今時の女子高生ってわからない
「はぁ……」
昨日は散々な目にあったな……
とりあえず、今日はこうして協会の支部に来て凛達の事情聴取に付き合っている。
一応待ち時間は応接室らしき場所で待たされてるけど、やっぱり暇だよな。
だって何もすることないし。
一応俺が指導をしている時に事件に巻き込まれた、というか巻き込んでしまったから付き合わなきゃだし。
それにしても、まさか多賀谷の協力者が凛達の指導を頼み込んできたあの受付だとは思わなかったな。
話を聞くと、あの受付は協会のデータベースが魔道具で確認されてることを利用して、情報を書き換えたらしい。
監視に使われている魔道具にはデータベースとカメラとをつなぐ魔力のラインがあって、それを巌窟のダンジョンに繋がっているラインだけ少しの間切断して実行したらしいんだけど……いかれてるね。
しかも本当に少しの間の、巌窟のダンジョンを見張ってた多賀谷から連絡を受けた一分でそれをやったって言うんだから。
いくら誰も入らなかったタイミングとは言え一分は無理があるんじゃないか?とも思ったけど、実際にできたみたいだし。すごいよなぁ。実際に多賀谷は入ってこれてたし。
「だけどなんでそれを世の中のために活かせないかなぁ……」
それだけの技量があるならこれからいくらでも上に昇っていけただろうに。
せっかくの才能も、使い方次第じゃ宝の持ち腐れだな。
ダンジョン協会も今回の件で会見をするらしいし、ダンジョン協会はしばらく大混乱だろうな。
協会の会長はダンジョンが生まれてから十五年探索者をしたあとに会長に就任した傑物だ。滅多にそんな人が出てくるわけでもないし、会長も辞めることはないだろう。
その代わりこれからめちゃくちゃ忙しくなるだろうから、そこは多賀谷とか受付の手綱を握れてなかった罰とでも思って頑張ってもらおう。
そんなことを思いながらボーッとしていたら、扉がノックされた。
「うん?どうぞー」
凛達か協会の人かなと思って、俺は返事をする。
入ってきたのは凛達でもなく、協会のバッジを着けていないことを考えると協会の人でもない。一人の女性。
その女性は髪が腰まで伸びていて、とても綺麗な水色のような色をしていた。顔立ちは整っていて、どこか大人っぽい雰囲気もある。
年は俺より年上かな。
「え~っと……どなたでしょうか?」
昨日のこともあるし、なにがあってもすぐに対応できるようにしておく。
「……」
女性は、しばらく俺を見つめて黙っていたが、突然扉に向き直って部屋を出ていった。
……え?
「な、なんだったんだ今の人は……?」
俺がそう呟いた瞬間、またもや部屋のドアが開く。
今度は見知った顔だった。
「あー疲れたよ~!」
「り、凛ちゃんノックしてから入ろうよぉ……」
「もう遅い」
さっきの女性と同じように、扉が開いて凛達が入ってきた。
「お疲れ様。もういいのか?」
「うん!もう終わりだよ!」
「そっか。ならよかったよ。それじゃあ行こっか」
三人に終わったことを確認して俺もソファーから立ち上がる。
「うん!……って」
「どこに?」
凛と杏樹が首を傾げて聞いてくる。
あ、言ってなかったっけ? まあ今言えばいいか。
「お祝いだよお祝い。俺が奢ってあげるからどこか食べに行こうぜ」
「おお!行く!行きたい!どこに行くんですか!?」
「わ、私もいいんですか?」
「私も?」
「もちろん。三人にも迷惑かけちゃったしな」
今回の騒動は完全に巻き込んだ形になったし、お詫びの意味も込めてだけど。
「どこか食べたいところはあるか?どこでも好きなところで良いぞ」
俺の言葉を聞くと三人が集まって相談しだす。
そして凛達に提案されたのは……
「焼肉ね~……三人とも本当に焼肉でよかったのか?」
ダンジョン協会の支部から移動して今いるのは駅前にある焼肉屋。さらにその焼肉屋の個室。
しっかりと支部で凛達の指導の報酬はもらったしお金は問題なし。
というかあの多賀谷に協力した受付の男。俺が凛達の指導をしているのを協会に報告してなかったらしくて、俺が指導している間の給料がなくなるところだった。
牢屋の中に入っても迷惑をかけてくるって……
「もちろんですよ!お肉は正義です!」
「うん。むしろありがと」
「わ、私もありがとうございます……」
「そっか。でも今時の女子高生とかってもっとおしゃれなお店に行きたがるもんじゃないのか?」
前にテレビで見た気がするけど、最近の若い子達は焼き肉なんかよりもオシャレなカフェだとかスイーツを食べたりしたいらしいけど、この三人はそういったものとは無縁らしい。
「うーん……確かにそういうのも良いですけど、あたしはこういうのが好きですね!」
「私も」
「わ、私もあんなおしゃれそうなところはとてもじゃないけどきついですぅ……」
……おじさん(19歳)最近の若い子の考えってよくわからない。
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