戦闘開始
始まりは悪魔のフィンガースナップ。
悪魔が指を鳴らすと、またもや黒い靄が俺の周りを取り囲むようにデビルバット達が出現する。
その数は先ほどよりも多い。
恐らくさっきデビルバット達を吸収させたことで、一度に出せる数が増えたんだろう。
そして、現れたデビルバット達は竜の瞳の時と同じように、俺に襲いかかってくる。
「シッ!」
俺は向かってきたデビルバット達、悪魔から一旦距離を取るために後ろに向けて【魔法矢】で作り出した透明な矢を龍樹の弓を使って射ち放つ。
だが、デビルバット達は矢が当たる直前に軌道を変えて、矢を回避する。
だけど、数匹は巻き込めた。
やっぱり、【捕捉】しないと的が小さい相手は当てにくいな。
でも、それはわかっていたことだ。
だから──
「フッ!」
──【アイテムボックス】を利用した高速戦闘技術で、龍樹の弓をしまってデビルバットの数を減らした後ろに向かって、疾走の短剣を使って片っ端からデビルバットを斬りつけながら走る。
そして、俺が走り出すと同時にデビルバット達も俺に向かって飛びかかってくる。
「ハッ!」
俺はデビルバット達の攻撃をすれ違うように避けて、すれ違いざまにデビルバット達を斬っていく。
「フッ!」
【神風】の効果はもう切れてはいるけど、それでも俺の全速力はデビルバットから逃げるには十分だ。
「魔法矢、複数捕捉」
デビルバット達から距離を取った俺は、すぐに【複数捕捉】してから【魔法矢】で三本の矢を作り出してから、その矢を同時に射ち放った。
「ギュアァ!?」
三方向からの必中同時攻撃に、流石にデビルバットも全てを回避できずに次々と黒い靄に戻って消えていく。
「ふぅ……」
「キャー!すごいすごい!!!あんなに作り出したワタシの僕が全滅なんて!」
悪魔は俺の実力を見誤っていたのか、先ほどの冷徹な表情とは打って変わって驚きと喜びが入り混じったような表情になっている。
「あんまり調子に乗ってると足元掬われるぞ」
「あら?ワタシがあなたに負けるはずがないじゃない」
悪魔はそう言うと、また表情を冷徹なものにしてこちらを睨みつける。
さて、こうなったら本気で戦うしかないんだけど……
そうなるとどうやって悪魔を莉奈の体から引き剥がそうか。
今あの悪魔を倒すとしたら、確実に戦うのは莉奈の体だから莉奈は死んでしまうだろう。
なら、悪魔を引き剥がしてから倒すしかないけど……あいにくそんなことができる道具もスキルもない。
「う~ん……どうしようかな……」
「ふふん。何を悩んでいるのかしら?ワタシをどうにかする手段を考えてるの?」
……気づかれてる。
まあ、そりゃあばれるよな。
「まあな」
だけど、それならそれで別にいい。
隠すという行動をしなくてすむから気が楽だ。
悪魔だけではないけど、相手に何かを隠しながら戦おうとするとどうしてもどこかでボロが出る。
そういう意味では、こういう状況の方が俺は戦いやすい。
「へぇ、あるのね。なら、早く出したらいいんじゃないの?」
悪魔は余裕の笑みを浮かべながら、俺を挑発してくる。
けど……出したくても出せないんだよなぁ……
基本的に今の莉奈みたいに幽霊系のモンスターに憑かれてる時には光や聖といった魔法を使って引き剥がしたり、除霊したりするのが一般的だ
。
あとは寺のお坊さんや神社の神主さんやまともな教会の神父なんかがステータスを手に入れて、そういう除霊できるスキルを持ってる人に頼むか。
「残念ながらそんな便利なものは持ってないんでね。
だから今回は時間稼ぎに徹することにさせてもらおうか?」
まあ、こんなことを言っても普通に考えたら無駄だし、悪魔がそんな言葉を信じてくれるわけがないだろう。
「そんなわけで悪いけど少しの怪我は勘弁してくれよ莉奈!魔法矢!」
俺は悪魔を牽制するために魔法矢を射ち放つ。
そして、それと同時に悪魔から更に離れるようにバックステップする。
俺の狙い通り、悪魔は俺の魔法矢をギリギリまでひきつけてから回避行動をとり、翼を
まあ、透明なことが通用することは滅多にないことだから、これはただの牽制だけどな。
「あなたが時間を稼ごうとしていることはわかってるわ。
でも、その前にあなたを殺してしまえば関係ないでしょう!!!」
悪魔はそう叫ぶと、俺に向けて両手を向ける。
すると、悪魔の手のひらから黒い靄が出てきて、黒い球体のようなものが出来てどんどん大きくなっていく。
恐らくあれはヤバい。
俺は直感的にそう感じた。
「魔法矢!複数捕捉!」
俺はすぐに【魔法矢】を発動して、複数の矢を作り出すと、悪魔に向かって連射した。
「そんなものが当たると思って!?」
だが、悪魔は俺が放った多数の透明な矢を全て回避していく。
そして、悪魔が透明な矢を避けるけど、【捕捉】によって必中効果がついている透明な矢は、悪魔に追尾するように軌道を変えていく。
「ちょこまかとうっとしいのよ!」
悪魔はイラついたように叫びながら、黒い球体を今も悪魔を追い続けている透明な矢に向けると、黒い球体から闇のような色の魔力が吹き出し、まるで衝撃波のように俺の放った全ての透明な矢を弾き飛ばす。
「まじかよ……」
俺は自分の予想を超える悪魔の強さに思わず冷や汗を流す。
だけど、これであの黒い球がどれだけ危険なものなのかがわかった。
「この魔法に加えて、デビルバットを生み出す能力に飛行能力……こりゃあなかなか厄介だな」
俺は悪魔を見ながら、どうやって戦っていくかを必死で考える。
しかも体が莉奈のものだからあまり大怪我をさせるわけにもいかないし……
……え?これ本当にどう戦うの?
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