シーン5 あなたの力になりたいわ
▼二場
警官の言うとおり同じ場所で待っているものの、再び鞄を漁り、探しものをはじめる青年。点灯した街灯の灯りを頼りに鞄の底まで引っ掻き回す。
しばらくすると、青年は思いついたように靴を脱ぎ、それを振ったり叩いたり、靴底の隅々まで覗き、手を入れて掻き出したりする。
そこへ花柄の派手な着物に派手な羽織りを纏い、高下駄を履いた男性がやってくる。手にはこれまた鮮やかな巾着袋を下げている。占い師である。
占い師は街灯の背後からしばらく青年の様子を伺ったのち声をかける。
占い師 もしもし…。
青年は占い師に気付かない。
占い師 もしもーし。
一瞬、占い師の方へ振り向いてから、辺りを見回す青年。
青年 僕ですか…?
占い師(にっこり笑って)そうです。あなたです。
青年 すみません…。気が付きませんで…。(靴を履き直しながら)なんでしょうか…。
占い師 あなた…。何か探し物をしているんじゃありません…?
青年 (驚きながら)そうなんですよ…。よくお気付きになられましたね…。
占い師 やっぱり。わたくし、占いをやっている者でしてね。何かお困りになっている方のことは大抵わかってしまうんですの。
青年 へえ…!それはすごい…。
占い師 ふふ。こんなのはたいしたことないんですのよ。それにしてもあなた、ずいぶんとお困りのようですから…。わたくし、あなたの力になりたいわ。
青年 ありがとうございます…。でも、お気になさらず…。
占い師(食い気味に縋り付くように)いいえ。遠慮なんていりませんのよ。これもなにかのご縁ですから、ね。わたくしはそういう方を放っておけないんですの。わたくしの性分なんですのよ。
青年 (圧倒されて)はあ…。
占い師 ね、いいでしょう?わたくしにあなたの手助けをさせてくださいな。
青年 はあ…。じゃあ…。お願いします…。
占い師 うれしいわ。これできっとあなたの運命も…。そう、探し物もね。きっと見つかりますよ。
巾着袋から虫眼鏡を取り出す占い師。
青年 どうも…。
占い師 では早速ですけれど。ちょっと、お手を拝見して宜しいかしら。
青年 手ですか…?はい…。どうぞ…。
占い師に向けて両手の甲を見せる青年。
占い師 ああ、片手で宜しいんですのよ。
占い師は青年の右手を降ろさせる。
占い師 こっち側ね。
青年の左手を手の平側に返させる占い師。
されるがままの青年。
占い師 ねえ…。もしかしてあなた、手相をご存知ないのかしら…?
青年 テソウ…?
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