魔物暴走終了
「あいつはモンスターでもない別の生物になっていたってことか」
そう考えるのが一番自然かな。
ついでに言うと、多賀谷も合体?吸収?のようなものもされてたけど人ではない。絶対に。
「そうなってくると多賀谷から話を聞き出せなかったのが痛いな。でも、ああでもしなかったら俺が死んでたかもだし……」
まず間違いなく、今回の魔物暴走とボスの変異は多賀谷が原因だ。
突然誰もいないようなところに怒鳴りつけていたような気がしたけど、多分間違いないだろう。
あとはあの【憤怒】と叫んでいたスキル。あれも気になるところだ。
くっそ……本当に多賀谷を確保できなかったのが痛すぎる。
「とにかく、今は討伐の証拠は手に入れたんだ。俺が考えても答えは出ないだろうし協会にでも調べてもらうのが一番だろ」
だけどこの全滅したパーティーの人達の死体は持って帰れないな。俺が地上に帰ってきて報告して帰ってきてる頃には死体はダンジョンに吸収されて、装備とかだけになっているはず。
その辺は【アイテムボックス】の不便なところだよな。
こういう時には、人の死体なんかも回収できるようにしてほしい。
だけどそのお陰で、人を殺したあとに【アイテムボックス】に死体を入れて、行方不明にするなんてことになってないんだから世の中うまくいかないよな、ほんと。
とりあえず黒い袋もそんなにないし、一緒に入れるわけにもいかないから連れて帰れなくてごめんと供養の意味も込めて合掌して、そのボス部屋を後にするのだった。
***
ダンジョンから出て地上に戻ると、既に魔物暴走も終わったらしく既にダンジョンの入り口は封鎖されていた。
普通だったら、これから協会や企業なんかの研究チームが来て魔物暴走がダンジョンに与えた影響なんかを調べるんだろうけど、俺はそんなことをしてる場合じゃない。
とりあえず協会の人に【アイテムボックス】に入ってる肉片や牙、多賀谷の一部を渡してこなきゃ。
「さてと、それじゃあ話を聞かせてもらおうか?」
協会の人を絶叫させてきた後、移動してきた俺の前には縄でぐるぐる巻きにされて捕まえられている多賀谷に協力した探索者の二人がいる。
縄で捕まえたのは今も二人に話しかけている協会の男性。近くにはもう一人協会から来た女性がいる。
この縄は【魔道具作成】で作られた特別製の縄で、めちゃくちゃ頑丈に作られてるらしい。
見た目やスキルを使える探索者のことを考えて鎖や手錠ではないらしいけど、縄でぐるぐる巻きって……まあいいけど。
「言っておくが、嘘は通用しないからな?お前達が多賀谷に協力していたことは既にわかっている」
「こちらも既に多賀谷の協力者が探索者協会のデータベースの情報を書き換えていたことは掴んでいる。今更誤魔化すことはできないぞ?」
協会から派遣されてきた二人は、胸に赤色の蛇を剣で貫いたようなバッジをつけている。
あのバッジには見覚えがないけど、嘘は通用しないと言ってるからには名前は忘れたけど嘘を見破るスキルを取っているのか?
「「……」」
「だんまりか……じゃあ兄ちゃん、悪いな。先に兄ちゃんに話を聞かせてもらうぜ?」
二人の返事が返って来ないことに、男性はため息をつくと俺の方を向いてそう言った。
俺は黙ってうなずく。
正直、俺も聞きたいことは山ほどあるけどとりあえず事実確認をしてもらうのが優先だ。
それから、男性に促されるまま俺は多賀谷の協力者たちについて知っていることを話し始める。
当事者の俺はここにいるけど、凛達三人は学生なのと俺の事情に巻き込まれたこと、疲れてるだろうと言うことでまた後日話を聞くらしくここにはいない。
……俺も後日じゃダメだったのかな?
とりあえずボス部屋での経緯は改めて説明し直したし、嘘もついてなかったからすぐに信用された。
既にあの二人が多賀谷に協力し、裏切っていたことがバレていたのもあって、この場にいる全員が俺の話を信じてくれたのも大きい。
そして、俺が話し終わると同時に、男性が口を開く。
「……なるほどな。それで、ボスが変異していた理由はわかったのか?」
「いえ……なにも。多賀谷も憤怒というスキルらしきものを使ってましたけど、あれがなんなのかすらわかりません」
「憤怒……憤怒か。そんなスキルあったか?聞いたことないけど」
「私も知りませんね。ですが話によるとそのスキルを使う前に、なにか叫んでいたそうですね?」
「はい。確か……全部くれてやるから寄越せよ……だったかな?」
俺の言葉に、全員が黙り込んでその場で考え込む。
まあ、俺なんかよりよっぽど長くダンジョンに関わっている協会の人達が知らないんだ。俺がわかるわけもない。
そんなわけで俺の話は終わりだ。
俺に出きることはもうないだろうし、思ったより早く終わったな。
後はあの二人がどうなったかを聞けばいいかな。
「あの……それであいつらはどうなりますかね?」
「んー……そうだな。とりあえずは拘束したままだが、おそらくもうすぐ警察が来ると思う。そしたら引き渡しだ」
「そっか。ならよかった」
これであいつらが捕まったら、これまでの余罪も出てくるだろう。
あの様子を見たらあんなことをしたのは俺だけではないだろうしな。
もしかして結愛が言っていた死亡率が高いと言うのも関係が……いや、考えるのは俺ではない。
あの人達が聞いていけばすぐわかるだろ。
そして、協会から来た人たちとはここでお別れ。協会の職員も忙しいんだろうな。
俺の話を聞き終わったらあわただしく動き出したし。
さてと、俺は後で凛達にも話を聞かなきゃだし、巻き込んでしまったことの謝罪もしなきゃないけない。
まあ、とりあえず今日はゆっくり休もうかな。
そんなことを考えながら俺は家に帰るのだった。
***
「あん?」
「あら?どうしたの?◼️◼️◼️?」
「端末との接続が切れやがった。クソが!
……まあいい。またすぐに見つかるだろ」
「あら羨ましいわね。あなたは端末が見つけやすいなんて。私なんてまったく見つからないのに」
女はそう言うと、目の前の男に笑いかける。
男はそんな女の笑みを鼻で笑うと、そのまま勢いよく扉を開けて出て行った。
「まったく、本当に妬ましいわね。あ~あ。私も早く自分の端末がほしいわね」
そういうと、女も部屋から出ていく。
その後、部屋には誰もいなくなった。
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