ウソで始まる純粋な恋
赤猫
遠回りで気づけない
「手…つなぐのって難易度高くない?」
顔を少し赤くして少女は言う。
その向かいにいる青年は顔色ひとつ変えずに指を絡める。
「ちょ…?!指!」
「良いだろ別に…本当に付き合ってる訳じゃないんだから」
そうこの二人は付き合っていないただ練習をしているだけ。
今日も放課後誰もいない教室で目の前の青年のために少女は付き合っている。
この関係は随分と前…という訳ではない。
お互いに干渉することは無かった高校二年生の夏のこと。
幼馴染といっても家が近くて親が仲良し。
幼い無垢で何も知らなかった頃は一緒に遊んだりしていたが、中学生になり少しずつ距離は離れていった。
友達ではいられなくなった。
一緒にいれば恋人と勘違いされるからお互いを大事にしたいから距離をとってただの近所に住んでいる男と女になった。
「とう…
「はよ」
ただのクラスメイトに向ける挨拶。
友里は寂しいとは思わなかった。
友人がいて笑って過ごして女の子らしい会話をして。
なにかが足りないとは思ったが、気のせいにして知らないフリをした。
「…はぁ」
放課後一人になると寂しく感じる。
友人たちは早々に帰宅をしてしまったからだ。
友里はぼーっと教室のある一点を見つめる。
それは東司の席だ。
(たまには話したいな)
そう思ってももう話しかけ方なんて忘れてしまった。
いつも彼にどう話しかけてたのか全く分からない。
「まだ帰ってなかったの?」
「あ、うん帰っても暇だから⋯」
噂をしていたらなんとやらそこには驚いた様子の東司がいた。
ふーんと興味無さそうに東司は友里の目の前の席に座った。
「ま、松岡くんは帰らなくていいの?」
「帰るけど」
「お疲れ様」
「帰るぞ」
「ん?」
友里は誰かに言ってるようにも感じたが、最終的に東司が帰るのかと思った。
「あ、バイバイ…?」
「何で俺がお前を置いて行く話になってるんだよ」
「違うの?」
「違うっつの」
大きく東司はため息をつく。
「外暗いのに女子一人で帰らせるほど冷たくないって」
「そうなんだ」
「そうなんだって反応薄くないか?」
「そんなもんだよ」
友里は鞄を持ち立ち上がる。
東司もそれに合わせて立ち上がった。
「一緒に帰るのっていつぶりだろうねー」
「さぁ?小学校以来?」
話してみれば何とかなるものですぐに適切な距離感になった。
なんだお互い何も変わっていないじゃないか、と友里は安堵する。
「私さ松岡くんが苗字で呼んできたときに嫌われたのかなって思って不安になっちゃってさ…でも名前とかで呼ぶと周りの人に勘違いされたりするもんね東司もしかして私に気遣ってくれたのかなーとか思ったりして」
あははと笑って言う友里に対して東司は無表情だ。
友里は何か自分が変な事を言ってしまったのではないかと思い慌て始める。
「あ、ごめんもしかして…彼女とか?!できたりしてそれでとか?!」
「彼女できてるならそいつと帰ってるだろ」
「そ、それもそうか!ごめんね」
気まずさが増してしまい言葉が出てこない。
友里はこの状況を何とかしないととは思うが上手くいかない言葉が思いつかないからだ。
そんな時に東司が口を開いた。
「お前は」
「え?」
「いないの…彼氏とか」
何を言い出すかと思えばそんなことかと怖がって損したと友里は思って笑って首を横に振る。
「いたら松岡くんと帰らないよ」
「ふぅん」
「興味ない感じですかね」
聞いてきたのはそっちなのにと心の中で呟く。
「いいや?興味ないとかじゃなくて…」
「どういう意味なの?」
「言わん、秘密」
「えー!」
東司はそんな友里の様子を見てふっと笑った。
「何がおかしいの松岡くん」
「さっきから他人みたいな感じで接してくるからやっと普通に話してくれて」
見た事の無い優しい表情の彼に友里の胸はドキリと音を立てたような気がした。
「そういうこと言ってるから彼女できないんだよ」
「これでもそう思う?」
友里の手を握る東司。
友里は突然の出来事に肩を揺らす。
「や、やめ…」
指を絡めて感触を確かめるようにして触る彼の表情を友里は見てしまう。
瞳に熱を帯びた艶っぽい顔。
どうしたら良いのだろうか友里はパンク寸前の頭を動かす。
「一つお願いしてもいい?」
「な、内容次第」
パッと東司は手を離す。
少しだけ友里は距離を置いて彼を睨むようにして見つめる。
「俺さ好きな子いてさその子堕としたいのよつなぐのって難易度高くない?」
顔を少し赤くして少女は言う。
その向かいにいる少年は顔色ひとつ変えずに指を絡める。
