勘違いは勘違いではなくて

 二人で決めた事ではないが放課後に教室で練習しようという感じになった。

 予定があればLINEで連絡して無かったらいつも通りの集まっての繰り返しだ。

 その生活をしていつの間にか三か月経った。


「松岡くん、進展しましたかね」

「全く、相手は俺に興味ないのかな…」


 友里の頬に触れながら東司は言う。

 友里はもう慣れた様子で初心な反応を見せずに相槌を打つ。


「ねぇ松岡くんその子って同じクラスの子なの?」

「…そうだな同じクラスの子」

「誰?誰なの?」


 興味津々に友里が聞くが教えてはくれない。

 誰をオトしたくてそんなことをするのか教えてくれないと相手がどういう事が好きかとか調べたりできないじゃないかと言っても応えてはくれない。


「教えないって言ってるだろ」

「せめて性格だけでも」

「教えたら分かるから絶対にダメ」

「そんなことないけどなぁ…」

「そんなことしかないんだよ」


 東司は手を離す。

 友里は離れたことに少しだけ寂しさを覚える。


「松岡くん」

「…ん?」

「早くその子に告白してね」


 そうでないと私が貴方を好きになりそうだから、勘違いしてしまうから。



 あれから東司は友里に「しばらくできない」とメッセージを送って放課後一緒にいる時間は無くなった。

 前のような一人でいる時間が増えた。


「あれ?」


 朝自分の机に教科書を入れようとしたときに一通の手紙が入っていることに気づくこっそり中を見ると放課後ここで待っていてくださいと書かれていた。

 自分宛ではないだろうと確認をするが、飯田友里さんへと書いてある。

 差出人の名前が書いてないせいで誰か分からない。


 誰がこんなことをしたか分からず不安で友里は授業に集中できなかった。

 結局そのまま時間は過ぎ約束の時間になった。


(これでもし嫌がらせだったら最悪)


 こういう時は告白と相場が決まっているが友里からしたら呼び出し何て嫌がらせでしかない。

 漫画で起きることが現実であることはありえないと思っているからだ。


「飯田」

「松岡くん?どうしたの?」


 教室に入ってきたのは険しい顔をした東司だ。


「ごめんね私今日は練習できない」

「知ってる呼び出したの俺だから」

「は?」


 友里の口から低い声が出る。


「そんな怖い声出す?」

「嫌がらせされたのかなって」

「嫌がらせじゃないし真面目な話だから安心しろ」

「もしかして…告白成功したとか?」

「違う違う」


 なんだろうと友里は気になって仕方のない様子だ。

 東司は深呼吸をして友里を見つめる。

 覚悟を決めた顔つきになっている彼の様子に何か嫌な予感がした。


「俺お前のこと好きなんだよ」

「…」


 友里の背中に汗がにじむ。

 どうして自分なのか分からないそんな素振り見せた事なかったじゃないかと言いたいことがたくさんあるのに口から出ない。


「…私のことを好き?嘘でしょ」

「嘘じゃないって」

「どうして好きな子惚れさせたいって言ってその本人に頼んだの」

「俺が意気地なしだから怖かったから」


 ごめんと頭を深く下げて東司は謝る。

 友里は慌てて頭を上げる様にお願いしている。


「私、松岡くんのことそういう目で見てないよ」

「それでも絶対に振り向かせるから」

「私のことどうして好きなの…もっとかわいい子いるでしょ」

「俺お前しか見てないずっとお前のことしか考えてない」

「そ、そんな素振り見せてなかったじゃん」

「お前が気づかなかっただけだろ」

「言葉で言わないと分からないって」

「これからは行動でも言葉でもちゃんと伝えるから」

「何でそこまで必死になる必要があるの」


 友里は頭は状況が把握できなくて頭がパンクしそうになる。

 そんな彼女に追いうちをかけるかのように東司は言った。


「誰にも渡したくないから」

「何でこうも恥ずかしい言葉ばっかり…」


 友里の顔は羞恥で真っ赤になっている。

 もうおかしくなりそうだ。


「返事はまだ良いよ待ってるから」


 でも早めにしてくれると助かるかな…そんなに待てできないから。










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ウソで始まる純粋な恋 赤猫 @akaneko3779

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