第13話 次なる示達

「ヴィクトリア殿、気づいておられるか?」


「えっと、何をでしょうか?」


二人は現在、貧民街を駆けながら情報を集めている。


デイビスたちのように勢力的に狩りは行っておらず、手を出されたら反撃するのが二人のスタイルだ。


しばらくこういった活動を行ってきたことで、体力的にも精神的にもヴィクトリアに成長が見られる。


出会った頃の甘えきった姿はどこへいったのやら。


トンプソンは感心する。


「絶えず視線を感じるのだ。だが、誰かにつけられているという様子もない」


「監視の目が各所に設置されているということですか?」


「恐らくな。それがここ数日で明らかに増えている」


「同じようなルートを何度も走っているのも、それを探すためだったのですか?」


「うむ、気づいておられたか。どこで視線が切れて、どこで視線が増えているのか。そこから標的を逆算するために日夜調査を行っていたわけだ」


「なるほど。しかし私では監視の目があることすら気が付きませんでしたね」


「こればかりは経験によるものが大きいから仕方のない部分もある。こういうリベラのような極限の状態が続けば、いずれ鍛えられていくはずだ。もっとも、ヴィクトリア殿には無用の技能かも知れんがな」


「トンプソン様のお手を煩わせないためにも、できれば獲得しておきたい技能ですね。少なくとも、頂いたスキルだけでも使いこなせるようにならなければ……」


「……早速で悪いが、ヴィクトリア殿にはスキルを使用してもらおう」


「と、いうことは?」


「監視者を誘き出す。次に私が足を止めたら即座に背後に向けてスキルを使用したまえ」


「か、畏まりました」


「では、行動開始だ」


ヴィクトリアが目的地を定めているであろうトンプソンに追従し、周囲を確認する。


今では貧民街も歩きづらく変貌してしまった。


瓦礫や遺体、様々なものがそこら中に散らばっている。


トンプソンは何事もないかのように駆けているが、ヴィクトリアは付いていくだけで精一杯だ。


貧民街に来る前ならここまで活発に活動したことはない。


しかし今ではかなり身体が動くようになっている。


環境が人を変える。


トンプソンが以前言っていた通りだ。


遺体にすら驚きを覚えなくなっている。


彼は腐りきった環境を変えるべく行動していると言っていた。


確かに、腐敗した王家を変えるなら自分一人が変わったところで意味がないかも知れない。


それこそ、大幅な改革が必要だ。


王家を滅ぼさなければならないというのも、あながち間違いではないのかも知れない。


ヴィクトリアはそんなことを考えながら、トンプソンの背中を追った。


しばらく走ると、トンプソンがパタリと足を止めた。


そこは誰も入ってこないような薄暗い路地裏。


しかも袋小路になっており、下手にこんな場所にやってきてしまっては危険が伴うのは明白な、そんな場所だ。


すぐにヴィクトリアはトンプソンに言われたことを思い出して後方から上空一帯にスキルを発動させた。


彼女が彼から与えられたスキル──『Future visi未来視on』。


それは、動きを止めている場合のみ数秒先の未来が見えるというもの。


このスキルを与えられた時は、あまりの性能の高さに返却を考えたものだ。


トンプソンは一体どれだけのスキルを抱えているのかと思わず聞いてしまったが、どうやら彼の仲間にスキルを研究している者がいるらしい。


そしてこのスキルもその仲間が作り出したもので、こんなに驚愕たる性能にも関わらず失敗作名のだそうだ。


そもそもヴィクトリアはスキルなるものを知らなかったし、それを研究している者がいるなど稀有にも程がある。


彼女はスキルの製法までは教えてもらえなかったが、これらのスキルはある時期にドクターとトンプソンが共同で行っていた研究の賜物。


研究内容は、こうだ。


ドクターが極限の環境下に人間を置いてスキルを発現させ、トンプソンが貧民街へ連れて行ってスキルを抽出する。


極限の環境下とは、例えば灼熱の環境下で炎熱耐性を獲得させたりするような非道な実験から、拷問だったりと多岐にわたる。


その悉くは被験者の死亡で失敗に至るものが多く、それほど多くのスキルは製造できていない。


だが、出来上がったスキルはどれも高性能なもので、幾つか有用なスキルをトンプソンは備えていた。


