発見

 地図を見てルートを覚えて、次々とダンジョンを進んでいく。


「……」


 道中では特に変わったこともなく、順調に進んでいた。


 だけど、やっぱり俺の【索敵】にはデビルバットも引っ掛かるし、狙撃手達の命を奪った時のような【索敵】スキルにデビルバットが反応しないなんてことはない。


 そして、最大限注意を払ってダンジョンを進んで、【索敵】に反応しないデビルバットは出てくることなく最下層まで来てしまった。


 途中出くわしたのはごく普通のデビルバットだけで、狙撃手達みたいなダンジョン内を見回りしている人はいなかったし……


「気味が悪いことこの上ないな」


 ここまで幹部どころか竜の瞳のメンバーが誰一人として居なかったのは気味が悪かった。

 狙撃手だけで十分だったって言われればそれまでだけど……


 まあ、デビルバットは出てくるからそこは普通だった。それだけだ。


「だけど、つまりは残りの竜の瞳のメンバーはこの最下層に残ってるってことだよな……」


 この先にいるであろう多くの竜の瞳のメンバーに加えて、幹部は狙撃手がすでに命を落としているから、残りは剣豪と拳王、魔法使いに侍の四人。


 そして、その四人を従えているリーダー。


 残りの迷教はまず戦力になるようなレベルじゃない……いや、待てよ?


 迷教の信者達が不審な行動をしていて話しかけた瞬間、かなりの速度で走り去っていった。

 それも普通の人が出せない。つまりはレベルアップしているような速さで。


 そう考えると、こうしてダンジョンを隠していたのもあるし、戦闘できるとまでは言わないけどレベルが上がってたりスキルを取ってそうだな。


「……厄介だな」


 もし仮にそれが本当だとしたら、戦える人員は今よりも増える。


 そうなれば、当然俺も警戒しなければならない。


 だけど、竜の瞳もだけど、迷教がどの程度の強さなのかまだ把握できてないから何とも言えないんだよな。


「……それでも、やるしかねぇ」


 例えどれだけ強くても俺は負ける気はない。


「よし! 行くぞ!」


 俺は覚悟を決めて、最下層に向かう階段を降っていく。

 最下層へ降りると、いつも通りのボス部屋がって……


「これはちょっと予想外だったな」


 さすがにボス部屋の中にいるなんてことは想定していなかった。


 いくらなんでもボス部屋の外には居るだろと高を括っていたんだけど、まさか中にいるとはな。


 そんなことを思いながら、【隠密】を使ってから一歩ずつ確実にボス部屋に近づいていく。

 すると、【索敵】を応用した気配感知に反応があった。


「……よかった……ここにちゃんといた」


 階段を降りたら誰もおらず、ボス部屋の扉も開いていたから最悪このダンジョンには居ないかと思ったけど、ちゃんといたみたいだ。


 ていうか中に人がいたらボスは復活しないとはいえ、よくボス部屋の中に居れるな。


 そして、扉の陰から隠れながらそっと覗き込んでみると、そこには俺が想像していた通りの姿の人達がいた。



「……あれが竜の瞳か?それにあっちは迷教の奴らか?」


 まず目に入ったのは、様々な武器。


 剣や槍、斧などの近接系の装備を持っていたり、杖や銃などの遠距離攻撃用のものを持っている人もいる。

 そして、その中心にいるのは見覚えのある男。


「あいつが竜の瞳のリーダー、大城 透か」


 やはりと言うべきか、俺が思っていた通りの人物だった。大城 透の顔は調べた通りだったから間違いはない。


 そして、次に目に付いたのは迷教と思われる者達。

 その人数は全部で二十人ほどで、全員が同じローブを着ていて、フードを被っているため顔はよく見えない。


 だけど、そのローブには迷教の信者を表すマークの刺繍が入ってるからおそらくは迷教の連中だろう。

 迷教の信者達は円を描くように並んでおり、中心には──


「……莉奈……」


 ──両手両足を鎖で縛られていて身動きが取れなくなっている莉奈がいる。


 どうやら意識を失っているようで、ぐったりとしていた。服も普段着ている私服ではなく、露出の少ない白のワンピースのような服に着替えさせられている。


「くっ……」


 思わず飛び出して助けに行きたい気持ちに襲われるが、今は我慢して状況を見極める。


 今のボス部屋の中の状況を見た感じ、迷教の信者達は竜の瞳達に守られているように見える。

 そして……


「「「「「──────────」」」」」


 ここまで近づくかつ、耳を澄ましてようやく聞こえるくらいの声量で、迷教の信者達がブツブツとなにかを呟いているのが聞こえてきた。


 なにを呟いているのかまでは分からないけど、魔法とかそういうものではないのはわかる。だけど、ろくなことじゃないだろう。


「とりあえず、莉奈を助け出すのが先決だな」


 俺は【隠密】スキルを使った状態で、【アイテムボックス】から龍樹の弓を取り出してから【魔法矢】で作った透明な矢をつがえる。


 まずはあの呟いていることをやめさせないと。


 だけど、その前にするべきは周囲にいる竜の瞳の無力化だ。


 先に莉奈を助けたいけど、莉奈を戦闘に巻き込まないようにするには竜の瞳を排除しないといけない。


 なら、今やるしかないよな。

 それに、戦闘が始まればあの迷教の呟きもそれどころではなくなって止められるはず。


「複数捕捉」


 とりあえず竜の瞳がどれだけのレベルなのかわからないから、全員倒してから行動しよう。


 というかそうでもしないと、レベルが不明のこの人数を相手にするのは無理だ。


「ふぅ……」


 一呼吸置いて、弦を引く手に力を込める。

 そして、狙いを定めて……射ち放つ。


 その瞬間、空気を切り裂く音が響き渡る。


 俺が【複数捕捉】で捉えた竜の瞳の武器を狙って飛んでいった必中の矢は、次々と命中していく。


「「「「ッ!?」」」」


 突然の攻撃で、竜の瞳のメンバー達は完全に不意を突かれたようで、俺の矢を避けることも防ぐこともできずに驚いたような表情を浮かべながら武器を破壊されていく。


「さあ、やっていこうか」

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