第8話 『脱出』
周りを見渡して何か使えないか考える。
包丁、は手が切れて死んでしまいそうだしそもそもない。
ハサミはあるけど高くて届かない。
どうすれば。
どうしようと思い俯く、そしてその途中で視線は止まる。
俯いたその先の壁際に割れた食器用のゴミ箱とやらがある。
しかも距離はそこまで遠くない。
あれだ!そう思った僕は芋虫のようにウネウネた這って進む、その際脱がされた分の素足が擦れて痛くなる。
しかしそれにも耐えてゴミ箱の前に着いた。
そして壁まで這う、そして壁へ体を擦りつけるようにして体を持ち上げる。
そして上体を持ち上げた状態にして、ゴミ箱へと倒れる。
すると予想通りそのまま一緒にゴミ箱は倒れ中身がぶち撒けられる。
倒れた衝撃で体に痛みが走るが構わずに這う。そしてその中でも1番鋭い物を選び、手のガムテを切る。
よし!
そして解放された手で足のガムテも切り、口のガムテを取った。
「はぁ、はぁ」
やり切った達成感と疲労感で息が切れる。
ガムテを取った後にズボンを上げてこの後どうしようか考える。
恐らくあいつらは帰ってくる、ならばその間に逃げるがいいか。
そう思い扉を開けようとする、しかしやはりと言うべきか。
「扉が閉まってる」
流石にそんな事しないか、だがさっきとは違い自分は自由に動かせる手がある。
なので僕は近くにあったハンマーを手に取り、大きく振りかぶって。
「ふん!」
鍵を思いっきり叩いて鍵をこじ開けた。
やっぱり力技が1番早い。
ハンマーはそのまま手に持ち、扉から出て場所の確認をする。
「ふむ」
どうやらここは受付の後ろらしく大広間からの声もよく聞こえる。
「だから!なんでユウが犯人だと思うの!絶対違うって!」
「だから!普通あり得ないだろ!2度も殺人現場の近くにいるなんて!1度目はまだしも2度目はない!」
と、ギャーギャー言っているようでまだまだ会議は続きそうだ。
僕は音を立てないように先程の女子トイレへと行く。
少しだけ顔を出して確認したがどうやらいないようだ、それを確認して僕はトイレへと入る。
そして僕は先程調べられなかった例の個室トイレを調べる。
さて、どうやって逃げた?僕がいない間に逃げる事は時間的に無理、故にここで逃げたか魔法を使ったかになるが。
僕がふざけた思考をしていると不思議な物を見つける。
それは一つだけ突き出たトイレの壁のタイルだ。
「これは、もしかして」
僕はそう思いそのタイルを引き抜く。
するとそのタイルは予想通り簡単に外れて外に繋がった。
「やっぱり」
少し前に見たトリックで絶対こんなのやらないだろと思っていたが、まさかやる人がいるとはね。
とりあえずそこから出てタイルを元に戻す。
目を前に向けるとそこのすぐ目の前には森があり、踏みならされた道がある。
「ここから先にいるのかな」
僕はそう結論付けた、いやそれは確信だった。
さぁ、行くか。
そう思った時、僕が出た場所が開き、そこから人が出てくる。思わず身構えるがそこにいたのは。
「寛さんと、姉御?」
僕がそう言うと寛さんは爽やかに。
「やぁ!」
と言って来た、やぁ!じゃなくて。
その次に姉御も出てきて此方も爽やかに。
「やぁ」
やぁ!じゃなくてね。
僕がそう言う前にモナは抱きついてきた。
「へっ?」
僕が驚くともっとびっくりするような事を言って来た。
「アタシあの2人の話を聞いて逃げてきたんだ。それに、ユウが捕まってるって聞いていてもたっても居られなくてさ」
そう言う姉御の目からは涙がでており、それに釣られて僕も涙が出そうになるが。
「こっち!」
突然寛さんが2人の手を引っ張って草むらへと走り出す、そしてそのまま隠れた。
僕が何をするんですか!と聞く前にその理由が分かる。
ザッザッと前の方から足音が聞こえ、そして先程外した所へと入っていく。
「宗弘さん」
そこには猟銃とロープを持った宗弘さんが入って行くのが見え、そして閉めた後に急いで彼の来た方へと行く。
その道中寛さん何故来たのか、それと何故分かったのかを聞いた。
すると彼はこう口を開いた。
「私の職業柄色々な人と話すのでいつしか大体の感情とか、そう言うのが分かるようになったんです」
「それであの2人は嘘をついてはいないが何か悪い事を隠してることが分かり、そこで何か知ってそうなモナさんに話しかけてトイレへの付き添いという体で来たんです」
「それとなんで宗弘に気づけたかですか?それは弛まない訓練の賜物です」
途中まではなんとかわかった、役所の人だから話してる内に分かるようになった。この時点で既にかなり凄いがなんとか分かった、しかし最後が分からない。
なに!?訓練の賜物って!?役所の人ってどんな訓練するの!?
「ねぇ?本当は」
どんな職業?そう聞こうとした時、寛さんは立ち止まり指を刺した。
寛さんの指差した方には木で出来た小屋がポツンと有り、道はそこへ続いている。
「どうやらあそこのようですね、話は後にして早速入りましょう」
寛さんはそう言って僕ら2人を守るようにして先に入る、僕らもそれにつられて入る。
その小屋の中は。
「普通、ですね」
なんとも普通の小屋だった。あの異常者の小屋なのだからもっと凄い所だと思ったがそうでもなく。
普通にベットが有り、キッチンが有ってテーブルは1つに椅子は4つ。壁は丸太で出来ており、床も木のタイルが貼られてある。
至って普通に見えるが。何かおかしい気がする、首を傾げていると姉御はその違和感に気づく。
「そういえばあの女将さんは数年前に家族を亡くしたって言ってたけど、じゃあなんで椅子が4つあるんだ?」
そうだ、そういえばそうだ。仮に来客用だとしても4つはあり得ない。
僕がそれを考えていると寛さんがある事に気づく。
「あれ?このベット、頻繁に動かしているような跡がありますね」
そう言って寛さんの見ている方向を見ると確かに地面にベットを動かした跡が残っている。
それに気づいた寛さんはベットをその跡通りに動かす、そこには普通の床が見えるだけだが。
「ここ、他よりすり減ってない筈なのにかなりすり減ってる。ほら、特定のこの部分が重点的に削れてる、しかも周りに爪の引っ掻き傷あるし」
そういう寛さんが言った場所を見るも言われた上で良く見ないと分からない程で、それを見破るこの人は一体?
とりあえず僕もその正体が分かったので地面に対して爪を立てて、そこで1番違和感のある場所へと爪を入れて持ち上げる。
するとその持ち上げた場所は外れ、下へと続く階段が出てきた。
「これは、すごいね」
思わずそう言う、そして入っていく事にした。ここまで来たんだから最後まで見てやろう。
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