弱点捕捉
──バカンッ!!!
悪魔を吹き飛ばした壁が砕け散り、そこから悪魔の姿が見えた。悪魔は黒い球体をクッションにダメージを軽減していたから、大したダメージを受けている様子は見られない。
だけど、それでもダメージは与えられてたらしく、少しふらついているように見える。
そして、そんな悪魔と目が合った。
「……まったく……やられたわね」
そう言って笑った悪魔が黒い靄を作って、デビルバットを作り出す。
そして、作り出されたデビルバットは少し俺の方に飛んできたと思ったら残りは迷教の信者達に飛んでいく。
迷教の信者達に飛んでいったデビルバットは竜の瞳の時と同じように、その鋭い牙で迷信の者達の首筋に噛みつき血を吸う。
「くっそ!またかよ!」
これまで、何度も同じことをされてHPやMPを回復されてしまってる。
だからこんなことを正直やりたくないけど……
「こうするしかないんだよなぁ……ッ!!」
龍樹の弓を使って【魔法矢】で作り出した透明な矢を作り出して、それをデビルバット達が向かった迷教の信者達に直撃させて、信者達を……殺す。
本当はこんなことはやりたくはないけど、今はそうも言ってられない。
俺だって覚悟はできた。
さすがにこんな状況になってまで、人は殺せないなんて甘いことを言うつもりはない。
確かに、俺は人を殺したことがない。
だけど、俺だって自分が生きるためにモンスターを殺してきた。
だから今は……仕方がないなんて言わない。
「俺を許すな……」
この状況、そして竜の瞳と共謀して莉奈を誘拐、その他etc……
これらのことを考えたら、俺が罪に問われることもないだろう。
だから、必ずこの悪魔は俺が倒す。
せめて俺が奪った命を意味あるものにするために。
そして、向かってきていたデビルバットと信者達に向かっていたデビルバットをまとめて吹き飛ばす。
「まったく……これぐらい回復させてくれても良いのよ?」
余裕の表情を浮かべた悪魔が俺に向かって言う。
だけど、今回は俺も簡単には引かない。
「【
すぐさま【捕捉】スキルのレベルが上がったことで増えた効果を使う。
【捕捉】スキルのスキルレベルを20にしたことで新しく使えることになったのは【弱点捕捉】。
【弱点捕捉】は読んで字のごとく、狙った相手の弱点を捕捉するスキルで、捕捉した弱点に遠距離攻撃が必中するようになるスキルだ。
使ったら弱点が赤く見えるらしく、その赤い部分が捕捉できるらしい。
そして、今悪魔を【弱点捕捉】したことで、
「さっきまでとは違う……?」
悪魔が不思議そうな顔をしているけど、これはチャンスだ。
今も赤く見える場所は、頭に首、心臓のある左よりの胸の中央などの人としての急所。
それに加えて、赤い場所以外にも赤くなっている部分がいくつかある。
頭に生えた角や背中の翼の付け根なんかの悪魔が力を解放してから出てきた部位にもいくつか赤くなっているところがある。
つまり、そこが悪魔としてのあいつの弱点なんだろう。
だから【弱点捕捉】で狙うのは人としての急所ではなく悪魔の急所である角と翼の付け根。
「さあ……ここからだ……」
ここからが本番だ。
「シッ!」
【魔法矢】で作り出した透明な矢を龍樹の弓につがえて、狙いを定めて射つ。
「ハッ!!」
そして、矢を射った後にまた時間差でもう一本の矢を射る。
「クッ!さっきと狙いが!!!?」
悪魔は透明な矢を黒い球体で破壊していく。
「まだまだぁ!!!」
今こそ限界を超える!!!
とにかく【魔法矢】で透明な矢を三本ずつ作り出して次々と射ち続けていく。
手は止めずに次々と射って射って射ちまくる。
「くっ!鬱陶しいのよ!!!」
悪魔は苛ついてきたのか、俺が射ちまくった透明な矢をすべて黒い球体から出した衝撃波。
それも、これまでのものとは比べ物にならないぐらいの衝撃波を生み出して、俺が射ち放っていた透明な矢をすべて破壊してきた。
だけど、そのお陰で……
「くっ!どこにいるの!?」
俺が隠れられるだけの土煙が上がってくれた。
狙い通り。先に透明な矢を悪魔に向けて射っておく。
そして、この土煙に紛れて悪魔の背後に移動して、透明な矢を生み出して──
「くらえ!!!」
──悪魔の背中の翼の付け根を狙って、手に持った透明な矢を突き刺す。
「あ、あ、ぁぁぁぁああああ!!!抜け!今すぐその矢を抜きなさい!!!」
その瞬間、悪魔は絶叫しだして背中にいる俺を引き剥がそうと暴れたり、殴りつけてくる。
だけど、暴れられたら力を込めて矢を更に刺していって、殴られても人の構造をしてるだけあって、背中を殴り付けてきてもそこまで強くはない。
「ぐっ……これでトドメだ」
「な、なにを言って……!」
まあ、それでも無力化するには足りないだろうから、更にもう一手用意をしておいた。
さっき動き出す前に射っておいた透明な矢。
この矢が【弱点捕捉】によって必中状態になっていて、角に向かって飛んでいく。
「な、な、なぁぁぁああああ!!!?」
悪魔はその事に気づいて、また絶叫しながら慌てて角を手で隠そうとする。
けど、その程度で守れるんならこんなに俺は苦労していない。
「じゃあな……」
そう呟きながら、フリーになった俺は、背中に突き立てた透明な矢を勢いよく捻り、俺の射った透明な矢が角に刺さるのと同時に更に深く深くねじ込むのだった。
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