第6話 雪
少女が外を眺めている。
鮮黄色と瑠璃色の瞳に映るのは、曇天が晴れた後の青い空と白の大地。
柔らかな朝のひかりが、この森の全てを照らしていた。銀箔の雪に覆われた木々を、朝が優しく包み込んでいる。
「わぁ…」
少女の唇から感嘆の吐息が漏れた。
冬が齎すこの季節は他の季節に比べ、色彩こそ欠くが、美しい。
しかし、この季節が見せるのは美しさだけではない。
冬は死の季節。日照りは減り、食料は乏しくなり、寒冷が体を蝕む。
そんな風景の中、青年が何かを雪で作っていた。
「はぁ、はぁ、これ、結構大変なんだな…」
そう言いながら雪を積んでいく。やがてそれはドーム型になり、人が数人入れるくらいの大きさになった。青年はこちらを見ている少女に手を振り、こちらへ来るよう促した。
「これ、何作ったの?家ならあるでしょう」
「これは……なんだっけ、名前は忘れちゃった。そんなことはどうでもいいだろ。早く中に入ろうぜ、思ってるより暖かいからさ」
入口を屈んで通りながら少女を誘う。少女は不格好で今にも崩れそうなそれを訝しげに見ながらも、中に入った。それから数時間、食べ物を食べたり、お話をしたりしながら二人は過ごした。
「あれってどこで採れるんだ?あの光るやつ」
「光るやつ?ああ、ルミナスの事ね。あのキノコならあの洞穴の奥にいっぱいあるよ。何かに使うの?」
「ちょっと面白いことを思いついてな。沢山取ってきてくれないか?」
少女はこくりの頷き、洞穴の方へ歩いて行った。
やがて、少女が帰ってくると青年は少女を家に閉じ込め、いいと言うまで出てこないようにと言った。
仕方なく少女は家で待つことにした。
少女が家に入るのを見ると青年は作業を始めた。まず、雪を使って小さなドームを作る。そして、そのドームの中にルミナスを入れていく。それを繰り返すうちに辺りは無数のドームで埋め尽くされていた。
「よし、これでいいか」
そう言いながら家まで少女を呼びに行った。
「おい、もう出てきていいぞ」
「やっと?遅すぎて寝ちゃうところだったよ」
欠伸をしながら少女は扉を開けた。
永遠と唯一の物語 アイズ @aizsanmaosi
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。永遠と唯一の物語の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます