第9話:ファイールズ明の章 解体手順

 解体工として、生業により自分達の養育の人生を送る父。幼き憧憬としては、同業としての他者も含めた周囲の父への信頼であった。幼き意見としての反対としての父を押し切る形で、曰く「解体手順」を学び、そしていつ頃かその原理は「発破」に至る。ファイールズ明、15歳。その知識は、人類が構築する構造物の解体としての技術としての安全性を貴ぶ「発破」に至り、苦笑いと心配を含めた称賛を専業としての生業とするものたちからの注意をあつめていたのであった。


明、15才。己でも必要としての高校生活。父は、大学の検討と費用の工面の安心を明に伝えるも、当人の言葉としては父の応援であり、自らの技能の希少性を活かしたかった。それによる、社会経済の歯車として。現在の環境としての生活は眩しくもある、物語や意識として含まれ、交差する視線の数々。俺は、含まれているのか。淡い可能性を抱くも、連帯意識からの常識からは離れているのは理解している。異性からの注意は引かないだろう。明の心境は流れ落ちる汗を不快としての情動乱れではなく、見つめるのは発破に至るまでの工程と結果の想定であり、満たされぬための欲情の発露ではなかった。


明は入学してからの生活は平穏と見えるものであった。学校生活と日常の中で徐々に己のたどり着いた解体手順としての技法「発破」の境地にもたどり着きつつある、お礼をもらって、扱える火薬により解体も披露している。心配としての周囲の目線は徐々に変移を感じる頃合いだった。


明「変かな、やっぱり」


学校生活ではどちらかというと注意を集めている。背丈こそ突出したわけではないものの、周囲から浮いているのは己の出自としての「血」であろうか。


明「アメリカ人って感じはしないなぁ、日本育ちだぞ?母さんは日本人だし、日本人だよな僕?」


学校の担任が休憩時間に声をかけてくる。男の教諭で鈴木一郎である。


鈴木「ファイールズ、頼めるかい。」


明「いいですよ、自分でも練習になりますし」


鈴木「すまんな、建付けが悪いのかな。」


明「放課後でいいですか?」


鈴木「ああ、場所へは一緒に行こうか」


明「それじゃ、6限おわったら教室で待っているんで声をかけてください」


鈴木「ああ、そうするよ。どうだ、学校生活は」


明「そろそろ慣れてきましたよ、大丈夫です」


鈴木「お前、あれだろ。ハーフなんだっけ」


明「はい、父親がインドです。もう帰化してますよ」


鈴木「なるほどね、ま、周囲の視線は多少は我慢してくれ、時期になれるだろう」


明「ええ、日本語も問題ないでしょ」


その時、周囲にいた男子生徒が声をかけくる


男子生徒「はーい、先生、何をたのんでるんですかぁ」


鈴木「聞こえてたか、いや、ファイールズが得意って聞いたもんで、いろいろ頼んでるんだよ」


男子生徒「得意って?」


鈴木「え?ええと」


明「いいですよ。別に。日曜大工とか。その辺だよ、練習もしたいし」


男子生徒「ああ、そうなの、物好きだね~そんなのわざわざやる?」


鈴木「結構本格的なんだこれが、それじゃファイールズ、放課後頼んだぞ」


明「はい」


担当教諭の鈴木が去っていった。先ほどの男子生徒と会話は続く。


男子生徒「日曜大工とくいなんだ?」


明「そうだよ、でも日曜大工というよりも解体手順、かな。


男子生徒「解体手順、。なにそれ」


明「ああ、父親が解体業者なんだ、自分でも勉強している。本格的な発破爆破とかやりたいんだよね」


男子生徒「発破、爆破???へ、へぇ、変わってるんだな」


明「・・・やっぱり?」


男子生徒「そんなのやりたい高校生いるかなぁ(笑)ん、わかった、んじゃ」


明(変、ではないだろう・・・いや、やはり普通に考えれば変か?)


明として学んだ技術はすでに一定の技量に到達しており、自身でも理解は深まっているのは自覚しいている。それによる

行動、結果のコントロール性。暇を感じれば、物体の解体手順を思考してしまう自分がいた。


明(楽しい、けどな。それなりに。やっぱり普通の事も楽しんだほうがいいのかな)


その日の放課後、担当教諭の鈴木に連れられて木工室に来た、明。鈴木による説明がある。


鈴木「それじゃファイールズに頼もうかな、一応、何人か応援連れてきたから」


明「はい、よろしく。」


木工室前には数人の男女の生徒たちがいる。木工室での作業の応援であろう。


鈴木「一応、監督として後で報告してくれるか、要領の説明するな。まず木工室の扉の建付けを見る、直せるかはまかせた。

それから木工室にある不要物の撤去だ。ゆっくりでいいからな。どれを捨てるかは指定するよ。ちょっとまってくれ」


鈴木が木工室の扉を開けようとするが、建付けが悪いのか、苦戦する。しばらくして扉が開かれる。


鈴木「掃除のときに苦情でなぁ、開けるのが毎回面倒だよ」


木工室はそれほど掃除は行き届いていないのか、多少の埃のある様相である。作業台には作業途中なのか木材を組み合わせたものがいくつも置かれている。


鈴木「一応、隅に分けといたから、この辺の木材は不要になったから撤去だな。麻生袋に入れてゴミ捨て場まで運んでくれ。」


明が口を開く


明「ばらしてもいいんですよね」


鈴木「ああ、結構好きにしてもかまわんぞ。ハンマーとか使ってもいい。怪我には気を付けるようにな。それじゃ頼んだぞ」


木工室には数名の生徒が残された。作業が終わったら鈴木を呼びに行く算段だ。残った生徒の一部は自分から希望した者もいる。明がてきぱきと作業を始める。まずは戸棚から軍手を取り出す。要領よく人数に配る。


