第21話:独白、悟と浩二



五条悟は帰宅してから、家事に追われている。父母の保養の受ける身であるが、自宅から少し先の祖父の家にて寝食をしている身なのだ。

人形制作としての己の技能の培いは幼き日よりあった。小さな手の内に木工を含めて道具を駆使する姿は少年きを半ばを迎えても未だその手を止めることなく能力の進捗を深めている。その日の夕方、高校から帰宅し祖父母と一緒に食べる夕食の買い出しと調理を終え、自身の分も含めて洗濯へ時間を費やす悟。風呂にも入り一息つく頃合いの夜分。その日として学校へ提出する宿題と復習、予習を終えようやくとしての自分の時間が訪れる。悟の手は作りかけの木工に伸び、道具としての筆を駆使し木工へ色彩を含めていく。


悟(・・・ん、よし、こんなかんじでいいかな)


集中としての一時の時間がすぎた、小一時間は集中していただろうか、しばしの小休止。部屋の隅にあるポットでお茶をいれる。視線に入る自身の机に部活動を通してできた制作物がある。小さなマトリョーシカ人形、入子構造で親子ともども机上に並んでいる。同部の立花律子にプレゼントした分に思いをはせる。


悟(うーん、我ながらよくできたかなぁ。いい、やっぱり自分の手で作ったものが増えるのはいいなぁ、立花さん喜んでくれたかな。別に手は抜いてないけど、あの出来合いで喜んでくれたか気になるなぁ。今更、挙げたものの出来、聞くのもなぁ。みんなと仲良くなりたいなぁ、部内でも聞こえる限りでは、みんなで遊びにとかいっているのかなぁ、僕も興味あるけど。まだ、打ち解けてない感じもするし。でも立花さんはよく話しかけてくれるのは嬉しいな。僕なんかと話しして楽しいのかな、人形作りが楽しいって言っちゃってるし。ああ、もう変な目で見られないかなぁ。)


同級生である立花律子とその周囲の友人たちとの想いにはせると赤面してしまう悟。異性としての興味は人並みにあれど、自身の立位置から、後ろめたさに近い感情がある。気おくれとしての自身の接し方に不安視する気持ちはあった。


悟(なんか、コスプレ?とか言っていたな。衣装かぁ。女の人が着る衣装だよね。うーん、できなくはないけどなぁ)


床の畳にあおむけになり、しばしの間をおいて上半身をあげる悟。


悟(ちょっと簡単なもの、作ってみるか。生地はあったっけ)



石坂浩二は、自宅の市営住宅の兄弟で使う学習部屋で机に向かっていた。住居としては手狭であり、自身の能力を露わにすれば家族一同、広めの住まいに引っ越すことは可能である。それは理解していた。しかし、己の判断としての現在として暗躍する状況が続いていた。机にはA3ほどの紙が広げられている。紙面に鉛筆で書きものをする浩二。文章間に矢印が含まれたフローチャートのような文面だ。


浩二(正洋は何かしているな。まあ、書いているからライティングだろう。さて手塚美子君の件だがどうするか、動画で公開されてしまっている。まあ、そろそろ本性としての能力を公開してもいいが・・・予定よりも早いな。もう少し先にするつもりだったが、今は信頼できる人材の育成とノウハウの収集だ。週末はこの工場に行っていみるか。気になるノウハウがある。僕なら手法は聞き出すこともできるし、見抜けるだろう。口座には十分すぎるほど額はあるはずだ。生活実態の改善をしたいところだが、お母さんにはまだ十分と言えるお金を渡しきれていない。警戒すべき背景はある。正洋も妙だとおもっているようだ。まあいい、気づくかもしれない。奴らは単なる愚連隊だ。頭も悪い、人の知らないところで暴れ回るのが席の山だろう。問題は組織として考えた場合の構造だ。どの程度の組織として考えるべきか。よし、来週のフローチャートはこんなもんだろう。イレギュラーなのが手塚美子達を含めた非日常研究室だな。いいけど別に発明品使うぐらいなら。なるだけなら売りたいところだが、小遣いからじゃな)


そうして浩二は机の上にある古いパソコンを操作してモニタから動画サイトのYOUTUBEページを広げる。検索文字をタイプして手塚美子のアカウントを見つける。投稿された動画の中に「遊び尽くす!!ガリアン・クロウ!!」を見つける。再生すると10分前後の動画が流れる。手塚美子が自室の部屋や路上を含めてガリアン・クロウで遊んでいる動画である。空き地で立てた空き缶を弾く美子、アタッチメントを変えて空き缶を掴む美子、同級生のスカートの中にクロウを突っ込ませている美子の姿があった。


浩二(まったく、陽気というか破天荒な部分があるな、人間性ステータスを更新しておこう。別段、危険ではないが、注意はむけていたほうがいいな。今度お茶をするんだったな。まあ、僕としても人材の素養の見極めと育成がある。信用できる人材としては、影山君は嗜好がやや特殊だ。一年組はまだ若い、南雲先輩は成績、人格ともに優秀、大越君もまあいいだろう。ふむ)


浩二はパソコンに移した写真で美子から貰った日常研究室の一同の写真を見る。浩二の嗜好からによる審美眼がひろがった。


浩二(レベル高いな、日常研究室。南雲君は豊満といえる肢体、大越君は眼鏡の似合う美人、手塚美子は陽気だが綺麗系だな、立花君は文系のかわいらしさだ、宇田川君は、うん。なんか見た事のあるアイドルアニメのヒロインを抜けた感じにしたようなもんか、まあいい、影山君は多少は信頼できるだろう悪意もない。交流としての楽しみは僕としても望むところだ)


浩二のひとさし指にはリングがはめられている。中指と親指で指を鳴らすと学習室で思いがけない大きな音が響く。浩二の発明品のマッスルリングである。出力を抑えてなおかつ身体能力は1.3倍に増幅する装置である。浩二の発明の進捗はすでに現在の既存技術の中から含めてもすでに抜きんでたものに成ろうとしていた。


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