吸収
「それじゃあ早速いくわよ。いきなさい」
悪魔が命令を下すと、召喚されたばかりのデビルバットは勢いよく飛び立っていく。
狙いは俺……ではなく、意識を失って倒れている竜の瞳のメンバー、幹部、大城だ。
「ちっ!させるか!」
俺は【魔法矢】を使って生み出された三本の魔法の矢を龍樹の弓を使って射ち出すが、【捕捉】してなかったのもあって何匹か巻き込んだだけで避けられてしまう。
そのまま、悪魔が呼び出したデビルバットは空中を舞い、大城達に襲いかかる。
「ぐ、ぐぁぁぁぁあああ!!!」
「や、止めろ!来るな!こっちに来るんじゃねえぇえ!ぎゃあああ!!!」
「ひぃ!助けてくれ!死にたくない!誰か!誰かぁ!うわっ!うわっ!うわっ!うわっ!うわぁぁあ!」
大城達、竜の瞳。特に無力化のために俺に腕と足の腱を切られていた大城達にデビルバットは群がっていく。
竜の瞳は一人残らず俺が意識を落としていたので、最初は無抵抗でデビルバットの餌食になっていた。
しかし、痛みかなにか違和感を感じたのか何人かの男が目を覚ましたようで、そこからは地獄絵図だ。
男達は必死に自分を襲う怪物を振り払おうと暴れるが、その度にデビルバットは離れてはまた攻撃を繰り返す。
その時に、何度も体に噛みつかれている。
群がられてるデビルバットの数の関係で、まだ全員は死に至っていないものの、このままだと数分もしない内に全員が死んでしまうだろう。実際、すでに腕や足といった体の部位がミイラのように干からびてしまっている。
「さすがにあれはまずいな……」
俺はそう呟きながら、デビルバットを引き剥がすために矢を射ち出す──
「あら。行かせないわよ?」
「ッ!?」
──が、悪魔に妨害されてしまう。
どうにか隙を見つけようにも、体は莉奈だけど、全く隙が見当たらない。
「ふふっ悪いけど、あなたには大人しくしていてもらうわよ?」
「くっ……」
悪魔はそう言って、俺に向かって手をかざしてくる。
どうやら俺の動きを止めて、その間に大城達を始末するつもりらしい。
そして、その大城達は……
「あ……あぁぁぁああああ!!!」
「嫌だぁあ!!やめてくれぇ!」
「助けてくれぇ!頼むぅ!」
「ぐぁぁぁああああ!!!」
デビルバットに襲われている大城達はすでに意識を取り戻して、悲鳴をあげていた。
だけど、大城達は俺が腱を切ったり、動けないようなダメージを与えていたから反撃することができずにいる。
そんな状態で、体中に噛み付かれたりしたら……
「くそっ!」
俺はすぐにでも動き出して、大城達のところに行きたいが、悪魔がその行く手を阻んでくる。
「無駄よ。それに……もう終わったもの」
悪魔は勝ち誇った表情でそう言うと、俺の視線の先にある光景を見るよう促してきた。
その先には──
「うっ……」
──既に事切れ、ミイラのようになった大城達が転がっていた。
「ほうらいらっしゃい。ワタシの可愛い
悪魔はそう言って、また指を鳴らすと大城達に群がっていたデビルバットが再び大城達の死体から飛び立っていき、悪魔の元に集まっていく。
そして、集まったデビルバットはそのまま悪魔の頭上を旋回しながら待機している。
「さあ、ワタシの僕達。ワタシの糧に……」
悪魔はそう言うと両手を広げ、まるで何かを求めるかのように胸の前で手を合わせた。
すると、悪魔の周りにいたデビルバットが一斉に鳴き声をあげて、黒い靄に戻ってそのまま悪魔の中に吸い込まれていく。
「まさか……吸収してるのか?」
そう、悪魔はデビルバットを吸収しているのだ。
「ふふっ。ご名答よ。この子たちはね、全部ワタシの魔力で生み出したの。だから、こうやって食べれば魔力を補充できるのよ。
……それに……」
悪魔はそう言いながら、こちらを見てニヤリと笑う。
「ワタシは悪魔。この子達が集めた生きた人間から集めた血の中に含まれている生命力と魔力。
そしてなにより絶望や恐怖という感情をエネルギーにしているの。つまり、こいつらは餌であると同時に最高の燃料でもあるってことよ」
悪魔は自分の力を説明しながら、楽しそうに笑っている。
その様子に背筋が凍るような感覚を覚える。
こいつは危険だ。早く倒さないと。……どうやって?
「まあ、これでしばらくは大丈夫かしら? それじゃあ、次はあなたの番よ?」
悪魔はそう言って再び俺に手を向けてくる。
「ワタシはね、強欲なの。
欲しいと思ったものはどんなことをしても手に入れるわ。
だからね……そんなワタシの欲しいものを手に入れる邪魔をするあなたは絶対に許せないの。
今ここで消えてもらうわよ?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます