エピローグ

「……ここ」


「あー!杏樹!あたしの育てたお肉!」


「ふふふふ。私の解析はこれが最高の状態のお肉ってことを教えてくれてる」


「もう!だったらあたしも、神速!」


「……!?お肉が消えた……!?」


「ほへぇ~。すごいねぇ二人とも。あ、お肉が焼けたよ」


 早速注文した肉が届いた途端にこれだ。

 まさに戦場と言っても過言ではない。


「いや莉奈の言う通りだぞ、本当に。肉はいくらでも焼いてやるからもう少し落ち着いてくれ」


 実際肉は現在進行形で俺と莉奈が焼いてるし、頼めばいくらでも店員さんが持って来てくれる。


 というか肉争奪戦にスキルを使うんじゃないよ。


「ほら、焼けたから食え」


 とりあえず焼けたものから順に凛と杏樹の前に持っていく。

 二人は同時に口の中に放り込むと、幸せそうに咀噛し始めた。


「おいひぃ~!」


「ん。美味しい」


「美味しいか。それは良かったよ」


 二人の様子を見ながら俺は自分の分を焼いていく。


 俺もそれなりに食べる方だと思うんだけど、女の子って結構な量を食べるんだなぁ。


「ほら、莉奈も焼いてばかりじゃなくてちゃんと食べるんだよ?」


 さっきから莉奈は焼いてばかりでまったく箸をつけていない。


 そんなわけで俺が育て上げた肉をトングで莉奈の皿に乗せる。同時にこちらをキラキラした目で見てくる凛と杏樹の二人にも。


「あ、ありがとうございます」


 するとようやく莉奈が箸を手に取り、肉を口に運んだ。

 ついでに言うなら凛も杏樹もバクバク皿に盛られた肉を平らげている。


「それにしてもみんなよく食うな~……」


「ん~お肉が美味しいのもありますけど、あたしは探索者になったら食べる量が増えましたしね。あとは成長期!あたし達は花の女子高生なんですから!」


「私も」


「わ、私も探索者になって動くようになってからですね」


 よく食べるってところに花の女子高生って関係あるのか?


「そうだよな。三人とも高校生なんだもんな。

 そうだとしたら明日三人とも大変なんじゃないか?魔物暴走なんて滅多に巻き込まれないし」


 俺の記憶が正しかったら年に十回あるかないかぐらいだったはず。

 今回の魔物暴走は異常事態イレギュラーっていうのもあるけど、そもそもが魔物暴走の起こるダンジョンの母数が多いからな。その分魔物暴走が起こる回数は多い。


 そのおかげ?せい?もあってか世間から見たら近くで起こったら怖いけど結構起きてる。だけど珍しいっていう認識だ。


 そんなもの凛達と同じ高校生からしたら話を聞きたいという子達でいっぱいだろう。


「む~そうなっても話せないものの方が多いですからね」


 凛が頬っぺたにご飯粒をつけて少し不満げに話す。


 まあ、確かに今回のことで話せることは少ない。


 今回は異常事態。それも人の手で引き起こされたいわば人災だ。

 そのせいもあって、今回の魔物暴走に関わった探索者には箝口令が敷かれている。


 実際に事を引き起こした原因とボスを知ってる俺達四人はめちゃくちゃ言われたからな。


 だけど、俺は学校にも行っていないし、基本はソロだからその辺りを誤魔化す必要もない。というか話す相手もいないしな。


 だけど三人はそうもいかない。


「う~誤魔化せるような話を考えとかなきゃ……」


「……大変」


「そ、そうですよね。でも仕方ないことですし、頑張ります」


 三人は高校生。昨日の近くで起こった魔物暴走に今日休んでる探索者のクラスメイト。これだけでも凛達と同じ高校生が魔物暴走に関わっていたという事を連想するには十分だろ。


 そして、今回の魔物暴走について本当の事を話すわけにはいかないから、三人は頑張って誤魔化しを考えるしかないだろう。

 それも出来る限りの普通な感じに。


「ま、頑張れよ。最近探索者になる高校生が増えてるから聞いてくる子は多いだろうけどな」


「そうですよね~うちの学校でも探索者になりたい人向けに今年から説明会を開くらしいですし……」


 へー……そういうのもやるようになったのか。

 まあ、考えてみればそうだよな。


 近年、探索者になる高校生が増えているって聞くし、先生としては心配な部分もあるんだろう。


 それに、高校三年生にもなると受験シーズンに突入するし早めに決めてほしいんだろうな。

 正直俺の学校にもそういうものが欲しかったぐらいだ。


「ま、あたしはもう卒業したあとも探索者を続けるって決めてますし、なんの問題も無いですね!」


「私も」


「わ、私もです」


 おおう……なんかこんなところで決意表明を聞くとは思わなかった。


 いや、高校を卒業したあとすぐに探索者として本格的に活動し始めた俺が言えたことじゃないんだけどね。


「そっか。それじゃあ難しい話はここまでにして、せっかくの焼肉なんだから楽しまないとな。ほら、まだまだ肉はあるぞ?」


 そんな俺の声と同時にまた肉を焼き、食べ出す三人。

 俺も負けじと焼いて食べる。


 途中から大食い大会みたいなことになってしまったけど、こういうのもありかもな。













 そして、そんな大食い大会染みたものを食べ放題でもないのにやってしまって、俺が支払う会計の金額がとんでもないことになっていたりするのだった。






 ------

 レベル635

 HP:6370/6370 MP:4195/4195

 攻撃力:707(+52)

 防御力:657(+12)

 俊 敏:1897(+1247)

 器 用:812(+152)

 精神力:2052(+1412)

 幸 運:50

 BP:150

 SP:165

 スキル:【魔法矢Lv.20】【弓術Lv.10】【鷹の目Lv.10】【アイテムボックスLv.7】【捕捉Lv.10】【鑑定Lv.5】【MP増加Lv.10】【MP回復速度上昇Lv.10】【短剣術Lv.7】【索敵Lv.9】【隠密Lv.5】

 ------

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る