周回と協会

「……よし!」


 七鬼炎を倒したことで40レベル上がった。


 それにしても、このレベルになっても40レベル上がるのか。まあ、そりゃそうか。だって相手は強化Bランクモンスターのボスだもんな!


 だけど、今回は相性が良かった。

 七鬼炎の攻撃のほとんどが俺に通用しない攻撃だったのもあって、ほとんど無傷で倒すことができた。


 あれだけ強力で特殊な攻撃を持っていたとしても、効かなきゃ意味がないんだ。


「とりあえず、ドロップアイテムを回収しようかな」


 七鬼炎がいた場所に行ってみると、そこには七鬼炎の死体である灰とかなり大きい魔石。


 さすがはBランクモンスターの魔石か。実際に見るのは初めてだけど、めちゃくちゃデカいな。

 そして、そんな魔石に比例して灰の山もかなり大きくなっている。


「多いな~……」


 その灰の山は、遠目から見たらわかりづらかったけど、近づいたらその大きさがよくわかる。その山の大きさは俺よりも大きいし、何より灰の量が多い。


 その量は、鬼火や双鬼炎を倒した時に手に入れられる量と比べても遥かに多かった。これは、予想以上の収穫だ。


「まあ、まずは回収しよう」


 俺は灰の山に近づいていき、片っ端から灰を【アイテムボックス】に収納していく。


 結構な量の灰を【アイテムボックス】に入れたけど、それでも【アイテムボックス】の容量にはまだまだ余裕がある。


 やっぱり【アイテムボックス】のスキルレベルを上げてて正解だったな。この灰は需要しかないからいくらあってもいい。


「こんなものかな?」


 俺は魔石と灰を全て【アイテムボックス】に入れてから、ボス部屋をあとにする。ボス部屋を出ると、ボスを討伐したことで開いた扉は自動的に閉まった。


「ふぅ……」


 俺は息を整えてから、【アイテムボックス】からタオルと水の入ったペットボトルを取り出して、汗を拭ってから水を飲んで水分補給をする。


「ぷはぁー!生き返るな!!」


 やっぱり、運動というか戦闘した後の水は美味しい。


 だけど、体力は消耗しなかったし、そこまで疲れているわけでもなかった。まあ、端的に言ってしまえば、かなり楽だった。


 まだ余裕はあるし……


「それじゃあ……ボス周回、行きますか!」


 俺は再び、休憩中に開いた扉をくぐって、ボス部屋に入っていく。


 そして、【捕捉】と【魔法矢】の裏ワザコンボで七鬼炎を倒すための準備を整える。


 よーし!とりあえず目指すは十周。行ってみようか!













「くあぁぁぁ~……ねむっ……」


 そして、翌日。今日は朝から、ダンジョン協会支部にやってきている。


 結局あのあと、ボス周回を十周どころか十五周して、合計十六周できた。


 そして、ダンジョンを出たら、最近のいつもの光景になっている、某宗教の信者がいた。例のごとく、マイナス運動をしていたけど、ここまで来たら無視するのにもなれてきたよな。


「だけど最近、本当によく見るようになってきたな」


 見るようになった最初の方は、F~Dランクのダンジョン近くでしか目撃情報はなかったけど、最近はCランクやBランク、そして、一部のAランクのダンジョンで発見されてるらしい。


「……まあ、気にしてもわからないし、これから関わることもないだろうからいいけど。すいませ~ん」


 支部に入って、そのまま受付に向かってから灰の買い取りのお願いをする。


 鬼火と双鬼炎、七鬼炎の灰はどれも同じもので、量が変わってるだけだからもうボスを倒せるようになったのか?なんて思われないし気が楽でいいな。


 ちょっと鬼火倒しすぎじゃない?って感じでおかしなやつを見るような目で見られたのは気にしな~い気にしな~い。

 協会が討伐を推奨してるんだし買い取り拒否はさせんぞ。





 そんなわけで買い取りも終わり、買取価格も相当なものとなった。

 さすがはまあまあ大きい金属製の箱八個分の灰。倉庫で【アイテムボックス】から出してきたけど、中々の量だったもんな。


「それじゃあ、ありがとうございました~」


「あ、すいません天宮様。少々お時間いただいてもよろしいでしょうか?」


 灰を買い取ってもらった分のお金を受け取り、帰ろうとしたらなぜか受付の女性に呼び止められた。


 えぇ……なにかやったっけ……?


「大丈夫ですけど……」


「ありがとうございます。では、少しお仕事のお話をさせていただきます」


 そう言うと女性は手元の資料を見ながら話し始めた。そして、女性の話を聞きながら、資料に書かれていた内容を見てみる。


 話の内容は、一週間後にある、とある高校のダンジョンや探索者についての説明会に講師として参加してほしいというものだった。


「……なぜ俺が?」


「我々としては天宮様は、初心者の探索者への指導の経験も多くあり、シルバー資格保持探索者としてソロでCランクダンジョンに潜っている実績もあるため、適任だと思ったのですが」


「いや~……」


 う~ん……正直、最近のことからダンジョン協会の信用がまあまあなくなってきてるから関わりたくないんだよなぁ……


 これで俺一人だけに頼んでるとかだったらもう終わりだ。本当に協会(の頭)を心配したくなる。


「ちなみに、他にもその説明会に参加する探索者はいますか?」


「はい。普段Bランクダンジョンに潜っているパーティーが一組と企業の方が一名参加されています」


「へ、へぇ……ちなみにどんな「お?天宮じゃないか!」……うん?」


 女性にどんな人達なのか聞こうとしたら、突然後ろから大きな声で誰かに話しかけられる。


 声のした方を見ると、そこには見覚えのある男性がいた。


「あれ?試験官さん?」


 その見覚えのある男性は、俺がこの前受けた実技の試験を担当した、両手斧を使っていたシルバー資格保持探索者だった。

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