トンプソンが彼女に与えたスキルは──。


Conquest環境影響無視』:大気影響を受けなくなる


『Future visi未来視on』:静止時において、数秒先の未来を覗くことができる


Telepath念話』:思念での会話を可能にする


これら以外にもあるにはあるが、実質的に使い勝手が良いのはこの3つだ。


貧民街の人間からすれば、スキルを複数所持しているなどあまりにも贅沢な話だ。


それでも彼女がそれを可能にしているのは、トンプソンの気まぐれによるものだ。


トンプソン自身、これらのスキルを捨てる気持ちでヴィクトリアに与えた。


だがしばらく同じ時を過ごしているうちに、彼女には生き残るための素質があることを見出した。


それが何かははっきりしないが、リベラを続ける上で彼女が必要だと考えたわけだ。


実際トンプソン一人では出来ることも限られているし、圧倒的多数に対して太刀打ちできる訳でもない。


今まで仲間の必要性を感じたことはなかったが、どうにもトンプソンの勘がヴィクトリアの重要性を推している。


そういうわけで、トンプソンは貧民街脱出までを彼女の護衛と決めた。


しかし守ってもらうだけの護衛対象はいらない。


一緒にいる限りは役に立ってもらわなければならない。


彼女には特にそういう意図でスキルを貸し与えたという体にしている。


「えっと、後方左奥のアパート……その10階で動きが見えます」


どうやらヴィクトリアが何かの動きを感じ取ったようだ。


『Future visi未来視on』も万能ではない。


スキルもアビリティも、鍛錬によって威力を増す。


今の彼女では見ることができても数秒であろう。


それに、完全に停止した状態でなければ効果を発揮しない代物だ。


実戦では到底使えないからこそ、ドクターは失敗作と言ったのだろう。


だが、それを用いてサポートする人間がいたらどうだろう。


失敗作だと思われていたそれも、使いようによっては絶大な威力を発揮する。


とりあえず、収穫はあったようだ。


「少しここで待機しているのだ」


トンプソンはそう言ってグッと身を縮め、指定の場所に向けて駆け出した。


常人ではあり得ない動きで地を蹴り壁を蹴り、彼女の見た未来に追いつく。


トンプソンの視線が、今にも動き出そうとしていた人間を射抜いた。


これには相手も驚く。


しかし、その表情に変化は見えない。


驚いた、という感情が伝わってきただけだ。


トンプソンはそのまま窓から部屋に押し入り、人間の首を絞めながら床に押し倒す。


マウントポジションのため、その人間は足をバタつかせることしかできない。


「君は一体何者かね?」


首を絞めたままトンプソンは問う。


「……」


何も言わないか。


「そうか、では死ぬが良い」


トンプソンは問答無用で両手に力を込めた。


バギィッ!


人間から出るはずのない音の後、それは動きを止めた。


トンプソンの手の中には、肌色をした破片の数々。


「人形か。ここ数日の視線の元凶はこれだな。人間のそれではないと思っていたが、これではやはりマイアットの存在は確実……」


トンプソンは首を失った人形を粉々に粉砕する。


収穫はあったため、ひとまずヴィクトリアの元へ戻ることとした。


「トンプソン様、どうでしたか?」


一瞬の留守ではあったが、どうやら彼女の身に何もなかったようだ。


「ヴィクトリア殿の視た通りだ。人形が怪しい動きをしていたよ」


「人形、ですか……?」


怪訝な顔をするヴィクトリア。


「疑問に思われるのも無理はないな。人間を模した人形が、各所でコソコソと動き回っているようだ」


「そのようなものが……。それは何かしらのアビリティやスキルによるものでしょうか?」


「そうだ。傍目には人間と見紛うほど精巧に作られた人形。あれほど高度な人形作成技術を持った人間は、そう居ない」


「心当たりがおありなのですね」


「ああ、マイアットの仕業で間違いない。彼女の名前を聞いたあたりからある程度あたりは付けていたんだが、確証はなかった。だから、彼らの目が届かぬ場所にまで移動すれば何かしら動きを見せると考えたのだが、どうやら当たりだったようだな。ようやく彼らの尻尾を掴むことができた」


