ミスリルゴーレム
スチールゴーレムが復活してしまったので、即効【魔法矢・全弾発射】で倒す。
そして、減ったMPを回復するためにMPポーションを飲む……のだが。
「うぅ……MPポーションを飲む量が増えたから腹が重い……」
「あはは……あ、MPポーションもう一本いる?」
「いいや大丈夫だ。わりとマジで」
これ以上飲んだらまたその間にスチールゴーレムが出てきて。倒して。MPポーションを飲むっていう無限ループにハマりそうなんだよ……。
「……ふぅ……。よしオッケー。もう大丈夫だ。またスチールゴーレムが出てくる前にさっさと行っちゃおう」
じゃないと俺の胃袋が破裂する。
「よーし! そんじゃシルフィ、行くぞ」
「りょーかい!」
俺はシルフィが内ポケットに入ってきたのを確認してから、シルフィに教えてもらった壁に手を当てる。
俺の予想が正しかったらきっと……。
「……ッ! そらきた!」
触れた感触は硬い壁の感触ではなく、シルフィの時と同じように吸い取られる感じ……!
そして、次の瞬間。俺の手が触れている一層吸い込む力が強くなった壁に体を徐々に吸い込まれる。
「シルフィ! なにがあっても良いように準備しといてくれ!」
「ほいさ!」
俺が吸い込まれながらも叫ぶと、シルフィはいつもみたいに元気な返事を返してきた。
それを確認した瞬間、俺は抵抗をやめて逆に一歩踏み出して、自分から壁の中に体を潜り込ませていった。
***
「……ふぅ。まあ、こうなるよなぁ」
「おぉー! なんだか凄いよカエデ!」
吸い込まれるような感覚が終わった数秒後。
俺の視界に入ってきたのは、いかにもな空間。
辺り一面は、巨躯のダンジョンの壁とは材質の違う石壁で覆われており、床にはまるで白い絨毯のように大量のタイルが敷き詰められている。
おそらく大理石か何かなのかな。
そんなとてもダンジョンとは思えないような空間。
その中央には、胸にシルフィの時のような光り輝く水晶を嵌め、水色の体に四本の腕を持つゴーレムが部屋の奥に立っていた。
あのゴーレム自体の大きさは普通のゴーレムとは変わり無さそうな感じだな……。
ただ……強さまでゴーレムと一緒というわけではなさそうだ。
それに多分あの結晶の中にシルフィと同じように精霊がいるよな?
見た感じシルフィの捕まっていた結晶と同じものっぽいし。
そんな風に観察していると、さっきまで動いていなかったゴーレムは目元を赤く光らせてて、こちらに向かってゆっくりと動き始めた。
「【鑑定】! 【弱点補足】!」
先手必勝。すぐに二つのスキルを発動させて目の前にいるゴーレムの情報を探る。
名前は……ミスリルゴーレム!? ミスリルってあのミスリルか!?
あの硬度がめちゃくちゃ高くて魔法系のスキルが通りにくいっていうあの!?
ミスリルという金属は、ダンジョンが現れてからダンジョン内だけでたまに採掘できるいわゆる魔法金属というものだ。
これまでのゴーレム系のモンスターのなとを考えたら、あの体全部ミスリルだよなぁ……。
あれ全身でいくらぐらいするんだろう……。
剣一本分のミスリルでも億に近い値段するらしいし。
そんなミスリルゴーレムのHPは……300000。
………………バカじゃねえの!?
なにそのばか体力!?
んで弱点は膝に腕なんかの間接部分に、胸の辺りで重なってる結晶とおそらく核。
……これは核狙いでいくのはまずいか?
精霊が生物判定になってるかわからないから、【魔法矢】がすり抜けるかわからないし。
……そう考えるとシルフィを助けた時に【魔法矢】を使ったのって……。いや、やめとこう。
「シルフィ、仲間の精霊はあの結晶にいそうか!? おっと……!」
【予測】スキルで見えたミスリルゴーレムの四本の腕から繰り出される拳による連続攻撃を避けながら、俺はシルフィに確認のために質問する。
てかゴーレムの癖に早いな!?
