう。


正洋(今日、一緒にお昼たべようか。武蔵小杉篇を読んでもらうために口実として、誘おうかな)



その日の昼として、明は陽気に律子に近づき声をかける。この辺のためらいのなさを感じられるのは明ゆえにであろう。


明「律っちゃん、どう?理解できた物理?」


律子は意識としては、いまだ遠慮が含まれている者の明には分け隔てなく答える。


律子「うーん、難しいかも?理系はちょっと苦手かな」


明「僕はすでに通過した場所だよ、予習も必用なかったかな」


律子「そうなの?ええと、解体で使うから」


明「そう。その辺の理解の交換を踏まえて一緒にお昼たべようよ」


律子「今日の?え?ああ、うんいいけど。咲子達も一緒でいい?」


明「咲ちゃんくるのね。いいよ。教えられるところは教えるよ」




授業は終わる。正洋として油断はしたくなかったが、意識は隣にいる異性と一緒に過ごす時間の機会であった。

授業終了の予鈴と共に、昼の始まりの喧騒が起こる。正洋としてすみやかに教科書と文房具を片付け、お昼弁当を取り出す。机の

上にはスマートフォンもある。右隣の女子を静かに観察し声をかける。


正洋「宇田川さん。どう。数学」


咲子は正洋を見て、答える。表情には汲んだものはかんじられない。


咲子「うーん、あんまり頭に入ってないかも」


正洋「そう。復習すれば大丈夫だよ。この辺ぐらいなら」


咲子「石坂君、してる?復習」


正洋「まあ、なんとか。家にいても暇なときがあるし」


咲子「私は漫画とか読んでるなぁ」


正洋は姿勢を咲子に向け口にする。


正洋「宇田川さん、一緒にお昼たべない。この間言ってた論文も見てほしくて」

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