情報収集
「これでよしっと」
狙撃手は死んでいないが、ピクピクと痙攣しているから生きてるだろうし問題ないだろう。
そして、それを確認したあと例のごとく探索者も拘束できる縄を狙撃手含めた竜の瞳のメンバーが持っていたから、その縄を使って全員縛り上げておいた。
「さて……どうやって起こすかな……」
地図は奪い取ったし、後は狙撃手が話していた計画について聞き出そうと思ったんだけど、どうやって起こすか。
とりあえず全員武器を隠し持っていないかを確認させてもらったから、不意打ちの心配はないから起こしても問題はない。
……よし。
「おーい。起きろ」
────パンパンパンパンッ!!!
とりあえず気絶してる狙撃手を起こすために顔に連続でビンタ──往復ビンタをくらわせる。
「うっ……な、なんだ!?」
すると、すぐに頬をビンタされた衝撃で目を覚ました狙撃手がキョロキョロと周りを見て状況を理解したのか、俺のことを睨み付けてきた。
さっき、俺の攻撃が効いてなかったことを考えたらこの往復ビンタは意味がないなんてことも考えたけど、ちゃんと効果があったみたいだな。
「おはよう。
早速で悪いが色々と聞きたいことがあるんだが……答えてもらうぞ」
「……は、はっ!だ、誰がおお前なんかに答えるか!」
「そっか……なら仕方ない」
俺はそう言いながら【魔法矢】で透明な矢を一本作り出して弓につがえる。
「な、何をするつもりだ!?」
「質問に素直に答えてくれれば何もしないけど……シッ!」
「ヒ、ヒィッ!」
怯えている狙撃手に向かって問答無用で射ち放った透明の矢は、狙い通りに狙撃手の顔面スレスレを通り過ぎていく。
狙撃手は反射的に避けようとしたのか、少し顔をずらしかけたけど元から当てる気はないからそんなことをする意味はない。
「ギ、ギィ……」
「へ?はぁ?」
俺の狙いは最初から近づいてきていたデビルバットの方だ。
デビルバットは突然目の前に現れた透明な矢に気づくことなく、頭を撃ち抜かれて倒れる。
「は、は、はぁ?」
「俺のなにもしないというのは文字通りの意味だよ。
お前に危害を加えるつもりは全くないけど……この通りモンスターは襲ってくるからな。
まあ、その状態であいつらの相手をできるんなら別にいいけど」
「わわわわわ、わかった。わかりました!な、なんでも話すから助けて!」
狙撃手は、俺の言葉を聞いた瞬間に慌てて喋りだした。
ふむ……これはちょっとやり過ぎたかもしれないけど、まあいいか。
正直に言えば、このまま尋問を続けてもよかったけど、時間もそんなにないしな。
「よし、それじゃあさっさと全部話してもらおうか?狙撃手さん?」
そう言って俺はにっこりと笑顔を浮かべたのだった。
狙撃手から話を聞き出すと思っていたよりも多くのことが聞けて、かなり有益な情報を得られた。
まず、このダンジョンはやっぱり俺の予想通り迷教が隠していたものらしい。
そして、ここにいる竜の瞳のメンバーは迷教に神託の子である未来を見れる女の子を拐ってこいと命令されていたようだ。
学校を襲撃したのは、迷教が神からの神託で年齢が18歳、いるであろう場所を特定できたから該当するユニークスキルを使える人間を探し、襲撃して誘拐するために行ったみたいだ。
なるほどな……
聞き出した情報は全部足りなかったピースを嵌めるように俺の中で形作られていって、この一連の事件についてだんだんと見えてくる。
今回の一件は、やっぱり迷教が黒幕だったということか……
竜の瞳は、迷教の指示で動いているのだろうけど、神託の子をどうするかといった内容までは教えられてないのか知らないみたいだしな。
それにしても、莉奈は【未来予知】のスキルを持っているから、神託の子とかいう未来が見れる子なのか……
正直疑わしいことこの上ない。
神というのもダンジョンとかいう摩訶不思議なものもあるんだ。今更いても不思議ではないな。
だけど、だとしたらなんで神託の子なんて遠回りな言い方をしたのか、それが分からない。
本当に神なんてものが存在しているのだったら、そんな遠回りな言い方せずに莉奈を最初から指名してしまえばよかったのになぜそれをしなかった?
それなら莉奈の【未来予知】の力を欲した何者かがなにかしらのスキルを使って神を騙ったという方が納得がいく。
……ダメだな。
聞き出した情報だけだと事件の全容を掴むにはピースが足りない。
だけど、狙撃手が知っていることはこれで全部らしいからこれ以上は考えても意味はないな。
そうなったら地図も手に入ったし、情報も集められた。
後は先に進むだけだ。
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