第7話 記者会見前夜の舞台裏①
(春ちゃんside)
友達のちぃちゃんと遊んだ帰り、スマホが鳴った。
確認すると、夕さんからだった。
今回の映画で共演した夕さんは女遊びの激しい人って印象だった。
お母さんや柴田さんにも篠崎夕には気をつけなさいと言われれば警戒もする。
でも、共演する時間を過ごす内に、すごくかっこよく見えてきた。
そして優しく接してくれる夕さんに見つめられると少しずつ気になっていって、警戒する自分の気持ちが好きに変わっていくのが分かった。
そう自覚すると不思議で、今まで気になっていた俳優さんの事が考えられなくなり夕さんの事ばかり考えてしまう。
映画の撮影が終わり、食事に誘われていたけど熱が出て行けなくなり、代わりに春に行ってもらった。
それから夕さんからの連絡もなくなり、気持ちが落ち着いてきたけど、突然鳴った個人用スマホに映る『篠崎夕』の名前にドキドキと胸の鼓動が早くなる。
(やっぱり私は夕さんが好き)
はやる気持ちを押さえ、電話に出る。
「もしもし」
「よかった、Haruちゃん出てくれたよ」
「夕さんからの電話だもん出るよ」
映画の撮影で軽い感じて話すようになった夕さんの声が心地いい。
「Haruちゃん映画の試写会終って直ぐに帰っちゃうだもんなぁ」
「あっ!」
「んっ?どったのHaruちゃん」
握手会の後に試写会があるからと柴田さんがそんな話をしてたの忘れてた。
ま、春がなんとかしてくれてるだろうと考えながら「なんでもないよ」と返す。
「ところで、Haruちゃん今暇?暇ならご飯行かない?」
「暇だよ、何処に行けばいい?」
「えーっと、前に一緒に食事した場所覚えてる?」
「覚えてるよ、そこに行けばいいの?」
「うん、そこにきて。タクシー代は出すから着いたら電話して!」
「分かった」
電話を切った私は急いでタクシー乗り場に行ってタクシーに乗り、指定された場所に移動する。
前に夕さんに誘われたお店はすごくお洒落で、ミシュランでも星を獲得した高級店。
代わりに春に行ってもらったけど本当に悔しかった。
春が夕さんと一緒に過ごすって事で嫉妬したりもしたけど春から何にもなかったよと聞いて安堵したりと嫌な気持ちになった。
でも────
「久しぶりに会えるなぁ」
自然に溢れてくる笑顔にタクシーの運転手からの「良いことあったんですか?」の質問にうざいなぁと思いながら「はい」と返した。
◇◇◇
(篠崎夕side)
店で待ってると、Haruからの電話で店員に声をかけ、一度店の外に出る。
タクシーから出てくるHaruに「おつかれー」と声をかけてタクシーの運ちゃんに代金を払った。
「夕さん、誘ってくれてありがとう」
顔を赤らめてそう言ったHaruの目を見つめる。
目の色は黄色。
試写会の時は白だったのに今のHaruの目の色が黄色になってるのに首を傾げる。
「夕さんどうしたの?」
不思議そうにするHaru
(急に目の色が黄色に変わっているのが気になるが、試写会の間ずっと魅了をかけてたから効いたのだろう)
と頭の中を切り替えてHaruの目を見つめ魅了をかけると目の色が黄色から赤に変わる。
顔を真っ赤にして「そんなに見つめたら恥ずかしい」と言うHaruを見てほくそ笑む。
(まっいっか、Haruが完全に魅了にかかったし)
「ごめんごめん、あまりにもHaruちゃんがかわいいからしょうがないよ」
「もぉ夕さん!」
頬を膨らませるHaruに「それじゃ行こうか」と言って肩を抱くとビクンと体を揺らすHaru
かわいいヤツめここからスタートだ。───俺色に染めてやる。
俺はHaruの肩を抱いたまま店の中に入って行った。
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