そうでもしないとさ

 誰かさんにそっくりな四羽のやり方が気に食わず、文句を言ってやろうとしたが、外には既に彼女の姿がなく。


 急いで支度し追いかけても四羽の背は見つからず、学校に到着。


 隣のクラスでようやく四羽を見つけたが、いつ面に囲まれていて近づけず。


 LINEで伝えても無視。昨日に引き続き、何を考えているかさっぱりだ。


 で、誰かさんに関しては相変わらずだ。昼休み以外は基本的に絡んでこない。


 ただ、今日はやたらと目が合ってる気がする……俺が意識しすぎているせいだろうか?





 見かけは普段と何ら変わらない午前の平日。しかしながら着実におかしな方向へと進んでいた。スピードは決して速くないが、それでも確実に。


 その事を漠然と理解しながら、俺は机に突っ伏し目をつむる。


 そこで授業の音はプツリと途絶えた。





 ――――――――――――。





 昼休みを迎えてすぐ、教室の前方入り口に四羽の顔が見えた。


 俺は席を立ち、早く早くと手招いてくる彼女の元に向かう。



「お、お前ッ――女神からの慈悲を無下にし、他の女にうつつを抜かすとは何様のつもりだッ!」



 その際、蒲倉の信者である友人に絡まれたりしたが、何とか切り抜け――、



「――屋上に行こッ! 雪斗!」



 四羽と共に屋上へと足を進めた。





 ――――――――――――。




 弁当派の人気スポットである屋上だが、意外にも人の数は少なかった。


 多分、いつ降りだしてもおかしくないあの灰色の空のせいだろう。雨が降る前の独特の匂いもするし。



「あそこにしよっか」


「おう」



 四羽が選んだ場所は周りに人がいない隅の方だった。


 スカートが汚れる事などお構いなしに地に腰を下ろした四羽が、久しぶりに昔の彼女と重なって見えた。



「雪斗も早く!」



 隣に座れとコンクリートの床を手で叩く四羽。俺は「はいはい」と彼女の指示に従った。



「今日は急にごめんね、約束もしてなかったのに。思い付きで雪斗の分も作っちゃってさ……サプライズってわけじゃないけど、一緒にどうかなって」



 そう彼女は言いながら風呂敷を広げ、俺の分であろう弁当箱を前に差し出してきた。


 が、俺は手をつけずに四羽へと顔を向ける。



「一緒にどうかなって言ってる割には、物騒な言葉を使ってこなかったか?」


「物騒?」



 はて、何の事? とすっとぼける四羽。誤魔化すには無理があるだろ。


 仕方ないと俺はスマホを取り出し、本人が送ってきた言葉を本人の前に提示した。



「これの事を言ってるんだよ、俺は」


 俺が『殺すから』の部分を指差して言うと、四羽は「あ~」と白々しい声を漏らし、



「そうでもしないと雪斗は言う事利いてくれない――と、思ったからだよ」



 白い歯を零してそう言ってきた。

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