「フェイヴァを率いているマイアットという女性ですね。つまり、フェイヴァはまだ諦めていないということですか」


「諦めるもなにも、むしろこれが狙いだったという可能性もある。イノセンシオの死亡で組織が瓦解したと見せかけて、裏側で画策していたのかも知れぬ。多くの者は、今やフェイヴァのことなど考慮しておらぬしな」


「確かに、誰も彼も如何にマリスを打倒するかという面持ちでしたしね。これは先日トンプソン様が確認したフェイヴァの動きと関係あるものですかね?」


「彼らが姿を消す前のあれだな。あれがやむにやまれぬ行動なのか計画の上かは不明だが、現に彼らは行動を開始している。我々はその一端に触れたというわけだ」


「では、人形に気づいたということで何かしらの動きがあるかも知れませんね」


「我々以外に気がついている者がいないとも限らないが、気づいてしまった以上は彼らの企みは阻止せねばならぬからな。相手もそれは理解しているだろう。さて、どういった行動に出てくるのやら」


「何か対策は講じるべきですか?」


「対策らしい対策など無さそうではあるな。今までの視線の原因が人形だったとなると、その全てを探し出すなど困難な話だ。そういった対応をすることすら相手の想定内だったとすれば……」


「キリがないですね……」


「相手には周到な準備があると考えて我々も行動せねばなるまい。さて、この場合最も困るのはどういったことが想定されますかな?」


「最も困ること、ですか。うーん……隠れ潜んでいることを考えると、漁夫の利を得られることですかね?」


着々と準備を行なっているのは、絶好の機会を窺っているからだとヴィクトリアは考える。


「恐らくそれが狙いではあろうな。このままフェイヴァが出てこないままマリスとその他が数を減らし続けていけば、数を温存しているであろう彼らに有利な状況が確立されてしまうことは明白。どれだけの人形が潜んでいるかわからぬが、フェイヴァがほぼ無傷で残っていると想定した場合、マリスとその他を足しても太刀打ちできない状況が生まれてしまう」


「それを伝えること……は困難でしょうね。誰が聞き入れてくれるかも定かではないですしね。すでに手遅れな状況が出来上がっていることも考えねばなりませんね」


「そうであるな。我々のような少数陣営が傍観するのと、フェイヴァのような大陣営が傍観するのでは大きく意味が異なってくる。我々は状況を完成されたら負け確定、大陣営は勝ちが確定なのだからな。だから我々がすべきなのは、我々に有利な状況を作り出すことだ」


「それは初めにトンプソン様が仰っていたことですね。全ての陣営をバランスよく削り、全てを少数という条件で揃えること」


「今まではマリスと一般陣営を対象としてきたが、ここからはフェイヴァが標的だ。フェイヴァの最も嫌がることを考えて行動せねばなるまいな。ところでこの状況、どうにもおかしいとは思わないかね?」


「おかしいことばかりですが……?」


「よく考えてもみたまえ。一つの組織が圧倒的な数を残して勝ち残った場合──例えばフェイヴァが漁夫の利で勝ちを得た場合、勝者はどのように決めるのかね?」


「それは、そこから5名を選出するのではないですか?」


「生き残った5名、とアルメニア協会が名言しているのだぞ?」


「そういえば、おかしいですね……。となると、最終的に組織内で殺し合いが勃発しそうですね」


「そうすればリベラの参加者はもっと少なくあるべきではないか?組織内であれば尚のこと、ある程度周囲の戦闘技術なり能力なりを知っているはずだ。それが分かった上で参加するにしても、どの陣営も参加者が多いように思える。下手すれば捨て駒として参加している者もいるのかも知れぬが、それにしては数が多すぎる」


