ユニークスキル
「やぁ!」
凛達のパーティーに指導を始めて一週間が経過した。
あれから、凛達は大きく成長してきている。
同じレベルぐらいの頃だった俺と比べても明らかに動きが良いし、強い。
ちょっと複雑だけど……
まあ、レベルはハイオークを安全に討伐できるレベルには届かないけど、それでも十分なレベルだ。
「ブモォオオ!!」
「やった!倒した!」
そして、目の前ではオークを倒したことで喜ぶ凛の姿があった。
「本当に強くなってきたよな。最初の頃と比べたら雲泥の差だし。このまま行けばあと一ヶ月ぐらいでハイオークを安全に倒せそうだな」
というかあの子達、やっぱり動きがレベル以上に良いんだよな。
正直才能という枠組を越えてる気がする。
「……君たちなんか強くない?」
思った疑問を凛達にぶつけてみる。
「えっとですね……どうしよう莉奈ちゃん、杏樹ちゃん教えても大丈夫かな……!」
「うーん……私は教えても良いと思いますけど」
「うん。私も賛成。あまみーは信用できる」
すると、三人が集まってひそひそと何かを話し始める。
話しはまったく聞こえてこないけど、恐らく俺に話すかどうか決めてるんだろう。
まあ、話をしてる時点でなにかあるのは確定なんだけど。
「えっと……実は私達のお父さんが元探索者なんで、それで色々と教わっていたんです」
なるほど、それはわりと良くあることだ。
元探索者や現役探索者の親が、探索者になりたいという子供に反対せず、ダンジョンで死なないように子供の頃から木製の武器を使って武器の扱いを教える。
それは結構ありふれている。
実際そのおかげでステータスを発現した時に武器関連のスキルが手に入りやすいらしいからな。
「そうなのか、それなら納得だ」
なるほどな。
あの年であれだけ動けるのは子供の頃から訓練してたからか。
よく考えればすぐにわかったことだったな。
「まあ、それだけじゃないけど」
「……え?」
杏樹の口からとんでもない言葉が発せられた。
どういうこと?
「あたし達みんなユニークスキル持ちなんですよね」
「……へ?」
凛の言葉に思わず変な声が出る。
三人ともユニークスキル持ち?
それって結構、いやめちゃくちゃすごいことだぞ。
「あたしが持っているユニークスキルは神速っていうユニークスキルで」
「わ、私は未来予知です」
「私のは解析。どんなものでも調べることができる」
……これは、かなり驚いた。
いや、マジで。
ユニークスキルを持っている人はそこそこいるけど、名前だけでもわかる。かなり強力なスキルだ。
凛の【神速】に莉奈の【未来予知】、それに杏樹の【解析】か。
正直この中だったら【未来予知】が飛び抜けてヤバい。
どこまで未来が見れるか、どんなものが代償になるか、それらの条件がわからないからまだなんとも言えないけどそれでも条件が整えば未来が見れるんだ。
この事が発覚したら、間違いなく国を巻き込んでの争奪戦が起きるだろう。
「まあ、それであたし達が全員ユニークスキル持ちっていうのもあるんですけど、お父さん達が信頼できる人以外には絶対に話すな!って言ってたんですけど、天宮さんは信頼できますから」
「……ああ、そういうことか」
全部理解した。
ユニークスキルを隠すのと同時にお父さん達からしたら娘に変な虫が寄り付くのを防いでたってわけか。
まあ、確かにあのレベルの美少女が三人でパーティーを組んでるだけでも変なことを考える奴が出てきてもおかしくないのに全員がユニークスキル持ちって知られたらなぁ……
「凛達はお父さん達に感謝しときな。いやまじで」
「……?はい!」
「えっと……感謝はいつもしてますよぉ……」
「もちろん」
うん、本当にいい子達だなぁ。
「ちなみにユニークスキルの効果は聞いても大丈夫?」
俺は三人、主に莉奈に問いかける。
莉奈になぜ聞いたかというと、莉奈がこの三人の中だったら一番正確に教えてくれそうだと判断したからだ。
ユニークスキルの効果によっては、これからの予定が変わるかもしれないから正確な効果を知りたいしな。
「はい大丈夫ですよ。凛ちゃんの神速は自分の速さを倍にするって感じの能力で、私の場合は未来のほんの一部分が見えるようになるらしいです。だけど使用MPがかなり多いので、今の私ではまともに使えませんね」
「らしいです?それに、そんなにMPを使うのか?」
今かなり低く見積もっても莉奈のレベルは40は確実にあるはず。
それでもまともに使えない?
どんだけMP使うんだよ。
「えっと……2000です……」
「2000!?」
これはまたすごいスキルだな。
2000ともなると俺のMPでも半分以上持ってかれる数値だぞ?
「それはまたすごいな……」
「ま、まあ、その2000MPのせいで一回も使ったことがないんですけどね。えっと、話を戻します。
あとは杏樹ちゃんの解析スキルは対象がどんなものであろうと解析することができるんです。なので、モンスター相手にはすぐに弱点がわかったりするので大活躍ですね」
「なるほど。それは確かに便利だな」
相手の強さや弱点がわかれば戦闘において圧倒的に有利に立てる。
しかも、それが未知の敵だったとしてもだ。
この子達は成長したら、かなりの大物になりそうな気がするな。
「まあ、こんなところだよね」
「そうですねぇ……あんまり教えることもなかったかもですぅ……」
「だけどこれで全部だし、問題なし」
「そっか……教えてくれてありがとな」
正直ここまで信頼してくれていることが結構嬉しいな。
「そっか……それじゃあどうする?ハイオークに挑戦してみるか?」
ハイオークを倒すのは今の凛達でもギリギリ倒せるはずだ。
だけど、無理はさせない。
ハイオークと戦う時は俺が必ずサポートをするし、もしもの時の回復も俺がポーションでやるつもりだ。
だから、危なくなったらいつでも俺が助けられるようにはしておく。
「え!?良いんですか!?」
「ああ、オークへの攻撃を見た限り充分だろ。それに、三人がユニークスキルを使ってハイオークと戦っているところも見てみたいしな」
「やった~!!!じゃあ行こ行こ!莉奈、杏樹行くよ!」
「ま、待ってよ凛ちゃ~ん!」
「凛、先行くと危ない」
俺がそういうと凛が先に叫びながら駆け出し、そのあとを莉奈と杏樹の二人が追いかけていく。
こうして見ると本当に仲が良いんだなって思う。
「さてと、じゃあ行きますか!」
俺も三人のあとを追って全力で走る。
「あ、天宮さんはや!」
凛達を追い抜かして走り続ける。
その瞬間凛の驚きの声が後ろから聞こえてくるけど、そんな声を聞き流しながら走り、ハイオークのいるボス部屋まで向かうのだった。
手加減?そんなの知らんなぁ!
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