第12話 まだ二回戦なんで出来れば優しめの命令でお願いします……。

——王様ゲーム、二回戦。


「「「王様だ〜れだ!?」」」

「ヒナだよ〜んっ」


 早くも愚王が誕生した。ヒナが「おーさま」と書かれたアイスの棒を天に掲げている。


 世(風紀)が乱れる予感。たぶんヒナは史上二番目に愚かな王となるだろう……。


「えへへ〜。ユキにぃにどんな命令しちゃおっかなぁ」


 さっそくルールを無視して俺を狙い撃ちにするつもりだ。この愚王っぷりたるや……。


「ヒナちゃ〜ん? 直接ユキくんに命令しちゃダメなんですよー?」


 アヤ姉が愚王ヒナに対して、すかさず進言している。


(一番愚かな王になりそうなアヤ姉だけど、案外、家臣としては優秀だなぁ)


「わかってるって〜。冗談だってば。じゃあ、二番の人、ヒナのほっぺにチューして〜。それはもう激しくねっ」


 いきなり命令が下され、エリカが慌てたようにバッと立ち上がる。

 俺の心臓がドキリと脈を打った。


 自分のアイスの棒を今一度確認してみれば、そこには数字の……。


「ちょっとヒナ! いきなりチュ、チュ、チューって! そんな、チューって! ダメよ、そんなの!」

「えー。でも、ほっぺだよ?」

「ほっぺでもダメ! キスは一番好きな人としかしちゃダメなの!」


 頬への接吻ごときでエリカが猛抗議しているけど、昨夜、俺のベッドの中に潜り込んでいたくせに、どの口が言ってるんだ?


「あらあら〜。エリカちゃんってば焦りすぎだよ〜? さぁ、ヒナちゃ〜ん、こっち向いて。はい、チューっ!」

「ああ、なんだ。二番はアヤ姉か。テンパって損したわね」


 ちなみに、俺は三番だ。


「アヤお姉ちゃんにチューされた……。おかしいなぁ。なんでこうなっちゃったんだろ……」

「いや、ヒナ……。お前が命令したからだろうが。演技でいいから少しは喜べよ」


 アヤ姉が不憫だろ……。


「はいは〜い! 次、行っちゃお〜! 今度こそ王様になるぞ〜っ」


 まぁ、アヤ姉は気にしてないみたいだし、別にいっか。


◇◆◇◆◇◆◇◆


 その後、ヒナがエリカに肩を揉ませたり、アヤ姉がエリカに胸を揉ませたり、そして、俺がエリカにキャベツの浅漬けを揉ませたりと、なぜか連続で俺たちはエリカに色々なモノを揉ませていた。


「も〜っ、なんで私ばっか揉まされるのよっ。私も揉〜ま〜れ〜た〜い〜っ! これって不平等なんじゃない!?」

「お前のクジ運が悪いだけで別に平等だろ。怒るなら自分のくじ運の無さに怒れ」


 チャンスは平等に与えられているんだから、これは平等そのもの。

 結果にまで平等を求めるなんて、そりゃ強欲ってもんだろう。


「ユキ……。アンタ、見てなさいよ? 王様になったらアンタにすっ〜ごい命令しちゃうんだからね」


 俺がエリカにすっ〜ごい命令をされる確率なんて計算してみれば五パーしかない。凄んでるところ申し訳ないが、まぁ、まず不発に終わるだろう。


「そうか。頑張れよー」

「も〜っ! 絶対アンタを赤面させてやるんだから〜っ」

「いや、俺が出来ないようなムチャな命令はやめろよ? 変なこと命令してきたら普通に拒否するぞ?」

「ダメでーす。拒否は許されませーん。王様の命令は絶対なんですー」


 こんなことを言ってはいるが、エリカは意外に分別のある方だから、アヤ姉みたいな卑猥な命令はしてこないと思う。……たぶんだけど。


 多少の不安を感じながら、アイスの棒を引くと、棒の先には四番と書かれていた。


 ……残念ながらハズレ。


 一方、エリカは……。


「……やったわ。……ついに私の時代。……私が……この私こそが王様よ!!」


 恒例である「王様だ〜れだ!?」の文言すら飛ばしてエリカが宣言する。

 よっぽど嬉しかったのか、立ち上がって、その場でクルクルと回り、どエラいはしゃぎようだ。


(五分の一を突破されちまった……。まさかこの調子で次の四分の一も突破しちゃわないだろうな?)


 不安が募り、自然、俺はゴクリと唾を飲み込んだ……。

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