探索再開
「ほーん……。あっちは大変そうだなぁ」
翌日。
昨日、新しく出来たダンジョンのニュースをシルフィとダンジョンに向かいながらスマホで見ていたら、神崎さんと篠宮さんの姿が捉えられた写真が載っていた。
他にもダンジョンに潜っているであろうメンバーの写真はあったけど……全員顔が死んでいる。
後衛っぽい人達はそこまではなかったけど、神崎さん含めた前衛っぽい装備をした人達は本当に顔が死んでた。
まあ、Gに体張ったのも前衛だし、武器が溶かされる。
ついでに前衛が倒せばGの毒や体液に濡れる。
そんな環境下じゃあ、ああなってもおかしくないよな……うん。
「まあ、これは俺にはどうしようも無いし、神崎さん達が頑張るしかないからな……」
「うわー。すっごいねこの人達。結構長く生きてるアタシでもめったに見なかった顔してるよ」
俺と一緒にスマホの記事を見て、シルフィが顔を歪めながらなんとも言えないような声で呟く。
「まあ、Gの毒に体液だろ。本当に最悪としか言いようがないな」
「うへ……。考えただけでゾッとするね……」
「うん。俺はまだ近づかないからこうはならないだろうけど、あの人達は大変だなぁ……」
「ねぇー」
ということでそんな先んじて大変な目にあっている神崎さん達が今も居るであろう方角に手を合わせて目を閉じ、念を送っておいてから、俺達はダンジョンに向かう。
「さて……と」
スマホをしまってからしばらく移動して、目的地である巨躯のダンジョンについた。
「さてと……。それじゃあ今日も張り切っていきますか」
「お~」
いつものように龍樹の弓を【アイテムボックス】から取り出してから入り口前に立っている警備員二人に挨拶してダンジョンに入る。
今回の目的地は中ボス部屋のある階層から更に下の階層。
今のレベル的にボス部屋のある階層までは行けないけど、まあそこまではシルフィと一緒に手当たり次第探していこう。
「それじゃあシルフィ、また十五階層まで一気に行くからしっかり内ポケットに入ってるんだぞ?」
「わかったー」
シルフィが頷いたのを確認してから巨躯のダンジョンを【神風】スキルを使って一気に走り抜ける。
途中でゴーレムはちょこちょこ出てきたが、全部無視して、時には躱して突っ走る。
「っし。到着~っと」
そうして走っているうちにあっという間にボス部屋の階層へ到着する。
そしてシルフィが内ポケットから……あれ? 出てこないな。
「おーい、シルフィ? もう中ボス部屋までついたから……あ」
俺が呼んでもシルフィが内ポケットから出てこなかったため、不思議に思ってシルフィの方を見るとシルフィが青白い顔をして手で口を押さえていた。
あ……これはやっちまったなぁ。
「シ、シルフィ? 大丈夫か?」
「う、うん……。少し酔っただけ~……」
「だ、大丈夫なのかよ……」
昨日はきつそうにしてはいたけど、それでもここまでじゃなかったはずなのになんで……。
「うう……。昨日まではまだ堪えられてたのに今日は一段と走るのが速くなってるし、そのせいで結構激しく揺れて……」
……原因俺だったか。
「あー……。それはすまん」
「う、うん。いいよいいよ。とりあえずは……ね」
俺の謝罪に対してシルフィは青白い顔のままで内ポケットから飛んできて、ダンジョンの壁に寄りかかってから手をぷらぷらとさせる。
「それじゃあとりあえず体調が良くなるまではここで休憩だな。ほら気持ち悪さがましになったらこの水をゆっくり飲むんだぞ」
アイテムボックスから水の入ったペットボトルを取り出し、ふたに水を入れてシルフィへと手渡す。
「んん……。んく、んく……っはぁ」
さっきよりは体調が良くなったのか水をゆっくりだけど飲んでいくシルフィを眺めつつ、俺もそのままペットボトルに入った水を飲んでいく。
「ぷはっ。あー……生き返るわぁ……」
ペットボトルを口から離すと、シルフィが水を飲みながら大きく息を吐いた。
「大丈夫そうか?」
「うん。なんとか」
シルフィが頷いたのを見て、俺も残っていた水を飲み干す。
うーむ……。やっぱり昨日のレベルアップの分俊敏を上げたせいで酔ってしまったのだろうか?