明「僕が指示だしてもいいかな?どう?」


女性との一人が口を出す。立花律子だ。同じクラスで明同様鈴木に頼まれてきている。なんでも勉強としての事だが。


律子「うん、それじお願いしようかな。途中で写真撮るよ。資料になるかも」


なんの?と思ったが明は生徒たちに軍手を配り。戸棚から、手工具を含めて作業に入り始める。


明「それじゃまず、僕が引き戸の立て直しを治すから、みんなはハンマーと錐と麻袋を用意してください。解体するものの一応の確認。それから解体するけど、まず僕がお手本をしますから、よろしくお願いします。そこの広いエリアに養生引いといてください。あ、ブルーシートでいいですよ。


簡単な説明をしてから明が引戸の直しに入る。引きとを一端外す作業にはいる。男子生徒の一人に手伝ってもらい引き取を持つ。ひかれたブルーシートに静かに置く。それから、引きとを点検しながら、問題点を探す。やはり木材がゆがんでいるようだ。手工具で手早く直しに入る。


律子「明君、解体するの集めればいいだよね、どうやってばらせばいいの?」


明「ちょっとまってて、すぐ終わるよ」


経年劣化によるゆがみであろう、手工具で手早く作業をする。律子や他の生徒には、何をしているのかよくわからなったに違いない。男子生徒の一人に明が声をかけ、はめなす。


男子生徒「あれ?もう終わった」


明「終わり、これでいいよ。あとははめるだけかな。」


二人で引き戸をはめなおした。スライドさせて、開閉を見る。問題なさそうだ。


男子生徒「お、直り、早え」


明「それじゃ次は解体しようか。きりとハンマー使うよ。あと火薬も少し」


男子生徒「火薬、へ?何に使うの?あったっけ?」


明「大丈夫、僕が持っている。」


と明はポケットからガラスの小瓶を取り出す。黒い粉が入っているように見える。


律子「あれ?火薬って使うの?どう使うの?」


明「大丈夫、一応言ってある。実はこれがやりたかったんだ。いいかなみんな」


呼ばれた生徒は全員一年だ。上級生の物言いとしての生徒はいない。


律子(あ、なるほど)


一度、解体を視ている律子が気づく。


律子「あ、発破爆破ってやつ?できるの、危なくない?」


発破爆破の言葉に、その他の生徒の注意もむく。先ほど手伝った男子生徒も気になるようである。


男子生徒「おお、いいね爆破すんの?やってみせて、派手にいくのか?」


明「音はそんなに。派手かな、それじちょっとやってみせるね」


そういうと明は、。妙な形に釘うちされた木材に鉛筆で標を点けてから錐で穴をあけていく。ハンマーとその他の手工具をつかって木材を加工しているようだ。空いた穴に瓶からすこしずつ火薬を入れていく。


男子生徒「そんだけでいいんだ」


明「大丈夫、少しだけ使う。」


入れ込んだ火薬をこぼれないように、テープ止めをする。すでに導火線らしいものは引かれていた。かなり早い作業だ。


律子「ええと、離れていた方がいいのかな?ちょっと離れるね」


明「それじゃ準備できたから離れていて、うん。それぐらい。すぐに終わるよ」


明が皆に指示をだして、距離を取らせると伸ばした導火線を足元にまとめ、チャッカマンで火を点ける。着火された火花が

伸びていく。ほんの数舜だったろうか。それほど大きくもない「バン!」という音と共に妙な形の木材は、破壊されていた。

その構成する木材は周囲へ拡散することなく。中心点に向かう形で崩れ落ちる。残されたのは、解体としての破片の集まりである。成功だ。


明「よし。成功」


男子生徒「おお。いいね、すげぇ綺麗にばらけたな」


律子「すごーい、これ二度目だけど、ほんとにできるんだぁ」


他の生徒が明に聞いてくる。明として少し笑みを浮かべて答える


明「発破爆破さ、できるんだ僕」


他の生徒も目のあたりにした形に関心する


律子「うーん、ニッチ!影山さん好きそう。今度はなし聞かせてよ、ファイールズ君」


明「え?いいよ、今度お茶する?」


明としての意識としての学園生活、異性を含めた交友の目、そして父親ゆずりの気質が律子をお茶を含めて誘う言葉を口にださせていた。明の目にもこの立花律子という女子生徒は好ましく見える。


律子「え?ああうんいいよ、友達連れてね、それじゃどうすればいいんだっけ」


明「ああ、それじゃばらけた木材を麻袋に入れて、運んでもらえるかな。後は順に解体してくよ」


それから、廃棄資材の撤去の流れが始まった。明が発破爆破により解体し、その他の生徒が資材を麻袋に入れて運ぶ。

結果として女子生徒の何名かは指示されるがまま、軽作業を行い。男子生徒たちが運搬する形となった。

作業途中。男女を含めて会話が起きる。明の解体手順はスピーディだ。明も軽く会話に応じる。


律子(発破爆破かぁ~なんか明君楽しそう。でも。特異な男子高校生ってちょっと変)


ファイールズ明、15歳。その技量として有する解体手順の周知はその日より知られていくことになる。

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