「ちょ…?!指!」
「良いだろ別に…本当に付き合ってる訳じゃないんだから」
そうこの二人は付き合っていないただ練習をしているだけ。
今日も放課後誰もいない教室で二人は彼氏彼女の練習をする。
この関係は随分と前…という訳ではない。
お互いに干渉することは無かった高校二年生の夏のこと。
幼馴染といっても家が近くて親が仲良し。
幼い無垢で何も知らなかった頃は一緒に遊んだりしていたが、中学生になり少しずつ距離は離れていった。
友達ではいられなくなった。
一緒にいれば恋人と勘違いされるからお互いを大事にしたいから距離をとってただの近所に住んでいる男と女になった。
「とう…
「はよ」
ただのクラスメイトに向ける挨拶。
友里は寂しいとは思わなかった。
友人がいて笑って過ごして女の子らしい会話をして。
なにかが足りないとは思ったが、気のせいにして知らないフリをした。
「…はぁ」
放課後一人になると寂しく感じる。
友人たちは早々に帰宅をしてしまったからだ。
友里はぼーっと教室のある一点を見つめる。
それは東司の席だ。
(たまには話したいな)
そう思ってももう話しかけ方なんて忘れてしまった。
いつも彼にどう話しかけてたのか全く分からない。
「まだ帰ってなかったの?」
「あ、うん帰っても暇だから⋯」
噂をしていたらなんとやらそこには驚いた様子の東司がいた。
ふーんと興味無さそうに東司は友里の目の前の席に座った。
「ま、松岡くんは帰らなくていいの?」
「帰るけど」
「お疲れ様」
「帰るぞ」
「ん?」
友里は誰かに言ってるようにも感じたが、最終的に東司が帰るのかと思った。
「あ、バイバイ…?」
「何で俺がお前を置いて行く話になってるんだよ」
「違うの?」
「違うっつの」
大きく東司はため息をつく。
「外暗いのに女子一人で帰らせるほど冷たくないって」
「そうなんだ」
「そうなんだって反応薄くないか?」
「そんなもんだよ」
友里は鞄を持ち立ち上がる。
東司もそれに合わせて立ち上がった。
「一緒に帰るのっていつぶりだろうねー」
「さぁ?小学校以来?」
話してみれば何とかなるものですぐに適切な距離感になった。
なんだお互い何も変わっていないじゃないか、と友里は安堵する。
「私さ松岡くんが苗字で呼んできたときに嫌われたのかなって思って不安になっちゃってさ…でも名前とかで呼ぶと周りの人に勘違いされたりするもんね東司もしかして私に気遣ってくれたのかなーとか思ったりして」
あははと笑って言う友里に対して東司は無表情だ。
友里は何か自分が変な事を言ってしまったのではないかと思い慌て始める。
「あ、ごめんもしかして…彼女とか?!できたりしてそれでとか?!」
「彼女できてるならそいつと帰ってるだろ」
「そ、それもそうか!ごめんね」
気まずさが増してしまい言葉が出てこない。
友里はこの状況を何とかしないととは思うが上手くいかない言葉が思いつかないからだ。
そんな時に東司が口を開いた。
「お前は」
「え?」
「いないの…彼氏とか」
何を言い出すかと思えばそんなことかと怖がって損したと友里は思って笑って首を横に振る。
「いたら松岡くんと帰らないよ」
「ふぅん」
「興味ない感じですかね」
聞いてきたのはそっちなのにと心の中で呟く。
「いいや?興味ないとかじゃなくて…」
「どういう意味なの?」
「言わん、秘密」
「えー!」
東司はそんな友里の様子を見てふっと笑った。
「何がおかしいの松岡くん」
「さっきから他人みたいな感じで接してくるからやっと普通に話してくれて」
見た事の無い優しい表情の彼に友里の胸はドキリと音を立てたような気がした。
「そういうこと言ってるから彼女できないんだよ」
「これでもそう思う?」
友里の手を握る東司。
友里は突然の出来事に肩を揺らす。
「や、やめ…」
指を絡めて感触を確かめるようにして触る彼の表情を友里は見てしまう。
瞳に熱を帯びた艶っぽい顔。
どうしたら良いのだろうか友里はパンク寸前の頭を動かす。
「一つお願いしてもいい?」
「な、内容次第」
パッと東司は手を離す。
少しだけ友里は距離を置いて彼を睨むようにして見つめる。
「俺さ好きな子いてさその子オトしたいのよ」
「……」
「だから友里にはその子惚れさせるためにどういうことしたらいいか検証させてよ」
この言葉から友里と東司は幼馴染から別の何かになった。
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