一方通行のメッセージ

 翌朝。登校前。


 学校がある日の朝は必ずと言っていい程あった彼女の姿が……今日はない。


 玄関先には誰もおらず、首を回し辺りを見渡しても四羽の姿はなかった。


 体調でも悪いのか?


 四羽がいない理由でぱっと思い付くのはそれぐらいしかなかった。実際、過去にもあったわけだし……。



『おはよう。もしかして風邪か? だとしたらゆっくり休めよ』



 取り敢えずと俺は四羽にLINEを送り、一人学校へと向かうのだった。



 ――――――――――――。



 四羽からの返信が一向になく、既読もつかない状態に、俺は一抹の不安を覚えていた。


 彼女に何かあったのでは? もしくは家族に何かあったのでは? と。


 だが、四羽は学校を休んでなどいなかった。悪い想像を働かせている俺の目は確かに彼女を捉えたのだ。


 友人と共に学食へ向かう道中、四羽が在籍するクラスに彼女の姿を。



『――――ッ⁉』



 数人で机を囲み、談笑しながら箸を進めていた四羽の手が急に止まった。


 箸の先で摘まんでいたおかずが支えを失って落ちていき、弁当箱の中に戻っていく。


 俺と目が合った彼女はハッとした表情を浮かべながら数秒フリーズし、その後は何事もなかったかのように友人達とのランチに戻る。


 が、よく一緒にいる友人達は見逃さなかったようで。四羽の視線の先に俺がいるとわかり、合点がいったとでも言うように頷く。


 四羽の所謂いわゆるいつ面はいつもああだ。廊下などですれ違う時も『じゃ、ウチらはこれで~。どもども~』と言って俺と四羽を二人きりにさせたがる。


 恐らく盛大な勘違いをしているんだろう。俺と四羽は互いに想い合っていて、けれど過ごしてきた時間の長さが邪魔して結ばれない……みたいな女子らしい勘違いを。


 断言しよう……まずそれはない。きっと四羽も迷惑しているだろう。


 今だって、ほら。完全に揶揄からかわれているじゃないか。


 他の雑音がある中、さすがに会話の内容までは聞こえなかったが、雰囲気からして友人らに揶揄われているのは見て取れた。


 だから俺は四羽に迷惑かけまいとその場を去り、学食への歩みを再会した。



『てっきり体調不良なのかとばかり思ってたけど、元気そうで良かったよ』



 その途中、俺はもう一度、四羽にLINEを入れておいた。

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