お誘い

 マッハブルを倒しはじめてから六時間後。

 マッハブルをしっかりと倒し終えた俺はそのままの足で樹林のダンジョンへと向か……わずに家に帰ってきた。


 まあ、理由は単純。


 現在時刻は午後五時。もう少しで日が沈み始める時間帯だ。

 もちろん、樹林のダンジョンに行かないのは時間的な問題もある。


 だけど、それ以上に……


「ちょっとレベルがなぁ……」


 レベルが安全マージンに全然足りていない。

 俺のレベルは現在──


 ------


 天宮楓

 レベル3088

 HP:30900/30900 MP:17460/17460

 攻撃力:2160(+52)

 防御力:2110(+12)

 俊 敏:9680(+7577)

 器 用:2265(+152)

 精神力:9505(+7417)

 幸 運:50

 BP:230

 SP:230

 スキル:【魔法矢Lv.20】【弓術Lv.20】【鷹の目Lv.10】【アイテムボックスLv.20】【捕捉Lv.20】【鑑定Lv.10】【MP増加Lv.20】【MP回復速度上昇Lv.20】【短剣術Lv.20】【索敵Lv.20】【隠密Lv.20】【状態異常耐性Lv.20】【予測Lv.20】【回避Lv.20】【金剛身Lv.20】【神風Lv.20】

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 ―――3088レベル。

 まあ、マッハブルを狩っていたから今日は46レベル上がってくれたけど、まだまだBランクダンジョンの安全マージンである5000レベルにはまだ足りない。


「雅さんは出来たらで良いって言ってたけど、依頼いらいを受けたからには出来ればクリアしたいんだよな~」


 一応、雅さんからはハードキャタピラーの糸15体分の納品の依頼はおまけのようなもので、達成出来なくても問題はないとは言われてはいる。


 だけど、雅さんにはこの防具のことでお世話になってるのもあるから出来ればクリアしたい。

 あとは単純に、なんか諦めるのは嫌だ。


「一週間もあれば5000レベルに行けるか?」


 とか考えて見たけど……無理だろ。


 その考えで行くと、今日で一日。そして、ハードキャタピラーの糸を十五体分集めるのに一日。


 合計二日はレベル上げには使えなくなるから、五日で約2000レベル上げなきゃいけない計算になる。

 うん。さすがに無理(二回目)


「せめて同じBランクモンスターの動きに目が慣れればなんとかなるんだけど……」


 俺が依頼を受けてから調べた限り、ハードキャタピラー自体はそこまで動きが速いというわけではない。


 それなら、俺がモンスターの攻撃を回避して攻撃するという戦闘スタイルと【回避】や【予測】といったようなスキルを持っているのもあるから、多少レベルが低くてもある程度は戦える。


 Bランクモンスターと言ったら、灯火のダンジョンのボスである七鬼炎しちきえんがそうだ。

 しかも、ステータスが強化されているボスモンスター。そのステータスは普通のBランクモンスターよりも高いだろう。


 だけど、七鬼炎はそこまで動かないモンスターだ。

 正直、Bランクモンスターの動きの速さに目を慣らすにはまったく向いていない。


「んー……どうするかな……うん?」


 そんな風に悩みながらリビングのソファーでゴロゴロしていると、机の上に置いていたスマホにメールが届いたことを知らせてくれる通知音が聞こえてくる。


「なんだ?」


 ソファーから起きるのもめんどうだった俺は、寝っ転がったままスマホを手に取って画面を開く。


「え~っと……神坂社長から?」


 メッセージを送ってきた人を確認したら、そこには『神坂』という名前が表示されていた。


 そういえば、スカウトされた時に連絡先は交換してたけど……なんで今? 不思議に思いながらも俺はメールを確認するために、指でタップしてメールを開く。


 ──────────

 差出人:神坂

 宛先 :天宮楓

 件名 :急に申し訳ありません


 ───

 お疲れ様です。

 突然のご連絡になりますが…………


 ──────────






 ……うん。長い!

 一通り確認したけど、とにかく長い。社会人としては、こういうちゃんとしたメールを書く必要があるんだろうけど……長すぎるわ!!


 とりあえず、メッセージというかメールを要約するとこんな感じだ。


 ・明日は暇か?

 ・暇だったらうちのBランクダンジョンの探索に見学に来ないか?

 ・もちろん、アストラルの探索者が同行するので安心して欲しい。

 ・万が一俺が戦うことになっても武器や防具の整備代、その他かかった費用は全部こっち持ち。

 ・あと、もし良かったらでいいからうちに所属するのをもう一回考えてみてね♪


 と、こんな感じだった。

 ちなみに、最後の♪は俺のイメージである。


「……あれ?これめちゃくちゃ良い条件じゃない?」


 ちょうどBランクのモンスターの動きの速さに慣れたいって思ってたところだし、もし仮に俺が戦ったとしても装備にかかる費用は全て向こう持ちだって言うし……


 よし!


「男は度胸!」


 俺はそのまま勢いに任せて『はい!ぜひ参加させてください!』と返事を送る。


 すると、すぐに『返信ありがとうございます。では、明日の朝10時に迎えに行きますので準備をして待っていてください。こちらからもゴールド探索者が参加予定なので、何かあればそいつに言って貰えれば対応しますのでよろしくお願いします』と、いう内容のメールが帰ってきた。


 こうして、明日俺のBランクダンジョンへの探索(見学)が決まったのだった。


 ……だけど、明日までにSPは良いとして、BPは割り振っておかなきゃな。あとは龍樹の弓と疾走の短剣だったりのメンテナンスもしなきゃ。

 キッツいなぁ……

 

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