二つの約束
当然、納得もできるわけもなく、俺は若干口調を強めて抗議する。
「それを世間では脅しって言うんだよ。今朝のはもうちょっとしたホラーだったからね? 金輪際、ああいうのは止めてくれ」
「……………………」
ムスッとした表情をする四羽からの物言いたげな視線を受け、俺はわざとらしく溜息をつく。
「ほんと昨日からどうしたんだよ、四羽。殺すとか死ねとか、そういう言葉が大嫌いって昔から散々言ってたのに…………ベタかもだけど、変なもんでも食ったのか?」
「別に、あたしはいつも通りだし」
「いいや、昨日から様子がおかしい。もっと言えばその前からもおかしかったぞ? 何というかこう、四羽らしくなかった」
「……雪斗が、気にしすぎてるだけでしょ」
そっぽ向いて口元を尖らせた彼女は明らかに拗ねている。
どうして四羽がそういう態度を取るのかがわからない。けど、彼女をそうさせている原因さえ知れれば、機嫌を直してくれるだろう。
四羽らしさを四羽から取った原因を知れれば。
「気にしすぎているかは自分じゃわからんけど、気になるのはしょうがないだろ」
「……何で?」
横目で見てくる四羽に、俺は一呼吸おいてから返す。
「血は繋がってないけど、過ごしてきた時間だけで言えば俺達もう……家族みたいなもんだろ。だから、気にするなって方が無理ある」
「…………家族って、具体的にはどういう関係?」
「いや、具体的って言われても……そこまでは考えてないとしか」
「あるでしょ。父と娘とか……姉と弟とか……お、夫とつ――」
「――ああ、それなら兄と妹って感じじゃないか? ……なんだろ、自分で言うのすんごい気持ちな、これ」
そうおどけた口調で返すも、四羽はクスリともせず、むしろ表情を曇らせる。
よっぽど嫌だったのだろうか? そう内心で不安に思いつつ、四羽の横顔を見つめていると、彼女の口が微かに動いた。
「……おかしいのは雪斗もでしょ」
意識していなかったら気付きすらしない音だったが、それでも確かに俺の耳に届いた。
「俺がおかしい? どこら――」
「――ここにいたんですね、蒼紫くん」
どこら辺がと四羽に訊こうとしたところで、別の声が割って入ってきた。
その声の主、俺の名前を呼んだのは――、
「私との約束、忘れてたとは言いませんよね?」
蒲倉だった。
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