第10話 戻りつつある日常

 翌朝


 メグッチはまだ寝ている。


「鉄也、様子を見てきたらどうだ」


 父親が心配そうに声をかける。


 しかし、今日も忙しいらしく、父親はいつもより早く、出勤の準備をしている。公務員でもブラックな職場になることがあるのかと同情する。

「じゃあ、行ってくる」


 さて、眠り姫だ。昨日はわたしが自転車で家に着く頃には眠っていた。メグッチはタクシーで家に着くと直ぐ寝てしまったらしい。

 

 わたしは眠り姫の王子様に成れたのであろうか……。自室で寝ているメグッチのもとに行くと、寝顔は綺麗であった。


「ううう、はい、今起きます」


 ありゃー起こしてしまったらし。


「ご飯が食べたいです」


 寝ぼけているのかと思ったが違うのか?わたしが首を傾げていると。


「お腹が空いたの」


 これは本当にお腹が空いているのかと思う。


「そうか、よし、ハムエッグでいいか?」

「はい、嬉しいです」


 ここでわたしが料理を得意としているのは自慢していいかな。


 メグッチに少し待ってと言って、キッチンに向かう。


 わたしはフライパンに火をつけるとハムをいれてから素早く卵を二個入れる。プライパンから香ばしい、かおりが上がってくると。蒸らし為に乗せたふたを取り、ここは半熟の焼き加減で火を止める。フライ返しで大きなお皿に乗せる。と、ハムエッグの完成である。


「うあああ、美味しそうだな」


 メグッチはご飯をよそうとガツガツと食べ始める。美味しそうに食べてくれてわたしも上機嫌になる。


「ごろにゃん、ごちそう様」


 メグッチに笑顔が戻りわたしも笑顔になる。こんな日常が幸せと言えるのであろう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る