第4話 夏祭りへ……

 それから、チャージ式のカードを使い、わたし達は浴衣を買った。このまま、夏祭りに行きたかったが、まだ、時間がある。


 いったん、家に戻ることにした。


 総合スーパーから県立総合病院のバスターミナルに向かったのである。そこで、路線バスを乗り換えて、自宅に戻るのだ。


 県立総合病院へのバスの道のりは乗車客も多く。二人きりとはいかなかった。ここでイチャイチャしていたら。流石に迷惑であろう。


 しかし、メグッチは隣に座り、寄りかかってくる。


 疲れたのか……。


 帰りのバスは荷物も多く難儀する。そんな合間にスマホで夜の天気予報を見る。


『山沿いの方面を中心に雷を伴った雨に注意して下さい』


 夏の定番の予報だ。つまり、夕立で濡れる確率があるとのこと。さて、県立総合病院に着いた。バスの乗り換えだ。


 待ち時間は総合スーパーで買ったたい焼きにしよう。これはメグッチへのサプライズだ。


「わああああ……たい焼きだ」


 わたしは目を細めてガツガツと食べるメグッチを見ていた。


「はい、美味しいです。鉄也さんも一緒に食べられたら。もっと、幸せです」


 そうか……?


 メグッチへのサプライズのつもりが一口たべると。幸せなカップル感が増す。こんな気持ち初めてだ。


そして、しばし、待つと自宅方面に向かう。バスに乗り込む。ヤバ、少しスケジュールが押している。自宅でゆっくりとしている暇がない。


 浴衣の着付けは大丈夫であろうか?今のうちにスマホで調べておこう。ふむふむ、これは大変だな。不器用なわたしは少し絶望する。


「鉄也さん、わたしは着付けができます」


 ほほーう。


 わたしが関心していると。


 少し悲しそうなメグッチであった。


 そうか……大富豪から色々仕込まれたらしい。それはメグッチの人格を否定するもであった。


わたし達はバスを降りると自宅に向かっていく。


『ゴゴゴゴゴ!』


「じ、地震だ!」


 しばしの揺れに戸惑うのであった。


「メグッチ、大丈夫か?」

「はい……」


 地震の揺れはたいしたことは無かったが。しかし、胸騒ぎを感じる。


 今日の夏祭りの湯元神社は裏山に大きな火山があり。火山の鎮魂の為に建てられた、神社である。


 とにかく、自宅に着いた。


 メグッチに手伝ってもらい。わたしは急いで浴衣の着付けをする。父親の一郎は町内会の役員として祭りの運営に携わっている。先に会場にいるはずだ。


 うむ、夏祭りに出発である。


 わたし達は夏祭りの会場まで一キロほど歩くことになる。メグッチの浴衣姿は二色のアサガオが咲いており、可憐であった。


 カラン、コロン、と、独特の音のする。メグッチの下駄はお祭り気分が増すのであった。


 このまま、永遠が続けばいいなと思う。


「少し、歩くが大丈夫か?」

「はい、頑張ります」

「無理はするな、わたしはメグッチを大切に思っている」

「はい、ありがとうございます」


 ぎこちない会話になってしまったが問題なかろう。


 更に神社の方に向かうと……。


「あああ、てっちゃんだ」


 むむむ、わたしをてっちゃんと呼ぶのは部活の後輩の『足立山 舞』である。舞も夏祭りにきていたらしく、藤の花の浴衣姿であった。


「げげげ、彼女がいる」

「えええ……あああ、これは、妹のメグッチだ」

「嘘つき、そんな、てっちゃんは嫌いだ」


 やはり、恋人臭が消せないらしい。後輩の舞は神社の方に走っていく。もしかして片思いであったりして。


 ま、舞だしそれは無いな。


「鉄也さん、これで良かったのですか?」

「うん……舞は鉄のハートを持っている。この程度では何ともない」

「はぁ……」


 いかん、湿っぽくなってしまった。わたしは自分の頬をバシバシと叩く。


 そんなことをしていると湯元神社に着くのであった。

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