今も避けられてはいるけど、【予測】スキルと【回避】スキルがなかったらもうやられててもおかしくないぞ!?
「いる! 弱いけど仲間の気配を感じるよ!」
「オッケー……【魔法矢】! 【神風】!」
シルフィから精霊がいるっていう答えを聞いてから、早速行動を開始する。
今回、弱点の核と精霊が捕まってる結晶が重なってる関係上、まずは結晶を破壊しなきゃいけない。
そうなると、遠距離攻撃は【弱点補足】を使った関係上、精霊も巻き込む可能性があるから却下!
シルフィの魔法も同じ理由で却下!
だから、シルフィの時と同じように最短、最速で直接あの結晶に【魔法矢】を叩き込む!
四本の腕の拳、振り払い、凪払い、叩きつけ。その全てを避けきって懐に潜り込む。
もらっ………………ッ!?
「うおっ!」
【予測】スキルに強い反応があった瞬間、俺は攻撃をやめてなりふり構わず、後ろに全力でバックジャンプする。
それと同時に、俺がさっきまで立っていた場所にミスリルゴーレムの体から槍のようなものが生えてきていた。
あっぶない……あのまま突っ込めば体のあちこちに穴が開くとこだった……!
って……!
「カエデ! 右から来てる!」
「次は横かよ!?」
槍をなんとか避けたら右から拳が俺に向かって振られ、襲いかかる。
回避……いや、間に合わない……!!!
「【金剛身】!」
バックジャンプして浮いたまま、俺は【金剛身】を発動。
バックステップしたせいでまた襲いかかってくる拳を、わざと地面から足を離して左腕を盾にするようにして受ける。
そして、抵抗することなく、拳がやってくる方向とは逆に跳んで勢いを受け流す。
「ぐぁぁぁぁああああ!!!」
「きゃぁぁあああ!!!」
それでも、その拳を受けた勢いを完全に受け止めることは出来ずに、体が弾丸のようにそのまま飛ばされて壁に激突して止まった。
「いってぇぇええええええ!」
【金剛身】でダメージはだいぶ軽減されたが、それでもその拳を受けた体の衝撃。そして壁に激突した痛みで肺の中の空気が全部出される。
そして何よりあのくそ硬い拳! 痛すぎる!
「げほげほっ……。いってぇ……」
「だ、大丈夫なのカエデ!?」
シルフィが内ポケットから飛び出してきて、俺に声をかけてくれる。
良かった。うまく庇えてたか。
にしても……いって~……。久しぶりにまともに攻撃をくらったな……。
ステータスを開いてHPを確認するけど、残りがだいたい20000ぐらいまで減ってる。
【金剛身】なかったら死んでたかも……。いや、死んでたな。
「……ああ。大丈夫だ。シルフィも無事だな?」
「う、うん! カエデが庇ってくれて守ってくれたから……」
「そうか。それなら良かった」
にしてもまずいな。
あんな一撃をまともにくらったってのに、まだ生きてるんだから俺もしっかりと成長してると実感出来る。
いや、こんなところで成長を確認したくないんだけどさ。
けど……これはどうするか。
ポーションを【アイテムボックス】から取り出して、飲みながら思考を巡らせる。
近づいたら四本の腕から繰り出される連続攻撃に、体から生える槍。
離れたら攻撃の手段がなくはないけど、胸にいる精霊のこともあってないに等しい。
「ほんと……どうしたものか……」
とは言ってもどうにか捕まってる精霊を助けるしかないな。
なんとか精霊を助けられたら弱点も狙えるし、【魔法矢】を使った遠距離攻撃もしやすい。
問題はどう近づくかだけど……。
本当にあれどうやって近づくかなするか……。
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