第8話:日常研究会の活動とそれぞれのニッチ

咲子達が日常研究会の入部届を出してしばらくたつ、見学会を終えて咲子として入念に考えたつもりで届け出をだした。

資料を見る限りでは、活動として形はあり、かつそれほど強制的な雰囲気がなかったこと。日常の知識、学習として新しい知見に触れる機会を期待しての事であった。律子は仮入部期間があったが手芸部とのかけもちをしている、本入部は日常研究会としての所属となった。手芸部にはいつでも顔をだしてよいらしく、日常研究会を優先として時々顔を出している。本日は、あたらしく出来た、タピオカミルクティーの店舗の取材報告と結果としての文書を残すための執筆活動をする予定だ。咲子が部に顔を出すと、すでに影山と大越、そして南雲がそろっていた。


咲子「おはようございます、先輩」


影山が軽く手を上げる。


影山「ああ、おはよう」


南雲と大越もあわせて挨拶をする


南雲「おはよう、宇田川さん。今日はどうするの?」

大越「おはよう、タピオカ飲んできたんだっけ?」


南雲津久美。研究会所属の三年生だ。成人に近いからかスタイルの言い綺麗な女性と咲子は認識している。

咲子に似て、おっとりとしたところがある。今年は受験だが、成績は良いらしくあまり心配をする必要がないのか余裕が感じられる。


咲子「はい、飲んでくるついでにちょっと店員さんともお話してきました。長く続いてくれるといいけど。」


影山「宇田川さんも、慣れてきたね。今日は、報告書作ってみる?パソコン貸すよ。僕はどうしようかな」


咲子「すみません、借ります」


部の活動としてテーマを決め、取材や実践し。部内での報告とするである。形として残すためにレポートを作成する。

影山がノートパソコンを持ってきているので借りて作成するつもりだった。それから、部内での報告となるだろう。


咲子「大丈夫かなわたし。パソコンそんなに苦手じゃないけど」


大越「大丈夫よ、今まで作ったデーター見ながらでもいいし、オリジナルでもいいのよ、一応活動としての形を残しておきたいの」


南雲「宇田川さんも慣れれば、自分のスタイルができるわよ、それも個性ね」


咲子「はい、やってみます」


咲子からしばらくして律子と手塚美子も到着した。なれたもので最初は二人として同時に来ていたがいまは別々も多くなってきた。活動としてやることが結構にあるのである。


美子「おはようっ!ございまぁーす、先輩方!!手塚美子到着です」


手塚美子、一年。咲子と律子と同じくとして日常研究会に所属した女子生徒だ。少々、化粧気があり、軽そうな印象をうける。事実かるいのだが、勉強はそれほど苦ではないそうだ。「楽しそうだから、めんどうじゃなさそうだから」という理由で所属したようである。


美子「あたし、今日はどうしようかなぁ、私のタピオカの感想でも書こうかなぁ。ノーパソ、まだあります?」


南雲「私のがあるわよ、部でも購入したいわね。中古で購入する?影山君」


影山「だから、活動報告、デジタルでもいいから販売してみましょうよ。何かの足しになるときあるでしょ、だれか活動報告、打ち直してよ」


大越「スキャンじゃだめなの?」


影山「スキャンでもいいけどさぁ」


南雲「売るって言ったって、どうやって売るんだっけ」


影山「コンテンツ仲卸業者の、同人販売ですよ。そんなに難しくないはず。」


咲子「今日は私が、ノートパソコンかりていいんですよね」


影山「ああ、いいよ。僕は手書きでまとめるよ。」


美子「あたしは、南雲先輩のパソ、借りるかなぁ、やってみる、やってみる」


部の活動は比較的自由であり、建前上の曜日は定められているが、おおよそ「任意」であった。

当初は幽霊部員になるかと思ったが、テーマを決めてからの活動としては、咲子の予想外にやることがあった。なかなかに楽しい。

 

影山「もうすぐ中間テストだよ、そっちの方も気をぬかないように」


美子「はいはい、わかりましたよ。大丈夫だって、まだ」


律子「私はどうしよ。スマホで書こうかなぁ、あとでメールで送ればいいですよね」


大越「それでいいんじゃない、さて部長、私はコンピュータ室にいって、過去の資料データー化でもしてこようか。」


影山「うん、そうだね。僕は三人とすこししてから、行くよ」


南雲「私は雑誌よんでるわね、何かあったら言ってね」


新入生三人はそれぞれ作業に移る。新入生三人で訪問したタピオカティーの店舗の件の報告だ。すでに、過去の資料からテンプレートみたいな感じが出来ている。咲子は、過去のデーターを見始めた。美子も南雲から借りたノートパソコンを見ている。律子はスマホをいじり始めた。


咲子(うん、遊びに行ったお店の報告データーがあるなぁ、これを複製して、項目だけ残して、あとは書き込めばいいかぁ。

日時とか、場所とか平均予算とか、味、かぁ。店を閉めたところもあるなぁ、このデータみても時間たちそう)


影山「ところで、「非日常」の方も考えないとな。立花君、この学校の有望株とは話しできた」


スマホをいじっている律子が顔を上げた。律子に話しかけたのは他の二人はパソコンを見ているからだろう。


律子「ああ、はい。変でした」


影山「誰?、まあ変はともかく話を聞かせてもらえるかな」


律子「はい、それじゃ誰から、いこうかな。今まで話ができた「ニッチ」は4名ですね。

一年の「ファイールズ・明」君。同じく一年の「石坂正洋」君。「五条悟」君。それと二年の「石坂浩二」さん

ですね。ファイールズ君からはなしますね。ええと」


非日常研究。知見を深めることにより、将来を見据えての自身達の糧となるか、それとも相性として合わないと判断するかは不明だが。日常研究会では非日常分野の研究も行っている。希少価値のある体験をしたりとか、その道の分野をたしなむ人材に取材したりもする。いずれ、研究としての対象になる可能性も踏まえて身近な存在としての非日常の要素、いうなればニッチの認識は持っておくように活動しているのである。入部してからの非日常分野のニッチとしての律子が今あげた人物たちは目を点けられており、機会があれば話を聞き、交流を取っているのだ。もちろん、人間性の問題があるから慎重な面はあるが、同じくとしての学生、その辺はあまり問題ではないだろうとの判断をしていた。


律子「ファイールズ君から話そうかなぁ・・・彼は、インド人のお父さんと日本人のお母さんとのハーフだそうです。生まれも育ちも日本。だから自分の事はあまり外国人の血が流れているとは思っていないそうです。話したら結構フランクなんです、その辺はちょっと苦手かも。でも、時々、不快なことも耐えているというか、無視している時が感じられました。ええと、お父さんの仕事が解体工?なのかな。その流れで、ファイールズ君も建築解体の知識を勉強しているそうです。暇があれば、ときどき物を壊したりしてます。なんか研究と練習らしいです。グランドの脇の締まりの悪い物置の引きだし、空かないんで困ってたら。ファイールズ君が工具と油さして解決してたそうです。なんか、引き戸、火薬で飛ばした方が早くないかとか言ってたそうです。」


影山「発破爆破にかける情熱、だっけ?」


律子「はい、発破爆破が出来るんだ。と言ってますし機会があれば披露してくれるそうです。」


影山「いいね、そのニッチ、発破爆破というのがいい」


南雲「何に使うの?発破爆破。ああ、解体かぁ」


律子「木製の椅子ぐらいなら、綺麗に解体するのは造作もない、そうです。」


影山「誇っているね、己の技能。いいね、そのニッチ」

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