ボス周回2nd

 ということでまた片っ端からゴーレムを倒して調べてを繰り返して数時間。

 俺とシルフィは、魔力の回復してきたシルフィが探索範囲を広げてくれたおかげで探索の時間がかなり短くなったこともありボス部屋の前。三十階層までやってこれた。


「……シルフィどうだ? 何かおかしな所はあったか?」


「ぜーんぜ~ん。なーんにもないただの通路だよ」


「はははは……。やっぱりそうか。……そうなのかー……」


 そっかー。ここまでシルフィと調べてなにも成果なしか……。


「となるとあとは……」


 そう呟きながら視界に映る、誰もボスに挑戦していないことを主張するかのように開いている巨大な鉄の扉を眺める。


「あそこのボス部屋、だな」


「だね~……」


 俺が扉を見ながら言うと、シルフィも扉を見ながら表情を歪めて頷く。

 はぁ……。できればボス部屋の前になにか痕跡とかを見つけたかったんだけど……。


「……仕方ない。今のレベルじゃボスに挑戦は出来ないから一回中ボス部屋の階に戻ろう」


 ここまで来るまでにゴーレムを倒して多少はレベルは上がってる。


 だけど正直、このままのレベルじゃこの巨躯のダンジョンのボスから部屋の外に出られる気がしないし。

 ……いや、出来はするだろうけど今の俺は一人で潜ってる訳じゃないから一応安全マージンは取っておきたい。


「はーい。それじゃあカエデまたよろしくね」


 シルフィがそう言うと同時に、さっきまで浮いていた俺の肩から内ポケットに飛び込んできてそこでぐでーんと体を伸ばす。


「はいはい。それじゃしっかり休んでてくれよ」


「うい~……」


 シルフィの気だるげな返事を聞いてから、俺は巨躯のダンジョンのボス部屋のある一番下の階層から中間の十五階層まで走り抜ける。

 ゴーレムはいつも通り三角飛びなんかで避けて走り抜けてはいるけど、【神風】を使ってないからシルフィが酔うことはない……はず。


「ふぅ~……。シルフィ、着いたぞ?体調は大丈夫か?」


「う~ん。さすがにもう覚悟してたしとりあえず大丈夫だよ」


 ならひとまず良かった。

 さて……と、それじゃあレベルアップのための中ボス撃破祭りを始めますか。


 ということで一回目。

 前回倒した時と同じように部屋に入って、【捕捉】してから部屋を出て【魔法矢・全弾発射】で仕留める。


『レベルが21上がりました』


 二回目。

 レベルが上がった分のBPを俊敏と精神力に振り分けて、また同じように(以下略


『レベルが21上がりました』


 三回目。

 レベルが上がった分の(以下略


『レベルが21上がりました』


 ・

 ・

 ・


 十回目。

 ヤバい。これマジで近接戦闘が鈍りそうになる。そう思えるぐらい戦闘に緊張感やらが無くなってきた。

 レベルアップした分、俊敏が上がって部屋を出るのも危うさが無くなってる。

 危険を感じることが鈍くなったらそれだけふとした瞬間の危険を察知する能力が無くなっていっちゃうからな……。

 普段はもちろん、近接戦闘が必要な時にそれは本当にまずい。

 どっかでその辺もちゃんと鍛え直さないとな。

 ……あ~……。ヤバい本当に楽。


『レベルが18上がりました』


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 ・

 ・


 二十回目。

 今回からシルフィもこのボス周回に参加した。

 というのも、今回のボス周回にあたって結構MPを使ったからMPポーションを使っていたのだがシルフィが興味を示してきたから飲ませてみたのだ。

 そしたら、なんとシルフィの魔力。俺達探索者で言うMPが回復していたのだ。

 これまでシルフィは魔力の回復に注力していて戦闘に参加していなかったけど、こんな方法で魔力が回復するって……。

 こんなことならもっと早くMPポーションを使っとくべきだったなぁ……。

 まあ、そう言うわけでシルフィもボス周回に討伐に参加したのだが……うん。やっぱり凄まじいの一言。

 今回はシルフィが戦いと言ったのでアイアンゴーレムと戦ったんだけど、シルフィを助けた時に戦ったアンデッドヘルスパイダーを一撃で倒したあの風の渦を細くしたもので倒した。

 あの時の風の渦は切り刻むと言った感じだったけど、今回のは細くなってた分貫通力が上がってたのか、アイアンゴーレムの核となってた魔石を綺麗に貫いていた。

 MPポーションの回復量が少ないからあれでMPポーション3本分の魔力を使うらしいから、シルフィのキャパの関係上乱発は出来ないらしいけど。

 はぁ……やっぱりあれだけの威力を出す攻撃手段があるのは良いなぁ……。

 MPポーション3本分のMPだとあの威力を俺が出すのは難しいし。

 まあ、そのシルフィはぽっこりとしたお腹を抱えながら口を押さえてるけど。

 うん。シルフィに戦闘を頼む時は緊急時だけにしとこう。

 俺も戦闘に参加する前にシルフィが倒しちゃったからレベル上がらなかったし。


 ・

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 二十五回目。

 MPポーションで腹がタプタプになっていたシルフィが途中でリバースというアクシデントがあったものの、その後は再びボス周回が続いてた。

 ちなみにあれ以降、ボス周回はスムーズに行えている。

 ただ、【魔法矢】自体の攻撃力が上がっていたおかげで使用MPが減ってMPに余裕はあるけどどうしても倒した後の復活のインターバルがなぁ……。

 長くないからあまり気にならないけどやっぱりこう連戦するとなるとポンポンリズムよく出したいな。

 まあ、無理なんだけど。


『レベルが13上がりました』


 三十回目。

 そろそろ帰りの時間も考えたらこのボス周回も終わりだ。

 結構レベルも上がったし、明日限界までレベルを上げてからボスに挑戦してみても良いかもな。

 とりあえず後十周行ってみよう。


『レベルが12上がりました』


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 三十五回目。

 とりあえずレベルが結構上がったし、近接戦闘の方も後の五回で訓練していこうと思う。

 一応目的としては近接戦闘の錆落としと俺が遠距離攻撃を使わなかったらどれだけ戦えるのかの確認だ。

 とりあえず、戦い方は【魔法矢】を握っての近接戦闘。疾走の短剣は……通用するとは思えないけど最後だけは使う感覚を忘れないように使ってみよう。

 もちろん、当てないように細心の注意を払ってな。


『レベルが10上がりました』


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 四十回目。

 ぎゃー!!! 疾走の短剣が折れたぁ!!!


『レベルが9上がりました』


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