第2話 『老人』
雷渓村から雷鳴館に唯一繋がる道は細く、あまり舗装されていないからかかなり車体が揺れる。
その揺れっぷりに思わずこのまま渓谷に落ちるのではという考えが頭をよぎるが、道路の渓谷側をよく見ればガードレールが敷いてあり。落ちる事は無いだろうという事に気づき安心する。
そんな不安定な道も3分もすれば窓からの景色を楽しめる慣れてくる。
渓谷の水は遠目から見ても底が見える程に綺麗できっと飲めるんじゃないかと思う。更に奥の方、渓谷の上には家が数軒建っており。そこにはベランダからなっがい釣り糸を垂らして釣りに興じる人が見えた。
僕がそれを見ているとお爺さんは解説をしてくれた。
「あれは儂らの村特有の家釣りってやつでな、すぐ近くの渓谷へ釣り糸垂らして釣れたものをすぐ捌いて食べる。特に今の時期は塩焼きが食いごたえあって美味しいんだ」
きっと雷鳴館で嫌って程に食べれる、そう言うお爺さんに今から魚も楽しみになってきた。
僕がまず野菜から食べようかそれとも魚か、はたまた米からとくだらない事を考えていると車が急ブレーキをして止まった。
「うえっ!」
突然ブレーキをして止まり、その驚きと衝撃によって変な声が出る。
なんだと思い前を見ると小型のバンが停まっており、どうやら立ち往生しているようだ。
不思議に思っているとお爺さんが車から出て車の主に話を聞きに行き、戻ってきてこう伝えてきた。
「どうやら倒木によって通れないらしい、幸いにも近くに雷鳴館へと繋がる歩道があるから降りてそこから向かおう」
僕がこの車はどうするんですか?と聞くと。
「一日ぐらい大丈夫な筈だ、それに仮に土砂で壊れても保険が効くからな」
そういうお爺さんに対して尊敬の眼差しを向け、とりあえず荷物を持って自分も歩道の方へと向かう。
歩道の目の前に着くとさっきのバンに乗っていた人達だろうか4人組が立っていた。
見た限り1人は長い髪が特徴のギャルっぽい美人で所謂男勝り的な雰囲気が漂っている。もう1人の方は所謂可愛い系であるが、それに反してこのクソ暑い中でさえ化粧を整えるタフさを持っている
もう2人組は1人が短髪で筋肉ムキムキで高身長のイケメンだ。もう1人の方も同様に高身長ではあるが筋肉はあまり無いようだ、しかし眼鏡をかけて知性を感じさせる風貌をしている。
彼らの内、例の短髪イケメンが此方に気づき挨拶をしてきた。
「どうも、俺は山内 拓海。たっちゃんって呼んでね、君は?」
そう言われたので僕も挨拶を返す。
「やぁたっちゃん、僕は狭間 悠。気軽にユウって呼んでね。ところで彼等は?」
そういうと拓海は残りの3人を呼びそれぞれ自己紹介をしてくる。
「うっす、アタシの名前は原井 巴。みんなからはトモエとか姉御とか呼ばれてる、よろしくね」
「どうも、悠と言います。こちらこそ宜しくお願いします」
そう返したところちゃんと返事をしてくれて悪い人じゃないとわかり、少し安心した。
「じゃあ次私ね!私の名前は横袖 愛花。モナって呼ばれてるよ、よろしくねユウ君!」
「う、うん。よろしくねモナさん」
少し、いやかなり圧が強い。しかも言葉の節々に何処か演技のような雰囲気があり苦手なタイプだ。
「俺は二階堂 蒼龍。リュウとか二階堂と呼んでくれ」
「はい、此方こそ宜しくお願いします」
そう言うと握手を求めてきた、応じると少し嬉しそうだった。言葉の言い方は冷たいが意外と優しい、のか?
僕達が挨拶を終えると荷物を抱えたお爺さんがやってきた。
「よし、忘れ物ないか?じゃあ出発するぞ」
お爺さんがそう言うと僕達はハイと返事をしてお爺さんの後を着いて行った。
歩道は長い間使われてなかったのか草がボーボーで一部には木が侵食している。
更には歩道の横に置いてあったお地蔵さんが木に取り込まれており気味が悪い。
それを見たモナがわざとらしく驚きリュウに抱きつく。
「きゃあ!モナ怖い!」
「そ、そうか。しかしどれだけ放置されたらこうなるんだろうな」
そのわざとらしさに苦笑しつつリュウは疑問を呈する。
確かにどれだけの時間が経てばこうなるのだろう。
僕もそれに気になりリュウとどれだけ経ったらこうなるかについて話し合い、結論に辿りつきそうになるがその前に旅館に辿り着く。
「ほら、着いたぞ」
そう言うお爺さんに僕はその旅館を見る。日本昔ながらの旅館と言うだけあり、かなりの風情が感じられる。しかし、屋形自体はかなり大きく所々に改築だったり増築がなされており少し勿体なさを感じる。とりあえず旅館に入る。
僕らが中に入るとそこには3人がもう入っており、俺らに対して呆れたように言ってくる。
「さすがリュウ、根っからの理系だな。屋内だろうが屋外だろうがお構いなしって事か」
そう言うとたっちゃんはリュウの荷物も持って部屋に行く、それを追いかけるようにしてリュウも走って行き。僕達は別れた。
しかし、これまた風情ある内装だと思いながら僕も早くチェックインをして部屋で一息つこう。そう考え、受付に行きチェックインをする。
「すいません、1人で予約の狭間です」
そう言うと女将らしきらしき人が手に番号がついた鍵を握らせてこう伝えてくる。
「此方鍵になっております、お部屋はここから右へとお進みになられて奥まで行かれると階段が御座います。そこから2階へとお登りいただけるとお部屋が数個ございますのでこれまた一番奥まで行ってください。そこが貴方様のお部屋でございます、他に質問はございますか?」
突然休みなしに喋られたものだから吃驚した、でもとりあえず理解できた。
でもとりあえず聞きたい事があったので聞く。
「夕ご飯とかっていつになりますか、あと売店とかそういうのってありますか?」
そう言うと女将は笑顔でこう伝えてくれた。
「夕ご飯は出来次第部屋に取り付けられた有線電話で連絡いたしますが、まぁ大体8時くらいを目安にお考えください。それで売店の方ですが1階のちょうど階段の方にありますので寄って行ってください」
そう答えてくれたので僕は笑顔で感謝を述べてからとりあえず部屋に荷物を置きに行った。
自分の部屋へ行く途中に少し旅館の方も色々見てみる。
先程から思っていたがやはり日本家屋特有の雰囲気があり居心地がいい。
僕がそう思っているとすぐに階段についた、少し急ではあるが普通に登れる程度だった。
そして2階に着く、2階から外を眺めるとより雷渓村が眺められていい。
「おぉ」
しかし、そう風情に浸ってると流石に荷物が重くなってきた。とりあえず急いで荷物を片付けよう。
一番奥の部屋につき、鍵を開けて中に入る。
中に入るとそこは立派な和室であった、THE日本の和室と言った感じでとても落ち着く。
まるでそこだけタイムスリップしたかのようだ、しかしその分冷蔵庫やクーラーに電話などは異質に見える。そこはマイナスポイントだな。
とりあえず荷物を置いて売店に行こう、流石にお腹が減った。
そういえば、あのお爺さんの名前聞きそびれたな。
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