動き出した"悪"
凛の家で夕飯をご馳走になってから三日経った。
迷教の集まる場所の方角を特定してから凛達にできるだけ三人で行動するのと、夜に外出しないように伝えてある。
あとは一応警察にも撮影した動画という証拠付きで相談した。
今のところ目立った被害などはないが、今後何かしら行動を起こす可能性があるから、なるべく早く解決したいとのこと。
一応証拠もあるし、捜査と聞き込みはしてくれるみたいだけど、まだ結果は出ていない。
あとは少し迷教の拠点を調べようと思ったが、すぐに諦めることになった。
あのあとすぐに【複数捕捉】を頼りに迷教の集まっているであろう場所。つまり、集会場を見つけようと動いたのだが、結局近づけなかったのだ。
その理由は単純明快。
見つけた場所が警備が厳重で近づけなかった。ただそれだけのことだ。
迷教の信者達が集まっていたのは凛達の家からかなり離れていた。というか都心部からも離れた山の麓の廃教会だった。
都心から離れた所にあるせいでかなり走ったしな。
しかもその廃教会には常に五人以上の見張りが立っており、近づこうとすれば見つかってしまう可能性が高くなるから、近づくことが出来なかった。
【隠密】を使っていたはずなのに俺の気配を察知して近づいてくるんだぜ? さすがに無理がある。
「さて……どうするかねぇ。居場所は突き止めたんだけどな~」
俺はソファーに座りながら天井を見上げて言った。
ちなみに今は平日の昼過ぎ。
いつもならダンジョンに潜ってる時間だったけど、さすがに竜の瞳の方の様子見で行かなかった。
「だけどそろそろ動くかなぁ……」
あれから三日間何もしていない。
いや、正確に言えば三日に一回ほど凛達が無事か確認してる。
それだけだ。
「んー……とりあえず、ダンジョンに潜ってみるか?」
この三日間警察が動いてるからなのか、迷教と竜の瞳が特に動きを見せていない。
だから、ダンジョンに潜るとしたら今がチャンスかもしれない。
まあ、一応午前中とかだけにしておくけど。
「それじゃあ行きますか!」
ということでやって参りましたお馴染みの灯火のダンジョン。
相変わらず人気はなく閑散としている。
まあ、俺にとっては好都合。
「さてと、午前中だけで何周できるかな」
結局、午前中だけだと移動時間が大半を占めてしまい、あまり七鬼炎を狩れなかった。
それでもレベルは上がったし、微妙なレベルで止まってた【捕捉】スキルのスキルレベルを20にする分のSPは確保できたんだ。
あとで割り振ってスキルレベルを20に上げておかなきゃな。
まあ、ダンジョンからはもう出てるし昼飯でも食べて帰るか。
──プルルルルル
そんなことを考えている時、スマホの着信音が鳴った。
画面を見ると……
「……杏樹?」
画面に表示されている名前は杏樹だ。
メッセージじゃないのは気になるけど……
とりあえず電話に出てみる。
すると──
『あまみー!今どこ!』
──いつもの杏樹からではあり得ないぐらいの怒鳴り声が聞こえてきた。
「えっと……ダンジョンだけど……」
なんだろう急用だろうか? そんなことを思いながら杏樹に答える。
すると、さらに大きな声で
『ダンジョン!?お願い!今すぐ私達の家に来て!!』
と言われた。
「ど、どういうことだよ!?」
『いいから今すぐ来て!莉奈が!』
「……っ!!」
その言葉を聞いた瞬間、俺は灯火のダンジョンから凛達の家に走り出す。
──────莉奈が……拐われた……
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