第23話 三姉妹の説得なんて俺には荷が重いです……。
俺の不参加により、友人Pの合コンは、お流れになるはずだったが……。
「おい、幸村〜。なんだよ、その格好」
駅近くのカラオケ屋前で友人Pが俺を上から下まで舐めるように見ている。
コイツにソッチの気はない。だたのファッションチェックだ。
「変か? 一応これエリカたちに選んでもらったんだけど……」
選んでもらったなんて言ったが、この格好は今日だけの特別仕様ってわけじゃない。
悲しいことに、俺はファッションセンス皆無らしく、だからだろう、三姉妹たちは俺が服を買いに行こうとすると必ず付いてきて、勝手にコーディネートしてくれるのだ。
つまり、ありがたいことに俺の普段着は全て女子のお墨付きのはずなんだが……。
「選んでもらった……ねぇ……。エリカちゃんのセンスは否定しねーけど、ちょっと地味すぎんな。こういう時は俺みたいにド派手に決めねーと!」
「派手か……。まぁ、たしかに派手は、派手だな、お前の格好」
Pは、真ん中にドデカい髑髏がプリントされたチェーン付きの真っ赤なTシャツに、なぜかボッロボロに破れまくったジーンズを合わせている。何とも言えない格好だ。
(よくわからんが、これがオシャレなのか? 違う気がするが……)
「だろ? なんなら行きつけのショップに今度連れていってやってもいいぜ?」
(んー。なんかヤバそうな店っぽいし、お断りだな)
「そんなことより、そいつを紹介してくれよ」
話を変えるため、Pの隣にさっきから黙って立っていた男をアゴでしゃくる。
ソイツは背が少し低めでメガネを掛けた神経質っぽい奴で、Pが連れてきた男なんだが、俺とPが喋っている間も我関せずで遠くを眺めていた。
「あ、そうだったな。コイツは中学の時のツレで竹内。
Pにそう紹介された男が軽く俺に向けて会釈する。
「竹内力か、強そうな名前だな。よろしく」
「あ、はい……。よろしく……お願いします」
竹内くんは蚊の鳴くような声でそう言うと、すぐにそっぽを向いてしまった。名前の割に暗そうな感じだ。
(こんな感じで今日大丈夫なのか……? 今日は——)
「いたいたー! 鰐淵くーん! あっ! やったぁ! ホントに斑鳩くんも来てるっ!」
——合コンなんだぞ?
◇◆◇◆◇◆◇◆
話は少し戻って合コンの数日前。三姉妹たちと食卓を囲む中、意を決して俺はこう伝えた。
「実はさ。俺、今度、合コンに行かなきゃならなくなったんだ」
俺の発言を受け、エリカが今まさに食べようとしていたコロッケを机の上に落っこどした。
アヤ姉は食卓の真ん中にあったカボチャの煮物に箸をグサリと突き刺し、そのままピタリとフリーズ。
ヒナは飲もうとしていた麦茶を口の端からダバダバとこぼしている。
「聞いてる? 俺、今度、合コン、行く」
聞き取りづらかった可能性を考慮して、念のため単語を区切って伝えてみれば、バンっと三人が同時に机を叩き、立ち上がった。
「「「なんで!!??」」」
「いや、何でって言われても……。ウチのクラスに
俺の釈明に顔を見合わせる三人。
「軟禁しないと……。ユキくんを早く軟禁しないと!」
(え? 俺、合コンに行こうとしただけで、アヤ姉に軟禁されんの? まぁ、監禁じゃないだけマシか! ……って、思うわきゃねぇだろ)
「私は嫌っ。ユキが合コンに行っちゃうなんて絶対に嫌っ!」
(いや、エリカに嫌がられても……。もうPと約束しちまったし)
「そうだ! ヒナもついて行く! で、女の人が話し掛けてこないように、ずっとユキ
(誰が合コンに妹を連れて行くんだよ。他の参加者の迷惑だろ)
「……よし。皆の言いたいことはわかった。だが、俺は合コンに行かなきゃならないんだ。アイツと約束しちまったからな。合コンに行くって。男なら一度した約——」
「「「ダメっ!」」」
「俺の話を——」
「「「ダーメっ!!」」」
——ミッション発生。
『なんとかして三姉妹を説得せよ!』
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