説明会

「……はぁ……なんでこんなことに……」


 あれから一週間。


 なぜか説明会に参加することになった俺は、会場となる体育館のステージの舞台袖にいた。


 その参加することとなった原因は──


「おう!楓!今日はよろしくな!」


 ──この数人の男女とやってきた、試験官のシルバー探索者の男性。中本さんだ。


 この人が今回の参加を依頼されたパーティーの一人で、俺をこの説明会に誘った張本人でもある。


 なんでも、以前探索者になる前に営業職をやっていたらしく、その中本さん持ち前の話術でいつの間にか俺の参加が決まっていた。


 どう言うことだって?安心しろ。俺にもわからん。

 おっかしいな~?一応参加者を聞くだけ聞いて、参加についてはお断りつもりだったんだけど……


「ええ。皆さん今日はよろしくお願いします」


 まあ、一回了承して仕事として受けてしまった以上、やるしかない。それに、他の参加者の人達もいるし、なんとかなるだろ。


「お疲れ様で~す」


 すると、次は女の子が舞台袖に表れた。その女の子は、見覚えのあるというレベルを超えて、しっかり知り合いだ。


「リーシェ。お疲れ」


「あ!楓さん!お疲れ様です♪」


 その女の子は桜井結愛。


 以前、魔樹のダンジョンで一緒に戦ったり、半日一緒に過ごした女の子だった。


 事前打ち合わせの時はビックリしたなんてものじゃない。


 参加する探索者の一人に企業所属の探索者が参加するとは聞いてたけど、まさかその企業がアストラルで、なおかつその参加する探索者が結愛だとは思ってもなかったし。


 あとは顔合わせの時に結愛と本名で呼びそうになって、口を塞がれかけた。まあ、避けたけど。


「うっし!それじゃあ今日の参加者は全員揃ったみたいだし、最後の打ち合わせでもするか!」


 そして、全員揃ったことで、中本さんの音頭で、これから行われる説明会についての話し合いが始まった。


 まず説明会では、はじめに全員が自己紹介をして、誰がどの話をするのかを生徒に話す。


 そして、次に中本さん達がパーティーのメリットなんかや注意点を話す。

 これはパーティーのメリットである、少し上のレベルのモンスターが出てくるダンジョンに潜れるというところや、注意点の報酬の分配についてを話したりする。


 その次に俺がソロのメリットを話して、注意点。特に、ソロの危険性をたっぷりと話すことになってる。

 普段ソロの俺がソロのメリットや危険性について話すのは、生徒達にいい勉強になるだろうということで、こういう形になったらしい。


 そして、リーシェこと結愛が企業所属について、簡単にだけど説明することになっている。


 他にも、ダンジョンなんかのことをよく知らない高校の生徒達のために、色々と資料を配ったりもする予定らしい。


 そんなこんなで、細かいところの打ち合わせだったりをしていたら、時間は過ぎていき──


「これから、現役の探索者による説明会を始めます」


 ──とうとう開始時刻になった。

 さあ、気合い入れていくか。俺の出番自体はかなり少ないし、頑張ろう。









「それでは次に、現役探索者の天宮さんから説明会を始めたいと思います」


 なんて考えてたらあっという間に俺の出番になってしまった。


 だけど、話す内容は事前に決まっていたから、用意していた台本通りに進めるだけでよかったから楽勝だ。順調に話を進め、無事俺の番を終了することができた。


 でも、人が多い場所で前に出て話すなんてことなかったから緊張した~……


「天宮さん、ありがとうございました。それでは続きまして……」


 近づいてきた先生にマイクを渡して、舞台袖に下がる。


「それじゃあ楓さん、いってきますね♪」


「おう。いってらっしゃい」


「はい♪」


 結愛は元気に返事をしながら、舞台袖からステージに向かっていった。


 そして同時に、心なしか中本さん達や俺の時にしていた拍手よりも大きいような気がする拍手が起こる。


 やっぱり知名度って大事なんだなって実感した。


 少なくともPouTuberじゃない俺や中本さん達よりも、結愛の方がリーシェとして活動してる分、結愛の方に注目が集まるのは当然だよな。


 そして、結愛は舞台袖で聞いている俺からしても、しっかりと話していて、質問にもしっかり答えていた。その話の内容もとてもわかりやすい内容で、みんな真剣に聞いている。


 やっぱり高校生ぐらいになってくるとひたすらに上を目指すっていうより、現実的な企業所属っていう方が良いのかな?


 その後も、結愛がしっかり企業所属の探索者について語っていき、無事に説明会は終わった。


 これでようやく終われ──


「それじゃあ最後に質問がある人がいるかどうか確認してみましょうか。何か質問がある生徒はいますか?」


 ──ない。質問がまだあったんだった!

 頼む……説明会に参加している生徒諸君。俺に質問はしないでくれ。

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