シーン6 手相占い
占い師 あらあ。ご存知ないのね、手相。珍しいわ。
青年 なんです…?テソウって…。
占い師 わたくしは手の平の皺を見てね、あなたの運命がわかるんですのよ。
青年 (驚いて)へえ…。
占い師 ふふ。しかもね、わたくしは独自の見方があるんですの。では拝見…。
青年 お願いします…。
青年の掌を虫眼鏡で覗く占い師。
占い師 あら、あなた…。
青年 なんです…?
占い師 ここよ、ここ。ほらこれね、生命線。
青年 セイメイセン…?
占い師 寿命に関する線のことよ。あなたこれ、ずいぶん短いのねえ。
青年 短いと何か…?
占い師 寿命が短いってことね。
青年 そうなんですか…。
占い師 いやだわ、がっかりする必要なんてないのよ。寿命はね、長けりゃ良いってものでもないんですから。
青年 そうですか…?
占い師 そうよ。ただね、寿命が短いってことは人生も短いんだってことに気付いておくのはとても大切なことなんですのよ。なぜって、時間の使い方が変わってくるでしょう?あら。そういえばあなた、顔色もあまり宜しくないわねえ。寿命も人生も長けりゃいいものではないとはいえね、念のため、お身体には充分お気を付けあそばせ。
青年 はあ…。どうも…。
占い師 他にも色んな線があるんですのよ。例えば、ほら。結婚線なんてのもあるんですけどね。あなた…。全体的にどれも線が短いのねえ…。
青年 短いと…。やっぱり良くないんですか…?
占い師 別にいいのよ。結婚なんてロクなもんじゃないわ。しなくたってちっとも構わないことよ。でもまあ、できないならできないなりにね、それはそのときお考えなさいな。
青年 はあ…。
占い師 それにあなた、手の皺がものすごく薄いのかもしれないわね。もしかしたら、そもそも無いのかもしれないわ。そういう人もいますよ、ごくたまにね。
青年 そうなんですか…?
占い師 たぶんね。まあ、まだお若いですし。運命なんていつでも変わりますから。きっとそのうち皺も増えていきますよ。ですから何事も気を落とさずに。前向きでいることが大事なんですのよ。
青年 そう…。ですね…。
占い師 そうそう。では、三千円になります。
青年 え…?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます