スチールゴーレム
翌日。
ポーションの類いを補充してから巨躯のダンジョンにやってきた俺とシルフィは、少しだけアイアンゴーレムを倒してレベルを上げてから最下層のボス部屋の前までやってきた。
「さてと、とりあえずボス部屋前まで到着したわけだけど……。シルフィ、その状態で大丈夫か?」
俺はそう言いながら腹をポッコリした状態で内ポケットに入り込んでいるシルフィに声をかける。
「う、うん。まだお腹にポーションは残ってるけどいざとなったらすぐに動けるぐらいにはなってるよ!」
まじか……。
動けるようになるまでどれぐらいかかるか聞こうと思ってたけどなんも問題はなしと。
それにしてもシルフィさん、あなたボス部屋前へ来るまでに飲んでるMPポーションは四本目に入ってましたよね?
四本ってなると俺でも結構腹にたまるんだけど……。
……まあ、良いか。
シルフィも昨日みたいに動けない状態にはならないって言ってるし、最悪俺がしっかりサポートすれば。
「よーし。それじゃあシルフィはあまり無理しないようにしてくれよ。まあ、多分出番はないだろうけど」
なんせボス部屋に入る。【弱点補足】、出来れば【鑑定】を使う。一撃与える。部屋に出て倒す。
中ボスと同じようにこの手順で倒すだけ。
なにか予想外の事でも起きない限りは、シルフィの出番はほとんどないだろ。
そして、そんな俺が今から挑むボスはスチールゴーレム。
行動パターンはこれまでのゴーレムとは変わらない。
変わったところと言えば、アイアンゴーレムに比べ固さとて再生力がさらに高いこと。あとは体が鋼に変わったところだけだ。
レベルも結構上がったし、ボス部屋から俊敏のステータスが足りなくて逃げられないなんてこともないだろう。
「りょーかい!」
「よし。そんじゃ、行くかね」
そう言ってから俺は開ききってるボス部屋の扉を抜けて部屋の中へと入る。
ボス部屋の中に入ると、もう聞き慣れた金属の扉が閉まっていく音を聞き、部屋の中は静寂に包まれる。
さあ、行くぞ。
俺はそう意気込んで歩きだす。
巨躯のダンジョンのボス部屋はただただ広いその一言に尽きる。
情報では知っていたけど本当に広い。
中ボス部屋と比べても広さはだいたい2倍ぐらいあるんだったかな?
その広さもあってか、スチールゴーレムが動き出すまでに結構部屋に入らなきゃいけないし……。
「お」
少し部屋の中央に向かって歩くと、ようやくと言うべきか。今回のボスであるスチールゴーレムが動き出した。
立ち上がった状態のスチールゴーレムを見るのだが……うん。デカイな。
というかデカすぎる。
一応情報としては、アイアンゴーレムの大きさが20メートルなのに対してスチールゴーレムは40メートル。
ここまでデカくなるともう大きさとかどうでも良いな。
……デカければ良いってもんじゃないけどな!