【神風】スキルも使ったから無理もないと思うけど。
「その……本当すまん。正直、ここまでになるとは思ってなかった……」
「もういいよ~。それに今回はびっくりしちゃってダメだっただけだし、次は大丈夫だと思うから」
俺の謝罪に対して、シルフィは青い顔のままいつもの笑顔を浮かべながらそう言ってくれた。
「そっか……。それじゃあもう少しシルフィは休んでてくれよ。
俺は先にアイアンゴーレムを倒してきて下の階層に行けるようにしてくるから」
まあ、俺がアイアンゴーレムを倒してくる間に多少はシルフィの体調も良くなってる……はず。
「う~ん、わかった~……」
シルフィがゆっくりと頷いたのを確認してから、俺はそのまま中ボスの部屋に入る。
さてと……。さっさと片付けますか。
「カエデさ~……。休んでてって言ったわりには休む暇もなかったんだけど?」
「いや、だって思ってたよりも柔らかくて……」
シルフィの指摘に俺は思わずモゴモゴと口ごもる。
いや、確かにアイアンゴーレムを倒しに行く時に「ここは俺に任せてお前は休んでろ」とか言ってカッコつけてたけど……ねぇ?
いざ倒しに行ったら思ったよりも早く【魔法矢・全弾発射】がアイアンゴーレムを倒しちゃって……。
もうちょっと使うMPは少なめで良かったな。うん。
「いや、まあ別にいいんだけどさぁ……アタシもだいぶマシになってきたしね」
そう言うシルフィは確かにさっきよりもだいぶ良くなっているから助かった。
マジで吐きそうとか言われたらちょっと焦ったし。
いや、そのレベルまでいってたら流石に帰るけど。
「それじゃあ先に進むけどけど大丈夫そうか?」
「もちろん! バッチリだよ!」
「そっか。それじゃあ行くぞ」
内ポケットの中で元気よく手を突き上げたシルフィと一緒に中ボス部屋を通り抜けて、下の階層へ向かう階段を降りる。
階段を下りて十五階層の景色は……まあ、このダンジョンに入ってからずっと見ているレンガの通路。
……そしておまけにゴーレム──
「……【魔法矢】」
──がいたが、【魔法矢】を射ってゴーレムの核を破壊してゴーレムを一撃で仕留める。
『レベルが2上がりました』
「もうそんなにゴーレムじゃレベルが上がらなくなってきたな~……」
こればっかりは仕方ないと言えば仕方がないけど。
まあ、どうせボスに挑む前にどこかでアイアンゴーレムを倒しまくってレベルを上げる必要があったんだからレベルに関しては気にしないでいいか。
「さてと……。それじゃあシルフィ先生お願いします」
とりあえずゴーレムは排除できたからシルフィにまたいつものように隅々まで調べてもらおう。
「はいは~い。任せてよ」
顔色が青色からいつもの色に戻っていたシルフィが俺の内ポケットから飛び出して、いつものように手から風を出し、あたりを調べだす。
「う~ん。やっぱりこの辺りも何もないかなぁ」
「そっか。ま、ここまでも何もなかったしそんなもんだよな」
まあ、こればっかりは仕方がない。
「それじゃあ……また始めるか。あのループを」
「お~…………」
わかっていたけど、これまでと同じようにこの辺りには何もなかったから、また俺がゴーレムを倒しまくって、シルフィが調べまくる作業が始まる。
よ~し……。頑張るぞ~。
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