幹部達
そこからは一方的な戦いだった。
俺は【隠密】で姿を隠しながら一方的に【魔法矢】や【捕捉】スキルなどを駆使して武器を破壊してから、疾走の短剣を使って次々に竜の瞳メンバーの意識を強制的に落としていく。
【隠密】スキルその時に維持できなくなって解除してしまったけど、武器を破壊されていったせいもあってか、攻撃してくる者はほとんどいなかったのも幸いした。
ただ、リーダーの大城と幹部には俺の射ち放った透明な矢はシルバー試験の時みたいに迎撃されてしまい、傷一つ付けることはできなかったけど。
そんなこんなで……
「これで最後っと!」
竜の瞳のメンバーの武器をすべて破壊していって、残るは大城と幹部達だけとなった。
だけど、大城や幹部達は焦ったような様子はなく、ニヤニヤして余裕そうな顔をしている。
それに、迷教の奴らも呟きを止めない。
「───へ───現せ────我等───」
そして、ようやく耳を澄ませなくても迷教の信者達が呟いている言葉を聞き取ることができた。
魔力を感じないから魔法系のスキルを使おうとしているわけじゃなさそうだし……
とにかく迷教を止めることも考え……ッ!?
「……我等を前にしてその態度……舐められたものだな」
速い!?
迷教を見ていたら刀を持っていた幹部──侍が一瞬で俺の目の前まで移動してきて斬りかかってきた。
【予測】スキルで軌道をなんとなく予想できたから咄嗟に避けれたけど、あの速度はかなり速い。
驚いている俺を気にしないとばかりに、侍はさらに続けて刀を振ってくる。
それを確認した俺はすぐさま龍樹の弓から疾走の短剣に持ち替えて応戦していく。
「……ッ!……やっぱり強い……ッ!!」
なんとか短剣で受け止めることができたけど、かなりの衝撃が伝わってきた。
スピードもパワーもかなりある。
というかこれ本当にレベルは俺以下なのか?
調べたレベルのことを考えたら、多少レベルが上がってても俺のステータス。少なくともパワーはほぼ変わらないはず。
なのにこの強さ……一体どういうことだ……?
「……そんなに俺ばかりを見てて良いのか?」
「なっ!?」
そうだ、相手は侍だけじゃない。
だけど、気付いた時にはもう遅かった。
侍がバックステップで離れた瞬間、俺の周囲に八つの氷の槍が囲むように現れていた。
「くそ……魔法矢」
急いで逃げようとするけど、それよりも早く、氷の槍は襲いかかってきた。
回避が間に合わないと判断した俺は、疾走の短剣を使って氷の槍を弾き飛ばすことで時間を稼いでから、疾走の短剣を握っていない方の手に作り出した四本の透明な矢を、それぞれ違う方向に向けて投げる。
投げた四本の矢は、向かってくる四本の氷の槍を相殺するように飛んでいき、氷の槍を粉砕した。
「ふぅ……危なかった……っと」
そして、いつの間に近づいてきていたのか、ガントレットを装備した拳を振りかざしていた幹部──拳王の攻撃を避ける。
同時に片手剣を振り上げた幹部──剣豪の攻撃を、握っていた短剣で受け流して反撃をしようとするが、その前に拳王が再び拳を振るってきた。
それをわざとドロップキックのような体勢をしてから足裏で受けて吹き飛ばされる。
そして、吹き飛ばされる中、空中でクルクルと回転しながら勢いを殺して着地した。
「へえ……こいつらの連携攻撃を捌くとは中々やるじゃねえか」
大城は俺の動きを見て感心するような声を上げる。
肝心の大城は一切今の攻防に参加しなかった。というより、俺が攻撃を避けたり受け流すのをただ見ているだけだった。
そして、今も俺のことを見つめながら、俺の攻撃や防御を観察しているような感じだ。
だけど、俺もわかったことがある。
それは、幹部達はなにかしらのステータスが抜きん出て高いということだ。
侍と剣豪は攻撃力と俊敏のステータス。
拳王が攻撃力のステータス、魔術師は精神力のステータスが高そうだった。
全員、事前の情報収集ではどうやっても俺のレベルが上がり、装備で上昇したステータスに対抗するにはどうやっても足りないはずだ。
幹部達から感じる強さも該当するステータスにBPを極振りしても、絶対に足りないと思う。
けど……
「それだけだ」
どうにも体の動きと技が合っていない気がするし、やりようはいくらでもある。
それじゃあ、本当の蹂躙を始めようか。
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