ほら見てみろシルフィを! さっきからスチールゴーレムがデカすぎて口をあんぐり開けて一言も言葉を発しないじゃないか。
「……まあ、良いや。そんじゃ早速、【鑑定】【弱点補足】」
先手必勝。今までと同じように【鑑定】と【弱点補足】を使ってスチームゴーレムのHPと弱点を丸裸にする。
「【魔法矢】……シッ!」
それが終わると同時に俺はすぐさま【魔法矢】で透明な矢を作り出して、龍樹の弓を使ってスチールゴーレムに射ち出す。
射ち出した透明な矢は、こちらに向かってきているスチールゴーレムの胸に直撃してその体を少し削る。
……よし。やることはやったし……。
「それじゃあボス部屋から出るぞ~」
「ハハハハハ! にっげろ~!」
俺はそう言いながら後ろの扉へと走って行き、シルフィは俺の内ポケットで笑い声を上げる。
レベルアップによって上がった俺の俊敏のステータスなら、ボス部屋から出るのは簡単だ。
スチールゴーレム? あいつなら俺とめちゃくちゃ離れたところでようやく歩きだしたよ。
その間に俺は近づいたことで開いた扉を通り抜けて、ボス部屋の外に出る。
ボス部屋の外に出ると、いつもと同じように扉はボスの回復を待つために閉まり、ボス部屋に入ることは不可能になった。
「ふぅ……。これでとりあえず一安心だな」
あとは、いつもみたいに部屋の外から一方的に【魔法矢】を射って終わり。
てなわけでえ~っと……スチールゴーレムに与えたダメージはっと……。
元のスチールゴーレムのHPが125000で、与えたダメージが630……。
今も回復していってるけど、スチールゴーレムを倒すには【魔法矢】がだいたい200発必要になるのか。
じゃあスチールゴーレムが完全に回復する前に……
「【魔法矢・全弾発射】……シッ!」
3000MPを使って【魔法矢・全弾発射】を使い、ボス部屋の巨大な金属製の扉に出来た透明な矢を射ち出す。
これで計算上は倒せる……はず!
ということでシルフィと一緒にしばらくボス部屋の前で待ってみる。
『レベルが40上がりました』
「……お?」
「あ、ちゃんと倒せたみたいだね」
それから少し時間が経ち、レベルアップのアナウンスが聞こえてきた。
それと同時にボス部屋の鋼鉄で出来た重厚な扉は、ギギギッと音を立ててゆっくりと開いていく。
扉が開けば中からは胸の中心がポッカリ穴が開いて、動かなくなったスチールゴーレムがその場にいた。
「よしよしよし。ちゃんと倒せてるな……それじゃあシルフィ先生お願いします!」
「はーい。それじゃあいくよー! そーれ!」
俺は、動かなくなっているスチールゴーレムを【アイテムボックス】に収納しながら、シルフィに部屋の中を探索しといてもらう。
はぁ……ここまで巨躯のダンジョンを
シルフィがいた場所だってボス部屋とかじゃなかったしな~。
これで何もなかったら次はどこのダンジョンを探せば──
「あ! カエデカエデ! あった! あったよ! 隠されてて分かりにくいけど変な空間!」
「なぬっ!?」
──あったのか!? シルフィにここまで探してもらってた謎の空間が!?
俺はすぐにシルフィがいる場所、ボス部屋の扉とは反対側の壁まで走っていく。
「えっと……ここか?」
シルフィの元にたどり着くと、彼女は壁指差していた。
特に他の壁とは色とかも変わりなさそうだけど……。
「そうそう。ここだよカエデ! 他の壁はちゃんと風が当たってる感じがあるのに、この辺の壁だけ風が当たってない変な感じがするよ」
「なるほどな……」
【アイテムボックス】からダンジョンについての情報を書いておいた手帳を取り出して、ボス部屋について確認する。
お、あった。
えっと……うん。やっぱりボス部屋にはこんな隠し部屋についての情報はないな。
他の探索者が意図的に隠してた可能性はあるかもだけど。
違うとしたら少し探したら分かりそうなここの情報がなかったのは、探してなかったからなのか……それとも見つけたけど報告出来なかったか……。
まあ、どちらにせよ準備は完璧にした方が良さそうだな。
「それじゃあしっかりMPも回復して準備万端にしてから行くぞ!」
「はーい」
シルフィに対してそう言ってから、MPポーションを【アイテムボックス】から取り出してがぶ飲みする。
MPポーションは一本でだいたい500ぐらい回復するから、使ったMPを考えたら……六本か……。
きっついなぁ……。
まあ、でも六本ぐらいならまだなんとかいけるはず!
ボスが復活する前にさっさと飲み干して──
「あ、スチールゴーレム」
──って思ってたら時間が経ちすぎたのか、復活したスチールゴーレムがこちらに向かって歩いてきていた。
……まあ、【魔法矢・全弾発射】で普通に倒せるから良いんだけどさ……締まらないなぁ!!!
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