第3話<α>
「さあ!今日はこのDJにフロアを熱くさせてもらおう!みんな準備はいいかー!」
「フー――!」
「イエーーイ!」――――――――――
――――――――――「すいません、ダイキリ一つ」
「あれ、君一人?大学生?こんな時間にクラブなんて、イカしてるね!」
「…ごめんなさい。ナンパはお断りです。」
「まあまあそう堅いことは言わずに!名前なんて言うの?」
「………エリカ」
「へー!エリカちゃんか!見た目大学生っぽいけど。いくつ?」
「18。大学は行ってない」
「そっかー!まあ大学なんてつまんないしね。俺も中退したし。エリカちゃん可愛いからキャバとかでナンバーワンとれるっしょ!」
「…実際に今、キャバやってるよ。」
「あ、マジで!やっぱ上玉だもんね!ていうかエリカちゃんめっちゃ話してくれるじゃん!意外とやさしい?」
「別に。一人で飲むよりは良いと思っただけ。」
「つれないねー。未成年で一人クラブに来てバーカンで飲むなんて、なんか嫌なことでもあった?」
「…別に」
「良いじゃん!今日くらいはさ、話しちゃおうよ!無礼講でいこ!」
「話したくない!」
「…おっと。よほど嫌なことみたいだね。深掘りしちゃってごめんね。」
「…いいよ。あなたは悪くない。」
「ふふっ。まあ、人には色々あるしね。話したくないことはいっぱいあるから、それを話すかどうかは君の自由だけど。でも今の僕は、君を苦しみから解放させてあげることができるよ。」
「えっ?」
「これ。ちょっとやってみない?」
「それって?」
「嫌なことなんか、全部忘れて楽しくなれる魔法だよ。」
「いや、危ない薬でしょ。そういうのは…」
「違うって!全然危なくないよ!ほんとに良いやつだから!」
「いや、いらないって…!」
「でも君はいま苦しいんだろう?見てればわかるよ。18でこんな所に来るなんて、大体予想はつく。おそらく家族関係の問題か、社会に対する不満。でも後者ならもう少し、自分の芯を持ってる奴が多い。自分から社会からドロップアウトした奴は覚悟を持ってるからね。でも君からはそれを感じない。周りにも、自分にもなにも期待をしていない。ただ流されるままに落ちていく。そういう奴は家族関係で問題を抱えた奴が多いんだよ。僕の経験上ね。そんな野心のかけらもない君がこれから幸せな人生を送るなんてはっきり言って無理だよ。」
「そ、そんなことない!今働いてるキャバでだってあたし指名多いし…!」
「それでナンバーワンになれるって?だったら、僕が君に話しかけたとき、自分からキャバ嬢を名乗って、自分を売って太客にしようっていう発想には至らなかったわけ?僕が質問してからキャバやってるっていったよね。そんな受け身の姿勢で、ナンバーワンになれると本気で思ってんの?」
「そ、それは…。」
「………だから。もう楽になろう?君は『仕方の無い』人間なんだよ。生まれた家が悪かった。これまでずっと苦しかったんだろう?希望がないとわかった今なお、人生を頑張る気力が君にはあるかい?」
「………。」
「もう一度言うよ?君は頑張っても報われない人間、いや違うな、頑張れない人間なんだ。そんな君が長い目で見た成功を掴むことと、ひとときの楽しさを優先すること。どっちが充実度の高い人生を歩めると思う?」
「…………。」
「……あ、あの。」
「ん?どうした?」
「…そ、それ…は…どうやったら、手に入りますか…?」
「ふ、ふふっ。あはは!そうだよエリカちゃん!君はこれまでの人生の中で最も賢い決断をしたよ!」
「そうだな。初回はただであげるよ。お試しとしてね。それで気に入ったら、この番号にかけてくれれば、僕が仕入れて君に渡すよ。もちろん気に入らなかったとしても、解約料とかはないから心配しないで。この番号は捨てちゃって大丈夫だよ。」
「わかりました…。」
「じゃあ、これを君にあげる。使い方は一緒に入ってる説明書見ながら使ってね。僕はこの後予定あるから。またエリカちゃんと会えることを楽しみにしているよ。」
スタスタ…
「はい。ありがとうございました…。」
ギュッ…
「……こんな、魔法に頼るなんて私…。バカだ……。」
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