襲撃
なんて、俺に質問をしないでくれという願いは届くことはなく、バリバリ質問されたのだ。
中本さん達や、結愛には劣るもののそれでも結構な数の質問が来て、俺は内心焦っていた。
ソロは危険だからやめた方がいいとか、そういうことを言っていればなんとかなると思ったんだけど、ぜんぜんそんなことはなかった。
結局、ソロを目指してる生徒や、一人を好みそうな生徒を中心に質問が飛んできて、俺はその一つ一つを丁寧答える。そんな時間がしばらく続いた。
しかも、中にはあの魔樹のダンジョンでの突然変異ボスモンスターのイビルトレントを結愛と倒した時の動画を見ているリーシェのファンらしき生徒もいて、そのことについてまで聞かれた時は本当に困った。
それに、その生徒が結愛について聞いてきた時に「友人です」と答えたら、「付き合ってるとかはないんですか!?」なんて聞いてきた奴がいた時には、思わず素が出そうになったけど、そこはぐっと堪えた俺偉いと思う。
「それでは、次の質問で最後にしようと思います」
司会をしている先生の声を聞きながら、やっと終わるのかと一息つく。
「それじゃあ、最後の質問は──」
そして、ついに最後の質問になった。
最後の質問はなんなのか、一体どんな質問が来るのかと少し身構えた瞬間──
ガラァッ!
体育館の扉が勢いよく開いて、そこから数人の黒ずくめの顔を隠している男達が入ってきた。
あれは……!
なにか打ち合わせミスでもあったのかと思って、先生達を見るけど、生徒達や結愛と同様先生達も固まっている。
教師の反応とあの服装で学校の関係者じゃないと察した俺と、同じことを考えたのか中本さん達も黒ずくめの男達を取り押さえようと動き出そうとする。
だけど──
──パァァァァァン!!!
それよりも黒ずくめの男が拳銃を天井に向けて撃つ方が早かった。
「きゃぁあ!!!」
「うわぁぁぁあ!!!」
その音を聞いて、我に返った生徒達は悲鳴を上げて混乱しはじめた。
「お前ら動くんじゃねぇぞ!」
そんな生徒たちに対して、黒ずくめの男達は拳銃やアサルトライフル、ショットガンなどを向けて怒鳴りつける。
銃口を突きつけられたことで、パニック状態に陥っていた生徒達だったが、それが効果的だったのか、再び静まりかえってしまった。
それは俺や中本さん達も同じで、生徒達に銃口を向けられている状況で下手に動けずにいる。
……さて、どうするか。
「おーおー、いい子だ。大人しくしてくれておじさんは嬉しいぜ」
その後、俺達が探索者だと知った黒ずくめの男達は生徒を人質に取って俺達の手と足を縛る。
縛ったのは見たことのある【魔道具作成】で作られた縄で、そう簡単に切れなそうだ。それに、生徒達を人質に取られたらさすがの俺達もどうすることもできない。
黒ずくめの男達もレベルを上げてるらしく、だいたい500レベルぐらいでリーダーらしきやつでも1000レベルぐらいの強さだから戦えば簡単に制圧できると思う。
実際、さっきのは距離があったから黒ずくめの男達に行動を許してしまっただけで、正面から戦えば負ける気はしない。
リーダーらしき男はステージ上で縛られている俺達を見てニヤリと笑う。
「さ~てと、悪いね探索者諸君。
君達が今回ここにいたのは想定外だったんでな。そこでおとなしくしててくれや」
……想定外?
じゃあこの襲撃は予定になく突発的に行われたのか?それとも予定されていたけど俺達が今日ここにいたのが想定外だった?
くっそ!情報が足りない!今はおとなしく言うことを聞くしかないか……
「よしよし。それで良い。
お前ら!手はず通りに18歳のガキを集めろ!」
「「「おう!!!」」」
そして、黒ずくめの男達のリーダーらしき男は、他の黒ずくめの男達に声をかけると、ステージから降りる。
ステージ上で俺達を監視してるのは、アサルトライフルの銃口を突きつけてくる男二人。
他にも何人か黒ずくめの男達はいるけど、俺達を監視してる二人以外は全員生徒達の方へ向かい、銃口を向けてなにかを聞いている。
「…………」
「楓さん、あの人達はなにをするつもりなんでしょうか……」
「……わからない。だけど、ろくなことじゃないのは確かだろうな」
結愛が不安そうな表情で俺に問いかけてきたけど、俺だって何が起こってるかわかっていない。
今わかることは、あの黒ずくめの連中の目的は生徒達。
それもリーダーらしき男の言葉から、18歳の生徒が狙い……なんで18歳だけ。
「おい、お前らはこっちだ。ついてこい」
結愛と話していた俺は、その声が聞こえてきて視線を向けると、そこには生徒達に銃を向かせている黒ずくめの男達の姿があって、男達はその銃口を向けている生徒達を体育館の外へと連れ出そうとしていた。
「ちっ!あいつらどこに連れていくつもりだよ」
「……わかりません。ですが、私達が動くのはあまり良くないと思います」
「わかってる……くっそ……」
中本さんは苛立ちを隠せずに悪態を吐き、結愛もその様子に気づいてか冷静に中本さんを諭すように話しかけていた。
中本さんのパーティーメンバー達もなんとか縄を外そうとしてるみたいだけど、残念ながら俺達と同じ状況になっている。
そんな中、俺は連れていかれる生徒達の人数と顔を覚えておこうと思って一人一人の顔をしっかりと見ていたんだけど、その時に見覚えのある生徒達がいた。
「凛、莉奈、杏樹……?」
連れていかれる生徒達の中に、見知った三人の顔を見つけて、思わず呟いてしまう。
くっそ!前に説明会を三人の学校がやるって聞いてはいたけど、三人共この学校の生徒だったのか!
だけど、手と足を縛られてる俺には何も出来ない。
そう考えている内にも生徒達は次々と連れてかれ、ついに最後の生徒達まで連れて行かれてしまった。
……だけど。
「……今なら」
確かに、ステージ上に二人俺達を監視してる黒ずくめの男達がいるけど、俺達のことを警戒していない。
俺達が何もしないと思っているのか? それとも、俺達は拘束されて動けないから問題ないと高を括っているのか……どっちにしろチャンスだ。
その油断が逆転の一手になるかもしれないんだからな。
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