新能力ゲッツ!

「ぐぇ~……。疲れた~」


 あれから数時間。

 しっかり隅から隅まで一階層から四階層まで全てのゴーレムを倒しながら調べ尽くして、俺とシルフィは事前に予約しておいたホテルの部屋に戻り、ベッドにダイブした。


「シルフィもお疲れ様……」


「うん~……。カエデもありがと~……」


 俺とシルフィはお互いの顔を見ながら、疲れきった声で感謝の言葉を言い合う。


 正直、ゴーレムのとの戦いよりも調べてもなにも見つからないって言うのが精神的にきつい。

 ゴーレムを倒すのはまあ、良い。それが探索者としての仕事の一つだし、レベルも上がるし。


 だけど、シルフィの魔法で多少楽になったとは言えひたすら何もない通路を歩き回って壁や床を触ったりするのが一番疲れる。


 というか単純にダンジョン自体が広すぎる!


 こんなことを言うのもなんだけど、アストラルの篠宮さん達みたいな人達はいつもこんなことをしてるのか……。

 改めてあの人達の凄さを実感してしまったな。


「ねえ、カエデ~」


「どうした?」


「今日はもうシャワー浴びたら寝ようよ~……」


 シルフィは既に限界が来たようで、うつ伏せのまま小さな手だけを伸ばして俺の頬っぺたをはたきながら言ってくる。


「そうだな。俺ももう眠いしさっさと……あ~ダメだその前にステータス」


 ------


 天宮楓

 レベル4398

 HP:44000/44000 MP:24010/24010

 攻撃力:4470(+52)

 防御力:4420(+12)

 俊 敏:16200(+11787)

 器 用:4575(+152)

 精神力:14030(+9627)

 幸 運:50

 BP:360

 SP:1550

 スキル:【魔法矢Lv.20】【弓術Lv.30】【鷹の目Lv.10】【アイテムボックスLv.20】【捕捉Lv.20】【鑑定Lv.10】【MP増加Lv.20】【MP回復速度上昇Lv.20】【短剣術Lv.20】【索敵Lv.30】【隠密Lv.20】【状態異常耐性Lv.20】【予測Lv.30】【回避Lv.30】【金剛身Lv.20】【神風Lv.20】


 ------


「やっぱりレベルはそんなに上がってないよな」


 今回のダンジョン探索で上がったレベルは72。まあ、これは調査中心でゴーレムを倒してなかったし、ボスを倒してたりしたなかったから仕方がないな。


 ……それでもあのダンジョンの適正レベルよりは低いんだからもうちょっと上がってほしくはあったけど。


「……えっと……。いつものように俊敏と精神力にBPを振ってSPは……」


 そうだな……。今回、【魔法矢】連射よりも【魔光矢】の方がMP効率は良かったけど、それも誤差の範囲内だろうから今回は攻撃の威力重視で行こう。


 だから【魔法矢】に集中させてっと……。


「……んー? カエデ何やってるのー?」


「ああ、今はSPとBPを振ってるんだよ……。これでよしっと」


 BPはそれぞれ俊敏と精神力に振り、SPは【魔法矢】へと残りを割り振る。

 その結果──


「お? 【魔法矢】のスキルレベルが30までいったか」


 ──【魔法矢】のスキルレベルは30レベルを越え、31になった。


 使用したSPは1430で、残りのSPは120。この残りのSPはいつものようにそのままにしておく。


 さて、レベルを31まで一気にレベルアップしたことで、作り出す【魔法矢】の強度、攻撃力が大幅に上昇した。

 これは今回のゴーレムみたいに何回も【魔法矢】を射つ必要があるような硬いモンスターには相当有効に使えるはずだ。


 だけどやっぱり、今回の一番の成果は【魔法矢】のスキルレベルが30まで行ったことだな。久しぶりにユニークスキルが10の倍数になったお陰で新しい能力が追加された。


 新しく追加された能力は……。


「ほうほうほう」


「なになに~? なんかいいことでもあったの~?」


「まあな。それも今の俺達からしたら結構嬉しいやつがな」


 フッフッフ……これで明日からは相当探索が楽になるぞ。


 ***


 そんなわけで、【魔法矢】の確認を終えた翌日。

 俺とシルフィはしっかり部屋で休み、疲れを癒してから再びダンジョンへと向かった。


 昨日のうちに四階層までは調べきっているため、五階層を目指してゴーレムを避けながら最速で進む。


「ふぁ~……カエデ~まだ着かないの~?」


「もう少しだから眠いだろうけど寝ないでくれよシルフィ」


「むぅ~……」


 俺は内ポケットで眠そうな目を擦っているシルフィに声をかけながら先に進む。

 そして、一時間後。


「よし、到着っと」


「やっとついた~」


 ちょくちょく眠りそうなシルフィを起こしながら、ようやく目的の五階層に到着した。


「この階層も特に変わったところはないな……」


 五階層は今までの階層と同じでなにも変わらない、だだっ広い通路が続いているだけ。


「それじゃあシルフィ、眠いところ悪いけどまた頼むよ」


「う~ん。わかった……」


 シルフィはまだ眠そうだったが、それでも内ポケットから飛び出し、風の魔法を使ってくれた。


「えっと……うん。この辺にはおかしな所はないね。だけど次の十字路を右に曲がった先に一体ゴーレムが居るみたい」


「おっけー。ありがとな」


 その結果は特に通路におかしな所はなく、進んだ先にゴーレムがいると言うことがわかった。


「んじゃ【魔法矢】の新しい能力のお試しと行きますか」


「良いそ良いぞ~。 ヒューヒュー」


 俺の言葉にシルフィはまだ若干眠そうにしながらも、俺を口笛を吹くように茶化してくる。


「はいはい。ほら、行くぞ」


「あ~。待ってよカエデ~」


 シルフィは、慌てて飛んできてそのまま定位置となっている内ポケットに収まった。


 そして、シルフィがしっかり内ポケットに入ったのを確かめてから、十字路まで進みんで、右手側の通路にいるらしいゴーレムに備えて龍樹の弓を構える。


 そのまま、ゆっくりと顔だけ通路を覗き込むようにして見ると、確かに20メートルぐらいぐらい先の所にゴーレムの姿が見えた。


 まあ、これぐらいの距離なら【捕捉】スキルが無くても外さないけど一応……。


「【弱点捕捉】」


【弱点捕捉】を使って確実に弱点を捕捉する。


 まずはこれで良しっと。

 あとはこのまま不意打ちで新能力を使って──


「それじゃあいくぞ……」


「やっちゃえやっちゃえー!!!」


 ──倒そうとしたのだが、単純に俺の隠密が甘かったのか、シルフィの応援の声が大きかったのかはわからないが、ゴーレムが俺のいる場所とは反対を向いていたのにグリンと首を回転させてこちらを見た。


 とは、言ったもののだ。

 俺の隠密が甘かったら昨日も見つかってるから……。


「……シルフィさん?」


「……うん、ごめんね」


「いやまあ、特に問題はないから良いんだけどさ」


 一応距離は取れてるから、昨日【魔法矢】のスキルレベル上げてるのもあるし近づかれる前に倒せるだろうし。

 けど……締まらないなぁ……

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