「参加者はみな、命を捨てる思いで参加しているのではないでしょうか?」


「マリスの兵を見るに、ごくごく当たり前のように狩りを行ったり生活をしていたな。勝者の5名に入った場合も入らなかった場合も特に考えてないように私は思えたが、どうなのだろうな」


「ここ数日のヴァンデットの動きをみれば勝利を確信していてもおかしくはないでしょうが……。ただそれは組織としての勝利であって、個人としての勝利ではないですよね。例え勝利したとしても構成員全員が文字通りの勝者となれないわけですから、よくよく考えれば疑問ですね」


「何かしらの洗脳教育が施されている可能性はありそうか。特にマリスではそういうことを行なっていても不思議ではないな。ではフェイヴァは……?」


「フェイヴァは宗教的意味合いが強いという話でしたね。全員が強心的な信徒と考えれば納得はできそうですが……」


「ふむ、憶測だけで考えるのは限界があるな。あらゆる可能性が想定できるからこそ、全てを考慮していては埒があかない。ある程度あたりをつけて行動せねばなるまい」


「どうなされるおつもりですか?」


「目下、一番の障害となりうるのはヴァンデット個人と隠れひそむフェイヴァ。

ヴァンデットの行動範囲はマリス兵を見ていれば予測も立つし、たとえ戦闘になったとしても彼個人であれば策はある。情報の少ないフェイヴァに関しては、少ないからこそ情報を集める意味でも先に手を出しておくべきだ。我々の活動で動きを見せればマリスなり一般陣営にぶつければ良いし、いつまでも隠れられるのは不利でしかない」


「私たちがこういった行動に出ることもフェイヴァの想定の内だった場合、まんまと死地に飛び込むことにもなりかねませんが、対策はあるのですか?」


「未知に対する策などは到底持ち合わせてはおらぬ。ただ、隠れひそむだけが取り柄の今のフェイヴァになど遅れはとらんよ」


「それは心強いですね」


「これからヴィクトリア殿には一層働いてもらわねばならぬが、リベラを勝ち残るためだからな。しっかり付いてきてもらうぞ」


「ええ、何なりとお申し付けください」


リベラの最終局面に向けて、二人は動き出した。


そこからまた数日後──。


リベラ開始からすでに2週間ほどが経過している。


しかし昼夜があるわけでもない貧民街で時間感覚を維持するのは困難だ。


リベラ開始時点での戦力は、一般陣営が18000人、マリスが1000人、フェイヴァが4000人程度だった。


それが現在は、一般陣営は7000人、マリスが600人程で、そして参加者にはあまり知られてはいないがフェイヴァはほぼ健在だ。


比率でいえば一般陣営が最も削られているという状況だ。


そんな中、


「よぉ、最近見なかったが、元気か?しっかりと俺様のために働いているのか?」


ヴァンデットは見晴らしの良くなった空間でグレッグたち3人を見つけ、話しかけていた。


「ええ、マリスの障害となる人間の排除は続けてまさぁ」


「それにしてはルドも捕まえられず、下手こいて傷まで負わされたらしいじゃねぇか」


煽るように宣うヴァンデットに対し、苦い顔をするグレッグとミラ。


アイゼンの顔深々と傷が刻まれているのが見える。


ヴァンデットは内心、目の前の3人を嘲笑う。


カイネスから届いた情報では、ほぼほぼ一人の人間に痛手を負わされたらしい。


「聞いた話じゃ、いいように遊ばれたそうじゃねぇかよ。それにフェイヴァからも声が掛かってるってな。本当にテメェらマリス側か?」


ヴァンデットは3人に対してプレッシャーをかける。


返答如何では即座に戦闘開始だ。


今のところ彼らがマリスの利になる行動は取っていない。


口先ではマリス側と言いつつ、裏切る可能性は大いにある。


状況が傾けば、こういう手合いはコロッと立場を変えるものだ。


リスクが勝つなら今のうちに消してしまうか?


