第1話

目を覚ますと視界は白で覆われていた。


「は?」


いやおかしいだろ、真っ白ってありえねーだろ!

何度か瞬きをしても眼を擦っても目の前にあるのは真っ白い世界。

真っ白だからここが何次元かわからん。

1、2次元だったら死亡確定で俺の人生終了案件なんだが?

ここどこだろー、なんて現実逃避をしていたら景色が変わった。

緑が豊かだな、でもこの地面人口っぽい手触りだな。

今俺がいる空間は3次元らしい。よかった、まだ死んでない。いや、もう死んでるかもしれない。

俺はなぜここにいるんだろう?

夢?それとも死後の世界?

夢にしては感覚がリアルすぎる。

死後の世界だとして、俺はなぜこんな常識の通じない場所にいるんだろう。

人工芝らしきところに座って考え込んでいると、地面が揺れた。え、地震?


「おい、そこの人間。俺の言葉を無視するとはどういう神経をしているんだ?」


考え事に集中しすぎて目が本来の役割を機能していなかった。顔を上げると黒髪の男が浮いているのが見えた。


「浮いてる!?」


「ああ、お前がいた世界は人間は浮くことが出来なかったな。」


そう言って地面に足をつける男。よく見たら赤い瞳だ。死神みたいな見た目してんな。


「死神とは失礼だな、あやつと同じことをいう。俺は創造神だ。お前が住んでいた地球とはまた違う世界をつくった神だ。人間の魂を回収する低脳と一緒にしないでくれ。」


何気に心読んでくるなこの神。俺の思考筒抜けなのかよ。


「見たくて見てる分けじゃない。勝手に声が流れ込んでくるんだよ。」


へえ、神様も大変だな。


「それで、俺はなんでこんなへんてこりんなところにいるんだ?」


ここはおれがいた世界ではないのだろう。だからといってこの神様がつくったという世界ではないだろう。流石に雑すぎる。


「正解だ、少年。ここはお前を迎え入れるために作った空間。俺が作った世界はまた別にある。お前がここにいる理由はお前が死んだからだ。お前の魂は地球の輪廻の輪に戻らない。」


「俺は死んでいない。というか死んだ記憶はないぞ?」


「正確に言えば死んではない。地球の創造神がお前の魂を持ってきてくれたんだ。そっちの世界では異世界転移と呼ぶのだろう?トラックに轢かれるには可哀想だから痛みがないように魂を刈り取ってきたんだ。」


異世界転生。漫画やアニメで死ぬほど読んだ。

あれ現実であったらただの誘拐なんだけどな。


「少年、未練はないか?」


この神様、優しいんだな。人間に気をつかうなんて。


「ないよ、何もない。だから大丈夫。」


家族も親族も友人もいない。俺はどこにいてもいい。だから大丈夫だ。むしろ新しい世界なら俺を受け入れてくれる人もいるかもしれない。


「そうか、なら俺の世界について説明しよう。」


神様が言うには俺が転移する世界は剣と魔法の世界。誰もが憧れるファンタジーだ。

俺が呼ばれたのは大人の事情で言えないらしい。

日本人は空気を読めるからな、触れないでおいた。

王道とは違うのが魔王は人間と仲がいいらしい。

ただそれが気に食わない魔人、まあ魔界の人間みたいなものが人間界で暴れているそうだ。それを止めて欲しいらしい。


「日本人は平和主義だと聞いた。この世界の人間は血の気が多いからな。お前にお願いしたい。

そちらの世界でいうちーと?能力を授けよう。」


厳つい見た目をしているのにこの神様可愛いな。


「わかった、俺も平和な世界が好きだからな。

一部の魔人と人間に仲直りさせればいいんだろ?

それが終わったらこっちの世界で遊んでいいか?」


「ああ、勿論だ。むしろついででいい。

地球での生活は楽しくなかったのだろう?こちらの世界で楽しく過ごせばいい。寿命は長めにしておいたからな。」


この神様ほんとに優しいな。いい人すぎて泣ける。


「この穴に入ってくれ。」


「わかった、ありがとう神様。」


穴に向かって一歩踏み出す。

どんな世界なんだろう、と思いを馳せながら。

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