ヴァンデットは返答を待つ。


「確かにイノセンシオから声を掛けられはしましたがね。ですが、直後に彼も死亡していますし、それだけでさぁ」


グレッグも無難な返答をする。


リベラ開始以降、常に監視されているのは分かっていた。


どうやら、自分たちの行動は全て筒抜けらしい。


動きやすくするためにも、まずは監視から欺く方法を模索しなければならない。


グレッグはそんなことを頭の片隅で考えていた。


「声を掛けられただけ、ねぇ。そもそもテメェらが仕事してりゃ、俺様の元まで奴が来ることもなかったんじゃねぇのか?」


「彼と戦うことはあまりにもリスキーでしたので。それに彼程度に負けるあなたでもないでしょう?」


「そりゃあそうだが。だが、テメェらの働きが少なすぎるもんだからよ。敵でもねぇが、味方でもねぇなら生かしておく理由もねぇんだ。わかりやすい手土産でも持ってこねぇんなら、今ここで死んでおくか?」


さらに緊張感が走る。


「やるというのであれば、あっしらも抵抗さえてもらいまさぁ。だがフェイヴァが残っている中で手駒を失うのも惜しいでしょう。動きを指示してもらえれば、それに従うってもんで」


「ルドを捕まえることすらままならねぇテメェらに、これ以上何ができるよ?」


「それは……」


グレッグが言い淀んだ時、


『アルメニア協会カラノ示達デアル。アルメニア協会カラノ示達デアル』


一度は聞いた機械的な音声が貧民街全土に響き渡った。


「チッ、また好き勝手一方的に通達してきやがる……!」


ヴァンデットは不満を上空へ向ける。


『リベラ参加者半数未満ニ伴イ、儀ノ指定範囲縮小ヲ布達スルモノデアル。繰リ返ス、儀ノ指定範囲縮小ヲ布達スルモノデアル』


「このまま虱潰しに殺しまわるのも埒があかねぇしな。こちらとしてはありがたい話だ。これでテメェらも行動しやすくなるよな?」


不満を顔面に抱えたまま、ヴァンデットはグレッグたちに向き直る。


「それは、そうですな」


「ルドがリベラに参加してまでも動き回ってるってことは、何かしら思惑があるはずだ。そして抱えてる情報も有益なもんだろうよ。だからこれまで通り、テメェらはルドの捕獲に専念しろ。捕獲が確約できるなら、ここでの戦闘は回避してやる」


「あっしらはそれで構いません」


グレッグの背後のアイゼンも無言で同意を示している。


「ただし、次はねぇ。テメェらがしっかり仕事して、俺様の邪魔もせず、そしてマリスの勝利が確定したら3枠は確保してやる。あまり俺様を怒らせるんじゃねぇぞ?」


「それは重々承知しているもんで。ではあっしらはここで失礼しやすよ」


「ああ、くれぐれも今言ったことを忘れるなよ?」


3人はヴァンデットの元を後にする。


彼が見えなくなったあたりで、ミラが口を開いた。


「ねぇ、あいつの好き放題に言わせてていいのぉ?さすがにキレそうなんだけどぉ」


「言いたい者のは言わせておくがよい。不利な状況が続いている間は、あの災害がこちらに向かないようにするだけのことだ。最後にはキッチリと殺すから今のところは我慢しておけ。それに、奴の弱点もそろそろ分かってきた頃合いだ」


「あいつの絶望した顔さえ見せてくれれば満足だよぉ。あとはデイビスも殺しておきたいかなぁ」


ミラが何気なく言った言葉に、アイゼンは先日のことを思い出して傷口に手を触れていた。


あれは完全に驕りからくるミスだった。


傷はほとんど癒えてはいるものの、まだ視力に障害が残っている。


たった一人に与えられたにしては、あまりにも大きな痛手だ。


ただし、次はない。


デイビスもヴァンデットも、自分たち3人以外は全て殺し尽くす。


それと同時に、人探しに長けた人物を探すことも忘れてはならない。


本来の目的はそれなのだから。


リベラなどは所詮偶発的で取るに足らないものなのだから、そんなもので躓いていてはならない。


アイゼンは気を引き締めつつ、足を進める。


その後アルメニア協会から言い渡された指定範囲は、今までの半分。


面積でいえば4分の1になるということだ。


戦闘のさらなる激化が予測される。

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